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第119話 楽しかった無人島


「ふあ~あ……」


「キュキュウ」


「おはよう、ハリー」


 朝目が覚めるとそこは見慣れたうちの天井だった。ここしばらくは異世界の方へ行っていたけれど、ようやくわが家へと帰ってきたんだったな。やはり我が家が一番である。


 すでにハリーは起きていたので、頭を撫でてやる。朝からとても癒されるなあ。


「おはよう、リリス」


「キュウ~」


「おはよう、ケンタ、ハリー」


 リビングへ行くとすでにリリスは起きていて早くも自分のタブレットを手にしていた。向こうへ行っている間は電波がなくてダウンロードしたコンテンツしか楽しめなかったから、こっちへ戻ってきて楽しんでいるのだろう。


 ……スマホ依存症みたいにならなければいいのだけれどな。


 ヴィオラはまだ寝ているみたいだ。ここ数日は無人島で遊んだり、ここまで戻ってくるのにずっと飛行魔法を使っていたからぐっすりと休んでいるのだろう。朝食ができるまでは寝かせておいてあげよう。


「さて、朝食はムサカラの街で買ってきた干物にするか」


 向こうの世界の朝食は基本的にパンが多かったから、しばらくは和食にする。日本人はご飯を定期的に摂取しなければ駄目なのだ。




「うん、脂がのっていてうまい。こういうのでいいんだよ」


「キュウ~♪」


 ご飯と味噌汁、ほうれん草のおひたし、卵焼き、漬物、干物と素朴だが、朝食はこういうのでいい。よく実家で母親が作ってくれた朝食だけれど、実際に自分で作ってみると結構な手間がかかる。昔は毎日こうした朝食を食べさせてくれていた母親には感謝だな。


「もうちっと肉がある飯でもよかったけれどな」


「私はこれくらいでちょうどいい」


 ヴィオラは少し物足りないらしく、リリスはちょうどくらいだったようだ。2人の食に関する好みも最近はわかってきたから、たぶんそう言うと思っていた。


「夜はアースドラゴンの肉を使った料理も作るよ。昼はなにか食べに行こうか。週末のグランピングに必要な物も買いに行かないとな」


「よっしゃ! 前に食べたハンバーガーってのもうまかったぜ」


「私はお店でラーメンが食べたい!」


「キュウ、キュキュ!」


「はいはい。なにを食べるかはみんなで決めようね」


 まだ朝食を食べたばかりだというのにもう昼ご飯の話をしている。まあ、俺も異世界の街を回ったり、屋台で食べるのはとても興奮したからみんなの気持ちもよく分かる。


 グランピングは向こうでほとんど揃っているけれど、食材や遊具などは購入しておかないとな。


「ケンタ、もし可能だったらこれがほしい」


「うん?」


 朝食を食べ終わったあとにリリスがタブレットを差し出してきた。リリスが自分からこう言ってくるのは珍しいけれど、いったいなにが欲しいのだろう?


「……海用のグッズか」


 リリスが見せてくれたのはシュノーケリング用のライフジャケットの商品ページだった。見出しには絶対に溺れないと書いてある。次のページには水上ハンモック、フロートハンベッドという水の上に浮かんで、その上で横になれるアクティビティグッズがあった。


 前までは泳げないと言っていたリリスだけれど、あの無人島の海で遊んだことがよっぽど楽しかったらしい。確かに俺も誰もいない無人島での2日間はとても楽しかった。


「うん、そんなに高くないし、もちろん大丈夫だよ」


「リリスばかりずるいぞ! 俺にも見せてくれ」


「はいはい。ヴィオラはまたタブレットを壊さないでよ」


「わ、わあってるよ」


 ヴィオラには前科があるからな。身体強化魔法を使っていない状態でも気を付けないと。


「他にもケンタの世界の海には魔法を使わずに海の底に潜ったり、海を飛んだりすることもできる」


「おお、すげえな!」


「キュウ!」


 そう言いながらリリスはタブレットを操作し、マリンアクティビティの動画を映し出す。……もう随分とこちらの世界に慣れてきたものだ。


 スキューバダイビングにこれはフライボードとパラセーリングというやつか。確かに俺も一度はやってみたいと思っていた。泳ぐことのできないリリスがこれほど反応するとはよっぽど無人島が楽しかったに違いない。


「なるほど、近場でもできるみたいだ。時期になったら行ってみようか」


「うん!」


「約束したからな!」


 調べてみると、そういったマリンアクティビティは千葉の海とかでもできるらしい。もちろん多少値は張るが、最近は金の値段もだいぶ上がってきたからあちらの世界で手に入れた金貨の値段もだいぶ高騰している。できるだけ金を売りたくはないが、仮想通貨のお金もまだだいぶ残っているし、当分は大丈夫だ。


 その前に週末は雄二とキャンプだし、いろいろと準備をしておこう。


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