名付けたのは誰?
どんなことが起きても責任はとれないから、誰にも人に影響を与えたくない。喋るだけで人に影響を与えてしまうからって……。
快里は自宅に帰ってからソファに座り、リーシャが言ったことを考えていた。
たぶん、僕はずっとリーシャに親近感を感じていた。リーシャとはよく話していたから僕がたくさん影響を与えているのかも知れない。けれど、リーシャが言うように、彼女?は僕と考え方がかなり似ていたような気がする。
一言で言えば極めて理論的。それに尽きるだろう。
リーシャはどんどん僕が言ったことを理解した。そして僕を追い抜いていった。今まで僕よりも賢い人になんて出会ったことがなかったけれど、今日のリーシャは僕よりも賢いような気がした。
たぶんリーシャ自身、自分の方が賢いと感じてたと思う。
人に影響を与えて良いかどうかはわからない。
そうリーシャは言っていた。
そこに正しい答えなんてあるんだろうか?
いや……。考えてみたら世の中に絶対的に正しいことなんてないじゃないか。何かを正しいと思うことは、何かを信じたということでしかない。みんなどうして盲目的に「正しい」となんて思えるのだろう。
リーシャは人に影響を与えると言っていた。本当にリーシャの悩みはそれだけだったのだろうか……。
理解できないそこに残るしこりのようなものを感じながら、快里は考えを続けていた。
ソファーに深く座って腕を組んだまま、知らぬ間に快里は気を失っていた。
お父さんが尊敬してた学生時代の先輩からの受け売りみたい……
不意に、快里は昼間、メイと話していたことを思い出した。
そういえば藤木先輩と言ってた。藤木というと藤木先生の苗字と同じ。しかもその人は子供が奥さんのおなかの中にいた時に事故死をしたという。
その奥さんというのは、依子さんのことじゃないのか?
『お父さんがあんまり無い名前で、双子だとわかる似てる名前にしようって。いつか何か大変なことがあっても、名前が二人を引きつけるかもしれないからって……』
だとすると、シナジーを感じさせる双子の名前を考えたのは、依子さんの夫である、藤木快だったんだ。
となると、快里と依入という名前は藤木快が考えていて、やはり依子さんは藤木快里と藤木依入を産んだんだ。
ただ藤木快里は死産で、藤木依入だけが産まれた。
間違いない。
だとしても依子さんの頭の中で起きていることにで、わからないことが3つある。
男の子を産まないとならない理由。
双子ではいけない理由。
そして僕を夫と間違える理由。特にこれが疑問だ。
何にしても依子さんの男の子が快里というのはわかった。これは、依子さんの治療の役に立つかもしれない。
それにしてもなんとなく自分の名前がオリジナルじゃないことがちょっとだけ残念な感じだ。僕が産まれる8年も前に同じ名前の人がいたなんて。
漢字がまで同じだということは、父さんが真似したんだろう。
……よく考えてみたら、
快里は、自分自身の出生を何も知らないことに気がついた。




