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記憶の迷路
「ママ、あのね。怒らない?」
依子はまどろみの中で、扉の向こうから顔だけ出した小さな依入を見つけた。体をかろうじて扉の向こうに隠そうとしている。
「あらあら?どうしたのそのお顔」
「おかお?えいり、わるいこと、してないよ」
「そうじゃなくて、転んだの?」
「ううん。えいり、ころんでないよ」
「傷ができてるわよ。いらっしゃい。消毒してあげるから」
「だめなの。そっちに行けないの」
「もう、どうしたのよ」
依子は玄関からサンダルを履いて降りようとした。
「あぁ、だめ。怒らないで、ママ」
「どうしたの?」
そういいながら引き戸の玄関を開けた。そこには、すり傷だらけになった依入と、びりびりに破れた服があった。依子が買ってあげたばかりのお気に入りのスカート。
「あのね。えいり、ようちえんで、きのぼりしたらね。おちちゃったの」
依入は、服が破れてしまったことで、かなり萎縮していた。傷ができたことよりも何よりも、おねだりして買って貰ったばかりの服がダメになってしまったことがつらかったのだろう。
「いらっしゃい。お服は、ママが治してあげるわ。でも、その前に消毒とかしましょうね。尻餅とかつかなかった?」
「う〜ん。なんかおしりいたいの」
「ほら、いらっしゃい」




