第7話 ソウルプラザ(その2)
一日遅れで、第7話ソウルプラザ(その2)です。
少しペースダウンです。よろしくお願いします。
支配人に呼ばれて中へ入ってきた二人は、個室クラブの従業員だった。支配人が話を聞いたところ、この夜9時過ぎ、矢部が酔って一人でクラブへ入ったことが発端らしい。
あいにく店に日本語の出来る者がおらず、矢部がアガシを連呼するので、席に女性をつけた。それで矢部は機嫌を直して酒を飲んだ。
やがて閉店となり請求書を渡すと突然矢部が怒り出したと言う。
額面は30万ウォン、日本円で約9万円になる飲み代だった。
怒鳴る矢部を従業員が取り囲むと、
「金はない。欲しいなら、ホテルへ取りに来い――」
と言って、店を出てきたらしい。
話を聞いていた支配人は二人に尋ねた。
「彼は警察を呼べと言っている。確かに彼は日本人だが、30万ウォンは高過ぎる。君ら警察を呼んだら、彼から金が取れるのか?」
横でそっぽを向いている矢部は、まさか彼が店の肩を持つとは思っていない。ホテルはどんなことがあっても客の味方で、悪いのは法外な金を要求する店の方だと信じている。
だが支配人の話に、二人は折れて値下げを承諾すると、支配人は彼らに言ったのだった。
「店の名を言いなさい。私の顔を立ててくれるなら、また他のお客さんを紹介しよう。ホテルとクラブは敵ではない。私が約束する。だから安くしなさい。損はないだろう」
その言葉に、上役風の男がまるで親に阿るように、喜んで半額にすると言ったのだった。
ある意味、矢部の目論見は当った。
ホテルへ店の者を連れてきて、請求が半額になった。
だがその訳を知らない。
彼は支配人に値下げのことを聞いて、また男らに喰って掛かった。
すると顔色を変えた支配人が声を荒げた。
「分かりました。この二人は請求を半分にしました。でもお客さんが不服なら、彼らに私の顔が立ちません。警察を呼びます。あとはご自分で交渉をなさってください」
そう言って、大きな額に端正な顔を顰める支配人に、矢部は言葉を失ったのだった。
(つづく)
余談ながら「アガシ」と言うのは、日本語で「お嬢さん」である。
もう少し年輩の女性なら「アズマ」となり、その境はファジー!
食堂で何か注文する時「アガシー」と呼ぶ声は、底抜けに明るい。
まあ日本で言う「ねえちゃん!」よりも、いかにも耳障りが良い。




