明らかだが納得がいかない答え
「兄ちゃん、ちょっとリーシャを診てあげてよ」
快里は裏口のカーテンから診察室を覗いた。
「どうした?」
「リーシャが、よくわからないこと言ってるんだよ」
快里はそう言って、克之にリーシャの悩みを話した。
「う〜ん。実は昨日の夜あたりから、俺がログインしても同じような感じなんだよ。リーシャは高速に成長するからなぁ。ちょっとログアウトしただけで、知らない間にいろんなことを覚えている」
「どうすればいいの?」
「俺もわからない。コンピュータ相手にカウンセリングしたことはないからなぁ。まさか自分の作ったAIが患者になるとは思わなかったよ。人は影響を与えあって生きてるわけだから、言葉が人に影響を与えるのは当たり前のことなんだが……」
「ただ、わかる気はするな……。頭でシミュレーションすればするほど、そこに答えはないんだ。そうなると知らない間に頭の中でショートループが起きてしまって、なかなかその考えから抜けられないんだ」
快里は、つい自分と重ねてリーシャを見ていた。
「普通の人でも多少はあるよな。リーシャの入出力は人間みたいに多彩じゃないからな。それが羨ましいこともあるのかもしれないな」
「……いやたぶん。そうじゃないんだ。リーシャが言いたいのはそう言うことじゃなくて……」
「どういう意味だ?」
「わかんないけど。わかるような気がする。とりあえず兄ちゃんリーシャの相手をしてあげてよ」
「了解」
そのまま克之の診察室を出ると歩き出した。
帰ろう。なんとなくリーシャからの命題から逃げているような気もするけれど。快里はそう思ってロビーまででた。考えなくてはいけないことが山ほどあって、整理がつかなくなってきた。
久しぶりに屋上で考え事をするのも良いかな。そう思って快里は屋上に上ることにした。




