20話
全てをゼロにするなんてことは出来ない。それこそ過去を変えない限りは無理だ。
だからなのか授業中も昼休みもずっとクラス中から視線を感じ、緊張しっぱなしだった。
それは放課後になっても変わらずで、はやく教室から出たいなんて思っていると教室にあの女性教師がやって来た。
「加藤君いる? 話があるからちょっと時間くれない?」
クラスメイト全員に聞こえる名指しの呼び出し。
これを俺が断れるわけもなく、正直に名乗り出て女性教師のもとへ駆け寄る。
「何かご用件でしょうか」
「もー。そんなにかしこまらなくてもいいのに。取り敢えず職員室に行こう」
そう言って職員室に向かって歩き出す女性教師の後ろを黙ってついていく。
道中、様々なクラスの生徒から挨拶されては手を振りながらそれを返す女性教師を見て、この人は生徒からの人望が厚いのだと感じた。
「着いたよ。ささ、入って!」
「失礼します」
職員室に入り、すぐに女性教師の机らしき場所に着くと女性教師は椅子に座った。
「まずは初日お疲れ様と言わせてね」
「はあ。ありがとうございます」
「それで早速本題に入るんだけどいいかな」
「はい」
「今朝のことなんだけど――」
やっぱりか。なんて言い訳したものか。ここは無難に噓です、冗談でしたと言ったほうが良いか? いやでも、それはそれで怒りを買いそうだしなぁ。どうしたものか……。
なんて考えていたことが女性教師の一言で無駄になった。
「何かあるなら本当に相談に乗るからね」
さらに本人は無意識だろうが、女性教師は椅子に座っているため、生徒に真面目に上目遣いをしながら心配をする教師の図になっていて俺は困惑した。
「え? 探るためにここに呼び出されたんじゃないんですか?」
「まさか。わたしがそんなことするように見える?」
いやー。見えないとは言い切れない。
「男の子があれだけ泣くほどの事情なんだから何かあるんじゃないの?」
「あれは忘れてください。恥ずかしいので」
今思い出しただけでもかなりあれは恥ずかしい。クラスメイトたちにもう裏で泣き虫なんて言われてそうで怖いくらいだ。
「でも――」
「ないですから。悩みも相談事も。これだけならもう帰っていいですか?」
そう言って職員室を出ようと後ろを向いた俺を女性教師は服を掴み、止める。
「待って待って! これだけじゃないの」
「えー……」
「そんな露骨に嫌な反応しないの。書いてもらいたい書類とかがあってね」
「えっ……。噓でしょ?」
「本当です。だからって更に露骨に嫌がるのはやめなさい」
俺は肩を落とし、ため息をつく。女性教師の方をまた向くと女性教師はそれらしき書類を引き出しから取り出し俺に渡す。
「はいこれね。持ち帰って家で書いてもいいし、居残って教室で書いてもいいよ」
「いつまでに提出ですか? えっと……先生」
「もう忘れちゃった? わたしの名前」
「すみません」
「別に責めてるわけじゃないの。わたしは水野 ひとみ。上で呼んでも、下で呼んでもいいよ」
「じゃあ。ひとみで」
「もしかして怒られたい子?」
「いえ、冗談です。水野先生」
「よろしい。なら書類は三日後までだからよろしくね」
「わかりました」と了解すると俺はさっさと職員室を出た。
するとそこには正善と喜多川が俺の荷物を持って待っていてくれていた。
「お疲れさま。何の話をしたかは分かりませんが、とにかく今は帰りましょうか」
「ああそうだな」
こうして俺は高校初日を乗り越え、帰路についた。
こんにちは、深沼バルキです。
バトルも、複線回収もまだまだ遠そうですねぇ。
もう少しお待ちください。最近やっと時間取れそうなので!!!
ここまで読んでいただきありがとうございます。




