表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラブコメのモブキャラがこんなにも辛いとは  作者: 佐和田
モブの気炎万丈日記(2編)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/26

モブと闇


ー9月5日ー

「颯ー!」

「菊か、おはよ」

「最近早いじゃん、何かあったの?」

「いや、もう遅刻する年じゃないかなーって」

"ドン"

「いて」

「何言ってんの!まだ学生なんだから、サボりの1つや2つ、許してくれますよー」

「ちょっ、何する!」

「ファミレス行こ、学校なんて、午後からでいいって!」

「でも」

「いこーよー」

「行かない」

「聞こえませーん」

「行かないって!」

"ドカッ"

「きゃっ!」

「あっ…いや」

「……最低」

「…ごめん!」


ほんと、最低な奴だ、でも許してくれ、俺だって学校サボりたいんだよ……青春したいんだよ……こんなこと、放り投げてやりたい……



ー学校ー

「そして、894年に、遣唐使は菅原道真によって廃止され……」


っていう妄想してる俺最低だな、あーあ、何のやる気も起きない、授業はつまんないし、外には雀さんがいるし…雀さん?!


「おい日野!どこ見てんだ!」

「あ、すいません、ちょっとトイレ!」

「ちょっ、おい!」

「俺もー」

「立川まで!おい!」




ー13年前ー

「おい阿佐ヶ谷!またスカートかよ!」

「女装男ー!」

「変だよ、阿佐ヶ谷くん」

「くんじゃなくて、さんだろ?」

「そっか、ごめんね、阿佐ヶ谷さん」


私は、自分の意思でスカートをはいている訳じゃない


「はぁぁぁーー!!」


このキャラ、かっこいい!オラ、か……いいかも!


「こんなのじゃなくて、英語講座見なさい」

「……」

「返事!」

「はい……」



ー洋服屋ー

「来年から、制服」


ただの制服だったが、オラは食い入るように見つめていた。ズボンがはける、神の鎧に見えた。かなり気持ちが昂っていたが、それはただのぬか喜びとなった。



ー自宅ー

「雀、あなたの通う中学校はね、多様性を尊重してくれる素晴らしい学校なの、だから、はい、これから3年間かわいい制服でいけるんだよー、やったね!」


ひらひらのスカートが、閻魔の鎧に見えた。



ー学校ー

「あいつの母親、出てたな」

「見た見た、フェミニストの阿佐ヶ谷"(ひかる)"ね」

「ていうか、もともと光子(みつこ)って名前だったらしいぞ」

「どこ情報?」

「配信者」

「信用できるかー」


今回ばかりは、信用していいんじゃないか。そうツッコミを入れられるほどの仲じゃない。



ー北町高校ー

「ここが…」

「君、中学生?」

「はい…」

「ちょっと中、来なよ」

「あっ、いや」

「いいからー!」



ー生徒会室ー

「僕は生徒会長の新小岩、君は?」

「阿佐ヶ谷雀です」

「雀さんか、君は北町に入りたいのかい?」

「まだ、考え中で…」

「ふーん、じゃあこれ」

「あぁ、はい」

「気軽に連絡してよ、他の生徒会メンバーはみんな女子だから、話も会うんじゃない?明日また来なよ」

「あ、ありがとうございます」

「じゃあごめん、この後地域の掃除お手伝いがあるから、またね!」

「は、はい」


あの会長、かっこいい……



ー自宅ー

「雀、高校は優満にしなさい、この高校は多様性を尊重しているすばらしい学校で」

「オ、私、北町がいい、この学校の生徒会長さん優しくて、頭も」

「はぁ〜〜??ふざけたこと言うんじゃないよ!あんなとこ多様性なんか気にもしない昭和な学校よ?あんたじゃ絶対耐えられない、優満以外は許しません!」

「でも」

「でもじゃない!あぁもおうるさいわね!」

「お母さ」

「あああぁぁぁぁぁいやぁああぁぁぁ!!!」


こうなったら止められない、殴られた、壊された、貶された。



ー学校ー

「ねぇ、ななヤッたって本当?」

「まぁ、うん」

「きゃー!!」

「もしかして、例の?」

「うん、すごかった、今度友達連れてきてって」

「行くー!」

「私も!」

「このクラスの男レベル低いしね」

「やっぱ年上だわー」

「じゃあ放課後ね!」


うざい、うざい、うざい



「じゃあ先生出張があるから、話がある人は明日ね、じゃあ終わりー」

「楽しみだね」

「ね!」


きもい、きもい、きもい



ー北町高校ー

校門から生徒会長が見えた、生徒会メンバーっぽい女子5人連れてってる、これから会議なのかな?そう思いながら入ろうとした瞬間、聞き覚えのある声がした。


「写真めっちゃかっこいいじゃーん!」

「生徒会のメンバーみんな食ったって言ってた!」

「やばー!」


急いで隠れたので、気づかれることはなかった。だが、嫌なことに気づいてしまった。


「……そういう、ことなのか」


全てを察したオラは、あの人の連絡先を消して、北町に通う人しか通らない道から帰っていった。道中で同じような女子が数十人、近所に住んでそうなおばさん数人、誰かの性癖を語っている女教師共、うちのクラスの担任が通っていったが、そんなことどうでもいい。やっぱりオラは、女の子なのだろうか。



ー卒業式ー

優満に通うことになった。そのせいか、母はとっても気分が良い。でもオラは、もう何も思わない、思ったら負けなんだ。結局例の3人は妊娠していなくなり、担任は懲戒免職、あまり生徒と関わらないタイプの副担任と卒業を迎えた。


「じゃあみんな、高校でも頑張って、以上」

「なんか、あっさりしてるなー」

「まぁとりあえず打ち上げいかない?」

「もちろん!みんな行くぞー!」

「「「おーー!!」」」


学校帰り、夕焼けの空、目の前には、新小岩。


「まったく、連絡先消さないでくれよ、大変だったぞ」

「今更何ですか」

「写真送るから、もっかい登録して」


………


「?!」

「盗撮したんだ、見えるか?」

「うちの、元担任…」

「男子トイレ入ってったろ?あいつ、男だった、ちゃんとあれも見たぞ、雀さんと同じだな」

「…どういうこと」

「つい最近、僕たちの両親が離婚したんだ、母さんが知らない人間の子を孕んだらしいって」

「なっ……」

「けっこう家族仲良かったからさ、ヤッた奴むかついて、調べてたんだ、そしたら」

「元担任にヒットした」

「雀さんの母親も、この学校の体育倉庫でね」

「……」

「雀さん、何も思ってないね」

「あの人の勝手だから」

「話戻すと、この話を生徒会にしたんだ」

「すごいことしてるんですね」

「まぁまぁ、そしたら副会長が」


「そこらへんの性格悪い女共、成敗しようよ」


「って言いだして、僕反対他賛成で可決しちゃって、ついでに僕も利用されちゃって、みたいな」

「……」

「でも、すっきりしたよ、あいつが中学生襲ってるとこも撮れたし、復讐は無意味だと言う人もいるが、立場によって意見が変わることってあるんだよ、客観的に物事を捉えることの大切さを理解する良い経験だった」


そう誇らしげに語った男が、急に耳元で囁きはじめた。


「その後、生徒会メンバーと乱交したことは、ここだけの秘密ね」

「……」

「はぁ、煽ったつもりなんだけど、雀さんには効かないようだ」

「何が言いたいんですか」

「君は結論しか聞かないのか?だから友達が出来ないんじゃないのか?」

「帰りますよ」

「わーった、あのさ、うちの秘密基地に来てよ」

「秘密基地?」

「秋葉原にあるんだ、入学式が終わったら、連れてってもらって」

「………」


もう、どうでもよかった。



ー入学式ー

変わらない、いつも通りの日常だ。


「阿佐ヶ谷雀」

「あっ、先生」

「行くぞ」

「行くって?」

新小岩(しんこいわ)(みなと)から聞かなかったか?秘密基地だよ」

「なっ…」


その人は、オラの担任の先生、小金井東だった。




ー校庭ー

「日野!事情を説明しろ!」

「そんな暇はない!雀さん!」

「あぁ、日野颯、よく来たね」

「思い出したんですね!よかった、あの、鋼さんに連絡を…」

「思い出したよ、全て、全て三鷹様のお陰だ」


思わず、スマホを落としそうになった。


「なんで…あいつの名前を…」

「やっぱり、オラには朝廷が似合ってる」

「なっ…そのナイフはっ」


"シュッ、グザッ"


「あっ……あぁ…」


一瞬だった、本当に。


「ガハッ」

「た、たちかわぁぁぁああぁあぁぁああああ!!!」


もう、やらなきゃいけないのか


「もどっ!もどれ!」


違う、やるんだ、拒否権は、ない。


「もどれ!もどれ!」


誰も、失わせない。この物語は、誰も欠けちゃいけないんだ。


「もおおぉぉどぉぉおれぇええぇぇぇ!!!!!」


辿り着いてみせる、世界線Ⅱへ、希望ある世界線へ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ