世界
世界
本作品の舞台は、いわゆる剣と魔法の世界。いくつかの強国と数えきれないほどの小国がしのぎを削っている。その中でも、指折りの大国を除いた国々が、とある理由から異世界人を召喚し、彼らを戦奴として利用することで軍事力を飛躍的に向上させている。それゆえ、世界各地で紛争が勃発し、戦火が同時多発的に広がっている。
主人公たちはそんな異世界人召還を行っている国のひとつであるティファニアに属しており、生殺与奪の権を握られ強制的に他国や他の異世界人、さらに、後述の魔獣などと戦わされることとなる。
また、この世界には無条件に人を害する〝魔獣〟という生物が跋扈しており、その生息域を〝闇地〟と呼ぶ。基本的に闇地の深度に比例して棲息する魔獣は力を増す。低深域帯の魔獣は比較的討伐が容易なため、闇地外縁部には狩猟や資源採集、発掘などを目的に人が入植するケースもあるが、中深域よりも奥に人が住まうことは不可能とされており、高深域や最深域には踏み入ることさえできない。
なお、この世界における海は魔獣の支配域、つまりすべて闇地であり、船で漕ぎ出そうものなら一瞬で転覆させられてしまう。ゆえにこの世界で航海術はまったくと言って良いほど発達しておらず、海での漁などもほとんど行われていない。
また、大陸には特に広大な〝大闇地帯〟が五ヶ所存在し、それぞれの最深域帯は〝幻獣〟と呼ばれる伝説的な魔獣が縄張りにしていると言われている。
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国家
ティファニア……主人公たちを召喚し、彼らが所属(隷属)することになる国。大陸南西部に位置し、後述の大国にも劣らぬ国土を持つ。気候は温帯ながら昼夜の寒暖差は激しい。地形はなだらかな平野が国土の多くを占めるが山河も点在している。地理的に特筆すべき点としては、国の北部に大陸最大規模の闇地帯が広がっているということが挙げられる。そのため特に国の北部地域は常に魔獣の〝越流〟という現象 (いわゆるスタンピード)の脅威にさらされているが、大闇地帯が他国との間の壁となっているため、大陸中部にて覇を唱える大国からの侵略を防ぐ役目も果たしている。
統治機構としては、王が直接治める王領の他に、二十四の副王領を王の名代である副王が統治するという中央集権的な政治システムをとっている。二十四副王領の中でも王領に接する五つの副王領は〝王衆五領〟と称され、慣例的に副王には王族が選ばれている。それ以外は〝外衆十九領〟と呼ばれ、副王には王都より派遣された官吏が就くことが多い。ただし、僻地であるほど土豪の力が強く、副王が権力を掌握しきれていないケースも珍しくはない。
またこの国では主人公らが召喚される数十年前に奴隷の所持を禁止しており、〝自由と平等の国〟という国是を掲げている。ただし王都の〝市民〟と〝非市民〟のように格差は大きく、名目上はそうとされなくても事実上は奴隷のような扱いを受けている社会層も一定数存在している。
加えて、ティファニアを語るうえで決して無視できないのが、王耀晶という物質の存在(王耀晶の詳細な説明は用語解説を参照)。世界でティファニア王家のみが精製法を知る物質だが、その資源的な価値ははかり知れず、それゆえ紛争の火種にもなる。
ティファニア王都……ティファニアの首都で、この物語の始まりの地。円形に広がる巨大な都市で、その中央には王耀晶で造られた王宮、〝水晶宮〟がそびえ建っている。この都市の大きな特徴として、王族から貴族、一般市民までが暮らす〝市民区〟と、市民権を持たない低層民の居住区である〝非市民区〟に分かれている点が挙げられる。双方は市民区を囲う壁で隔たれているのに加え、両地区では流通する通貨まで異なっている。市民以上の住民の暮らしぶりは、その中にも身分や経済格差はあるものの、総合的に豊かといえる。非市民区も地区によって特性はあるが、概ねスラムのような街で治安が悪く、ごく一部の商人や非合法組織などの例外を除き、人々の暮らしぶりは貧しい。
また非市民区の一区画をまるごと利用した巨大な監獄が建てられており、王都の犯罪者ばかりでなく各副王領で捕縛された罪人も収監され、その収容人数は四千人を優に超える。なぜ国の中心である王都にそれほど大規模な監獄が造られたのかは物語の中で明らかとなる。
第十七副王領……ティファニア副王領のひとつで第三章の舞台。国土の中で最北西に位置しており大闇地帯に面している。特筆するような産業はないが、領土の大部分が闇地に面しているため闇地の資源採集が盛んであり、多くの開拓村を領内に抱え、首都ローミネスは開拓民の得た素材を内地へ売るための中継地として栄えている。
また、はるか昔に〝道の祝福者〟という異能者によって敷設された闇地を貫く四つの街道が領の西へと延びている。街道が貫く闇地の中の飛び地のような盆地までが領土であり、その向こうへ延びる街道の前に巨大な砦を築いて闇地に食い込む城壁を巡らせ、街道で繋がる隣国ブシュロネアとの国境を隔てている。本編ではこの砦と盆地をブシュロネアの侵略によって占領されており、主人公らは領国軍と協力してその奪還を命じられることとなる。
開拓村……ここでは第十七副王領の領地である闇地向こうの盆地外縁にある村を指す。主に魔獣からとれる素材の採集を目的とした狩人の村であり、冬以外の長い期間、子どもと老人を除いた村人たちの多くは闇地に潜って狩りを続ける。その間、村には子どもと老人ばかりが残される。それゆえ村に残された子どもを預かったり、親が闇地で命を落として孤児となった子どもを育成するため施設が運営されている。また村の近くには砦があるため、若者の中には狩りではなく兵役に出て収入を得る者もいる。
ジュランバー要塞……第三副王領に築かれたティファニア最大規模の巨大要塞。北部大闇地帯で越流が発生し、隣接する第二十一副王領を魔獣が突破した際に備えて建造された設備であり、第五章でサルヴァが民兵軍を集めるのに利用する。
副王領の名称
第一副王領……ジェノベニア
第二副王領……スーベリア
第三副王領……ノエニア
第四副王領……エベリシア
第五副王領……ヴァリシア
第六副王領……ディベトリア
第七副王領……ブルネリア
第八副王領……ダキア
第九副王領……ヌビリア
第十副王領……ケニキア
第十一副王領……ラトミニア
第十二副王領……アシミア
第十三副王領……ワイメニア
第十四副王領……ツキミア
第十五副王領……カリシア
第十六副王領……パッツァミア
第十七副王領……アタラティア
第十八副王領……ゲイザリア
第十九副王領……コメリア
第二十副王領……ベラダリア
第二十一副王領……サリミア
第二十二副王領……エメリア
第二十三副王領……キミリア
第二十四副王領……プルマリア
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ブシュロネア……第三章で第十七副王領に侵攻して来るティファニアの隣国のひとつ。小国なうえ国土を闇地に囲まれているため非常に貧しい国。国民の大多数が闇地開拓民であり、ティファニアへ攻め入るにあたっては多くの狩人が徴兵されている。本編には書かれていないが、闇地を北へ抜ける街道を有しており、大陸中央の国々と細々と交易を行っている。国内に転移塔を建てているのも、その街道を利用しカルティアの技術者を招聘できたから。
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カルティア……大陸中西部にある謎の国。他国とは一線を画す超文明を築いており、転移塔や魔導機器など、その技術を他国に無償で提供している。その一方で極度の秘密主義でもあり、他国からの干渉はもちろん、入国も一切受け入れていない。過去にはカルティアの魔導技術を奪おうと戦争を仕掛けた国もあったが、返り討ちに遭って滅んでいる。近年になって、そんなカルティアの魔導研究者が集団で他国に亡命しているという。
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ブリュゴーリュ……ティファニアの西に位置する隣国。さらに西にはフェノムニラ山脈というこの世界で最も高い山が大陸南端の海から北へと延びている。そのため国土の西側は日照時間が短く、山から吹く颪によって気温の低下と乾燥を招いており、土地は瘦せ農耕には適していない。一方で、山脈に近いからか鉱物資源が豊富に採れ、特に鉄鉱石は大陸でも屈指の産出量を誇る。またその鉄鉱石を加工するための製鉄や鍛冶の技術が発達し、国の重要な産業となっている。ティファニアとはこれまで、少なくとも表面的には良好な関係を築いていた。
ビゼロワ……ブリュゴーリュの首都。元は鉱山都市だったため、都市の背後には山が聳えており、王城は半ばその山にめり込むように建てられている。また街にはブリュゴーリュ正規軍が駐留している。その主力となるのが騎馬兵団で、ブリュゴーリュ製の優れた武具と甲冑を装備し、圧倒的な突進力で敵を粉砕する戦法を得意としている。
フィオーレ……ビゼロワの北に位置するブリュゴーリュ北部と中部を結ぶ交易路にある中継都市。
セルペト……ブリュゴーリュ北部最大の都市。大陸中央へと伸びた交易路の中継都市で、異文化が混ざり合うためどこか異国情緒を漂わせる街並みが特徴。
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ディエビア連邦……大陸南東部に広がる連邦国家群。ブリュゴーリュやティファニアとは同じ緯度に位置するが、フェノムニラ山脈によって隔てられているため国交はほとんどない。宗主国であるダイアスを筆頭に、最北西の国ブリリア、東端の国ファセッタ、南部のガドル、北部のテブルス、北西のクラウ、比較的大きな中西部のマキアス、同じく中西部のプリシスなど、複数の国の集合体。
特筆すべきは、長く人身売買を主要産業としてきたことであり、そのために人間を支配するための魔法を発達させてきた。しかし、本編でこの国が登場する時点では革命が起きており、その支配体制が打倒されるとともに奴隷も解放されている。
キューレット……連邦宗主国ダイアスの首都。この街に攻め込んだ革命軍は、ダイアス王バレルモ・ジ・アスモ・ディアスと王族を捕縛し、中央広場に設置した断頭台で処刑した。これにより革命は成功し、革命軍はキューレットにて新政権を立ち上げた。
ペーア……マキアスの首都。革命後、この国は大統領制を敷いており、選挙を経て革命戦争の英雄がその座に就いている。自由度の高い政策もあり、その首都には連邦のさまざまな国から人と物が流入している。
迷宮……連邦中西部に位置する国、プリシスの首都近傍にある巨大要塞。革命戦争の勃発に伴い、反乱軍による侵攻を恐れた王によって国中の奴隷を投入した増改築が急ピッチで進められたが、反乱軍が別方向より攻めてきたことで王族は首都を放棄して逃亡。首都は呆気なく陥落したのだが、王命はその後も生き続け、反政府側から顧みられることもなく増築が続けられた結果、ただ肥大化することだけを目的に肥大化するという、手段が目的と化した、化け物染みた構造体となる。内部には都市すら内包し、そこで生活する大量の奴隷たちを解放、解散させようにも、受け入れ先を用意することもできないため、革命後は放置されてきた。
大坑穴監獄……マキアス南東の果てに位置する巨大な縦穴を利用した監獄。元は鉱石や宝石が採掘されていた鉱山で、最下級の奴隷が働かされていた。革命後は、各国の前政権側の戦犯、政治犯、そして体制側に使役されていた異世界人が収監されている。
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バーンクライブ……大陸中央よりやや南西に位置する大国。元々はそこまで大きな国土を有していなかったのを、先々代の王が次々と周辺諸国を侵略、併呑したという歴史を持つ。その子である先代王は、複数の民族や文化を内包する国を治めるため、魔法至上主義を掲げて強権的な支配体制を敷き、優れた魔法的素養の持ち主を優遇する一方で才無き者たちを徹底的に弾圧した。そんな体制を覆したのが現王で、魔法の才にかかわらずすべての民が魔法の恩恵を受けられるよう魔導機械化文明を築こうとしている。万民平等の思想を持つ若き王は、しかし弑逆した父王の血で汚れており、皮肉にも彼自身が血塗られた王家の血脈を強く受け継いだことを自らの手で証明している。
ヴラーヴェ……バーンクライブの首都。魔導文明の恩恵をもっとも受けている豊かな都市であり、高層建築の立ち並ぶ街並みはSF的ですらある。
ザーラス……首都より東に位置する都市で、国内でも最大の兵器工廠がある。
ドラッジ……バーンクライブ最東端の街。他国からの侵略に備えるために、都市そのものが要塞化されている。
アディマ……かつて鉱山だった街。先王時代には魔法の才能がないと判断された国民が鉱山労働者として送られていた。現王政権下では急速に廃れている。
ペラーレ自治区……ペラーレ語族という少数民族の自治区。先代王の治世まで、バーンクライブでは異民族に対し徹底した同化政策が実行されてきたが、現王は一転して文化の保護を行い民族の復権を認めている。首都はクールルという山岳地帯に築かれた城塞都市で、段々畑のような独特の都市構造をしている。これはバーンクライブによって侵略された過去から教訓を得て、長い防衛戦を意識した街作りが行われた結果である。
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ハリストン……強大な軍事力を誇る覇権国家。大陸中央に広大な領土を有し、国土の中域には王都エメラルダをはじめ、ゲータス、カンドルといった大都市がいくつも栄えている。西の軍事国家ジョージェンスとはたびたび紛争が起こっているが、それ以外の周辺国との関係は比較的良好で、特に東の宗教国家ハリストンとは同盟関係を築いている。
ピレット……最東部の城塞都市。
レシーク……西部最大の鉱山都市。
アルデ……北東部の街。酒造で有名。
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ジョージェンス…大陸北西の軍事大国。この国の特徴は、極めて好戦的な国民性にあり、領土の拡大や資源の獲得、政治的な駆け引きよりも、ただ闘争を求めるがゆえに周辺国に戦を仕掛け続けている。そういった風潮は内政にも発揮され、もっとも武力の強い戦士が王座に就くこととなっている。軍には〝王選将〟という国王候補の武人がおり、〝選王戦〟という決闘によって序列の昇格や王座の交代が行われる。ただし〝選王戦〟を行うためには軍で手柄を上げる必要があるため、頻繁に開催されるわけではない。
マージ……ジョージェンスの首都。〝階段〟と称される四重の城壁に囲まれた城郭都市であり、その堅牢さは覇権国家ハリストンの首都エメラルダ以上と評されている。
ヘリテ……南部最大の都市。南西の超先進国カルティアとの戦を想定し、巨大な城壁で覆われている。
カーヴス……マージに近い城郭都市。
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ニースシンク……本編の時代、この世界の人々は精霊を信仰している。精霊とは、人に魔法の力を授けてくれていると考えられている超常的存在。その精霊信仰には二大宗派があり、一方がアニミズムの延長のような信仰形式で宗教施設というものをあまり持たない〝原初精霊派〟、もうひとつが精霊神という人の生と死を支配する神を信仰する一神教〝神聖精霊派〟で、後者の宗派の総本山こそが宗教国家ニースシンクだ。他国にも〝神聖精霊派〟の信者は多く、その信心を利用し多くの布施を得て国家を経営している。
シュパリエ……ニースシンクの首都で〝聖都〟と呼ばれている。白亜の建物と色とりどりの花に彩られた非常に美しい街並みが特徴。
グレナ……ニースシンク中西部の都市。ハリストンを主とした外国との貿易で栄えた商業都市で、他国からの輸入品を各都市へと送るための大動脈として機能し、首都シュパリエを大きく上回る人口を有している。
ミラジェ、ルーシャ、セターリ……いずれもニースシンクの都市。
シグナ村……かつてニースシンク国内に存在した小さな村。
トピオン……シグナの最寄りの都市。グレナとハリストンとの貿易の中継都市。
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その他の国々
シャーメス……大陸最北に位置する小国群の内のひとつ。非常に貧しく国土も狭い弱小国だったが、強力な異世界人を召喚したことで近隣の国を侵略する。後にジョージェンスの侵攻によって結成された大陸北部諸国連合の中心となる。
ポメラタ……シャーメスによって滅ぼされた北の国。
ヴァンダム……バーンクライブのドラッジの北に位置する小国。ハリストンとの間の緩衝国のひとつ。
ダミアン……バーンクライブの首都、ヴラーヴェの北部に位置する小国。隣国であるバーンクライブとの関係は非常に悪く、国境地帯では両国軍による小競り合いが絶えない。
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闇地……上述の通り魔獣の生息域の総称。それゆえ地形や気候は各闇地によって大きく異なる。以下に紹介するのは五大闇地帯という大陸でも特に大きな闇地である。
中央大闇地帯……ティファニアとバーンクライブの間に広がる大陸最大規模の闇地。その位置関係から、ティファニアでは北部大闇地帯、バーンクライブでは南部大闇地帯と呼ばれている。非常に広大ゆえ一律ではないが、その大部分を森林地帯が占めており、それらの植物はすべて漆黒に染まっている。
火山大闇地帯……ジョージェンス北に広がる火山地帯。五大闇地帯の中でももっとも過酷な環境で、地中からマグマと火山ガスが常に吹き出ており、人の身では立ち入ることさえかなわない。また、棲息する魔獣は過酷な環境に適応した強靭な個体ばかり。
雪氷大闇地帯……ハリストンの北、大陸北部諸国連合を形成する小国家群よりさら北の大地に広がる極寒の地。季節の存在しないその土地は常に吹雪いており、人が訪れればたちまち己の位置を見失い、立ち往生したまま永久に雪の下へ埋もれてしまう。
湖群大闇地帯……ニースシンクの東部に広がる闇地帯で、点在している瑠璃色のカルスト泉は宝石のように美しいが、その見た目とは裏腹に強い毒を持った水棲魔獣が多く潜んでおり、旅人や冒険者が迂闊に侵入すれば一瞬で水底へと引きずり込まれてしまう。
大山脈闇地帯……大陸最大の高度を誇るフェノムニラ山脈の異称。大陸の南端からから中央付近までにそびえ立ち、ブリュゴーリュとディエビア連邦を隔てている。地上からでは離れていても頂上が目視できないほどの高さを誇る断崖の表面には、ほぼ九十度の切り立った崖で生きるために独自の進化を遂げた魔獣が無数に蠢いている。