20.5話
夕方。少し湿度のある生暖かい風が三人の間を通り抜ける。
そしてしばらく、無言という嫌な空気が流れた。
だがそれをものともせず、当たり前のようにこの空気を破壊できるやつが隣にいた。
「ずっと聞きたかったんだけど、朝のあれは何だったんだ?」
おそらくあの場にいた俺以外のすべての人が一番気になっていることだろう。確かにあの後の空気と比べたら三人でいるこの空気は軽いものだ。あれは……出来る事なら思い出したくもない。
正善の気になる気持ちもわからなくない。俺だって逆の立場だったらこの対面で話せる今訊いているだろうから。
正善も喜多川も友達だ。いっそのことここで洗いざらいすべて話してしまおうか。そうしたら正善なんて相変わらずお人好しだから協力してくれるかもしれない。
いや、前に似たようなことを考えていた時はまだ打ち明けた二人にも何か危ないことが起きるかもしれないという想像ができていなかった。けどもう二人を少なからず俺は友達と思っている。秘密はあるが隠し事を全て話すことだけが友達ではない。
だからここは隠そう。
「あー、あれか。実はお世話になったことのある人がいたんだけどその人に似てたからつい。冷静になって会って見たら全然違ったんだよな」
「……」
「ん? ……どうした、正善」
「ううん。何でもない。アヤトが大丈夫ならそれでいい。そういえばその水野先生に職員室に呼ばれてたな。何で呼ばれたんだ?」
「あれはただ書類があるから書いて来いって渡されただけだよ。残って書いていってもいいとかって言われたけど、まだ正善の家にも慣れてないのに、もっと慣れてない所じゃ落ち着いて書けないし流石にな」
「そうか……そりゃそうだ」
そう。正善の家は一日でも、一週間でも慣れる気がまったくしないのだ。
正善が笑う中、俺は引きつった笑いしかできなくてそんな俺を見た喜多川も察してくれたのか苦笑してくれた。




