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風呂嫌い?

「……ハヤト」


 誰かに呼ばれた気がして目を開けるハヤト。目に映ったのはクシュの顔だ。何故か仰向けのハヤトに覆い被さるようにしている。しかも薄着でかなり肌が露出している。


「な、なんで!?」


 ハヤトは身体を動かそうとするが何故か指一本も動かせない。


「ハヤト」


 更にクシュの顔が近づきハヤトは焦りだしじたばたしようとしたがやはり動かない。


「く、クシュ!? 待っ」


 唇が重なりそうになる距離までクシュの顔が近づく。思わず目を瞑るハヤト。


「……ぺろぺろ」


 ハヤトの口周りを舐めだすクシュ。


「クシュ、やめっ」

「ぺろぺろ」


 やめるよう言ってもクシュは止めない。堪らず瞑っていた目を開けるハヤト。






「え…………リル?」


 そこにはリルの顔があった。思考が追いつけずしばらく呆然するハヤト。


『どうした? 魘されていたけど変な夢でも見ていたのか?』

「夢?」


 ハヤトは右手で顔を触り濡れている事に気づき目線でリルに尋ねる。


『ハヤトを起こすために舐めたぞ』

「そっか……夢か、夢かぁぁぁぁ」


 やっと理解したハヤトは思はずリルに抱きつきもふもふの中に顔を埋める。


『ど、どうしたのだ』

「ううん、なんでもない。ありがとな」


 部屋の掛け時計を見ると秒針は四時を指していた。


「顔洗うついでに露天風呂入ってくるけど、リルもどう?」

『気持ちのか?』

「うん、気持ちいいよ」

『よし、行こうではないか』


 余程楽しみにしているのかリルの尻尾は結構揺れている。そんな先導するリルを見てハヤトは微笑んだ。

 湯舟に突入しそうになるリルを慌てて止めるハヤト。


「洗ってからね」

『うぬ』


 洗い場まで誘導してぬるま湯を顔にかからないように洗うハヤト。


「次は……人用のシャンプーだけど大丈夫かな? うーん……リル、肌が痒くなったら言って」

『うぬ』


 あっという間にリルの全身が泡で包まる。ぬるま湯をかけ泡を洗い流すとリルはぶるぶると身体を震わす。


「うわ! やるなら前もって言ってよー」

『う、うぬ』

「俺もすぐ洗うから待って」


 そして湯舟に向かうハヤトとリル。先にハヤトが入る。続いてリルが入ろうとするが片足を浸けると後退する。


「無理しなくていいよ?」

『し、しかし。我が言ったことだ! 絶対入るのだ!』


 リルのためになにかいい方法が無いか考え始めるハヤト。


「そうだ。リル、小さくなれる?」

『可能だ』


 リルの身体が縮小され、カルト村で過ごして子狼サイズになる。そんなリルを抱きかかえ足にお湯をかけながら揉み解すハヤト。


「どう?」

『う、うぬ。これなら平気だ』

「…………もう、平気そう?」

『う、うぬ……』


 ハヤトは湯舟に腰をゆっくり下ろす。リルは怖いのかハヤトの身体に爪を立ててしがみつく。


「っ……リル、大丈夫だから。大丈夫、大丈夫」



 片手でリルの頭を撫でながら落ち着かせるハヤト。どうやら効果があったようでリルは大人しくなる。


「まだ怖い?」

『こうしていれば平気だ……』


 リルを離さないようにゆっくりとした手つきでマッサージをし始めるとリルは気持ちよさそうな顔になる。すると爪を立てた時に出血したところをリルは始めた。


「くすぐったいよ」

『痛むか? ハヤト』

「少し痛かったけどこれぐらいなら平気だよ」

『そうか……』


 そうしてゆっくりのんびりと湯舟に浸かるハヤトとリルは夜明けの空を眺めるのだった。

 しばらく入った後部屋に戻るハヤトと腕に抱えられているリル。


「リル、降ろすよ」

『嫌だ』

「嫌って……まぁいいけど」


「もう……食べれないっす! ……むにゃむにゃ……」


 突然のセゾンの寝言にハヤトとリルは振り返り笑いを堪える。

 ハヤトは時計を見る。


「五時か……オーロラさん起きてるかな」

『どこかに行くのか?』

「迎えの馬車の時間を確認しに、ね」

『我も行くぞ』

「了解」


 離れないリルを抱え静かに部屋を出るハヤトは【世界地図】を見ながらフロントに向かう。

 フロントに着くと明かりはついているが誰一人いなかった。


「やっぱいないか……」

『ハヤトあれなんだ?』


 リルはカウンターにある呼び鈴を見つける。ハヤトは呼び鈴を一回叩く。チリーンと音が鳴り響く。


「はーい、何か御用ってハヤト様? どうしましたこんな朝早く」


 奥から出てきたのオーロラだった。


「おはようございます。その、迎えの馬車の時間聞くの忘れて……」

「そうですか、少しお待ちを。えっと……」


 紙を取り出し確認をするオーロラ。


「九時に迎えの馬車が来るそうです」

「わかりました。ありがとうございます!」

「いえいえ。あ、そうでした。ハヤト様、朝食はお部屋に運びましょうか?」

「はい、俺の部屋にお願いします。あと、リルの分もお願いします」

「かしこまりました」


 オーロラに一礼した後部屋に戻るハヤトとリル。ベットの上に腰を掛けるとリルはハヤトの膝の上で丸くなる。リルの頭を撫でていると隣の部屋と繋がっている扉が開く。


「よっす! ハヤト早起きだな」


 ちょっと寝癖が目立つ太陽ようなオレンジ色の髪のヴェスナーだ。


「おはよう、ヴェスナーも早いね」

「まぁな。てかクシュとセゾンが遅起きなだけだけどな」

 

 そう言いヴェスナーはベットに近づきハヤトの隣に腰を下ろす。


「この小さいの、リルなのか?」

「そうだけど」

「大きいのはかっこよかったけど、こっちだと可愛いな。撫でていいか?」

『嫌だ』


 どうしよかリルとヴェスナーを交互に見ているとリルが念話で伝えてくる。


「ヴェスナーごめん。また今度にして」

「了解。それと、昨日はごめんな……」


 昨日部屋に戻ってきたクシュはヴェスナーを睨んだ後、何度も声を掛けたけど無視された。ヴェスナーはやってしまったと思い朝早くに部屋を訪れたのだ。

 忘れていた記憶を思い出しハヤトは睨んだ後、ヴェスナーの額にデコピンをする。


「痛い!」


 意外と痛かったようで涙目になり額を押さえるヴェスナー。 


「本当は殴りたいけどデコピンで許す」


 ハヤトのマンティコアを一撃で上空まで殴り飛ばす戦闘を思い出し一気に顔が青ざめるヴェスナー。


「お、おう」

「それと、またこんなことしたら今度こそ殴るから」


 微笑みながら拳を作るハヤト。


「わ、わかった。もうしないから、その腕を下ろせ!」

「……冗談なのに」

「ハヤトの殴る力じゃ冗談で済まないから!」

「うるさいっすよ……」


 ヴェスナーがうるさいかったようで文句を言うセゾン。ハヤトは窓を方に顔を向けると朝日が部屋を照らしている。外は朝になっていた。

 

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