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約束

「ハヤトさん今いいですか?」


 夕食の前ハヤトはのんびり部屋で寛いでいるとロイドが訪ねてきた。

 ハヤトはベットから身体を起こし扉を開く。


「どうした?」

「部屋入ってもいいですか?」

「どうぞ」


 ロイドを部屋に招き入れ椅子に座る二人。リルはベットで寝ている。


「それで?」

「ハヤトさんは馬車が再開したらこの村出ていくんですよね?」

「そうだな。ちょうどいいし考えてるよ」

「この村にはもう戻らないんですか?」


 ハヤトはこの村に来てからの事を考えた。


「どうだろ……わからないかな」

「そうですか……」


 ロイドは俯く。


「でも、この村は俺にとって第二の故郷だからさ。いつかは戻るよ」


 ハヤトは少し恥じらいながら笑みをこぼす。


「絶対ですよ」

「了解」


 お互いに小指を出し合い約束をする。


「二人ともご飯出来ましたよ」


 タイミングよくアンネが大声で呼ぶ。


「今行く!ハヤトさん行きましょう」

「おう」


 先にロイドが立ち上がりドアに向かう。


「ロイド……あのさ」

「はい?」


 ロイドを呼び止めるハヤト。


「あ……えっと、リルを連れてからいくから先行ってて」

「はーい」


 返事をしたロイドは先に廊下に出る。

 部屋を出ていくロイドを見送るハヤトにリルは念話を使う。


『ふん』

「なんだよ」

『なんでもない。ほら飯だろ、さっさと我を運べ』


 運べと要求するリル。


「わかったよ……」


 仕方なくリルを抱きかかえ部屋を出るハヤト。

 和気あいあいと食事をしたあと自室に戻ったハヤトは色々と考え事をしてるうちに眠りに就いた。





 大雪があった日から三日後。

 この間、ハヤトはロイドやローウェルのパーティー『ストーム戦士団』の人たちと一緒に依頼を受け過ごしていた。

 ハヤトの髪や片目の色は結局戻らなかった。だけどハヤトは翌日に戻らなくても心の中では思っていたためそれほど落ち込まなかった。

 現在ハヤトは依頼達成の報告をしに冒険者ギルドに訪れていた。今回はリルだけだ。


「これで依頼達成にゃ。お疲れ様にゃ」

「ありがとうございます」


 ハヤトは報酬金をバックにしまう。その時グラルに声を掛けられた。


「ハヤト殿、今時間は空いているかな?」

「グラルさんこんにちは。はい、大丈夫です」


 グラルに部屋に案内されたハヤトとリル。

 お茶とリル用の水を出してもらいグラルが座り頃合いをみてハヤトは尋ねる。


「それで用件はなんですか?」

「うぬ。用件は明日、王都行きの馬車が再開するのでな」

「いよいよ再開するんですね」


 グラルは頷く。


「それでな、ハヤト殿には馬車の護衛を依頼したいのだ」

「護衛ですか……」

「ハヤト殿の他にも依頼をしているから心配する必要はないぞ」


 グラルは依頼書をハヤトに渡す。

 ハヤトはじっくりと依頼書を読む。


「……わかりました、依頼を受けます」

「わかった。では明日早朝七時に門の前でよろしく頼む」

「わかりました」


受付嬢のカレンにも挨拶をし冒険者ギルドを後にするハヤトはお世話になった人たちに挨拶周りをする為村を歩く。


「こんにちわ!レギンさんいますか?」


 最初に訪れたのは武器屋。


「なんだ坊主か。どうした?」

「実は明日王都行の馬車に乗るので挨拶周りに来ました」

「そうか、気を付けて行って来いよ!」

「はい」


 武器屋を出ると赤毛の女の子――エマがハヤトに見つけ駆け寄る。


「ハヤト兄ちゃん!こんにちは」

「エマちゃんこんにちは」


 ハヤトはしゃがみ挨拶を交わす。エマの後ろを見ると母親のリタと目線があいお互いに会釈をした。


「リタさんこんちには。買い物帰りですか?」

「こんにちは。ええ、そうよう。ハヤトさんは武器の整備に?」

「いえ、実は……」


 ハヤトは二人にも話した。


「あら、そうですか。寂しくなりますね」

「ハヤト兄ちゃんも戻ってこないの?」


 エマは泣きそうになりながら尋ねる。

 そんな様子をみてハヤトは再びしゃがみ微笑みながらエマの頭を撫でる。


「いつになるか分からないけど、きっと戻ってくるよ」

「ほんとう?」

「本当」


 エマとも指切りをする。

 絶対戻ってこないと密かに思うハヤト。

 親子と別れると空は暗くなりハヤトはロイドの家に帰ることにした。


「あの、ロイドにアンネさん。話したいことがあるんだ」


 夕食を終え居間で寛いでいるロイドとアンネにハヤトは話を切り出す。

 ハヤトの真剣な雰囲気に察し姿勢を正す二人。リルはロイドの足元で丸まっている。


「今日グラルさんから明日馬車が再開するって聞いて、急だけど明日村を発つことになった」

「そうですか……」


 そういうアンネ。


「急ですいません……」

「本当ですよ。前もって言ってもらえばハヤトさんの好きなものを作ったのに」

「すいません……でも俺、アンネさんの料理美味いからどれも好きですよ」


 ハヤトに褒められ照れるアンネ。


「ありがとうハヤトさん」

「あと、アンネさん。これを」


 そう言いハヤトは【無限収納】から綺麗なエメラルド色した蝶型のブローチをアンネに渡す。


「アンネさん今までお世話になりました」

「あら、いいのに……大事にするわ」


 今度はロイドと向き合う。


「ロイドにはこれを」


 【無限収納】から今度は翡翠色の羽のネックレスをロイドの首に手を回しつける。


「ハヤトさん、ありがとうございます。大事にします」

「うん」


 渡し終えたあと三人はこれまであったことを思い出しながら語り合う。リルは相変わらず寝ている。

 自室に戻ったハヤトは仰向けで大の字にベットに寝そべる。


「いよいよか……」

『寂しのか?』

「……そうかも」


 リルはハヤトの顔を舐め始める。


「うわ。や、やめろよリル」


 リルとじゃれているとドアがノックされた。

 身体を起こしドアを開けるハヤト。そこにいたのはロイドだ。


「どうした?」

「あの、ハヤトさん。一緒に寝てもいいですか?」

「……いいよ」


 ロイドを招きいれリル、ハヤト、ロイドの順に横になる。


「おやすみなさいハヤトさん、リル」

「おやすみ」

「わふ」


 三人は目を瞑るとすぐに眠りに就くのだった。


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