影響
『もうすぐ着くぞ』
「了解」
リルの背に乗りあっという間に村に戻るハヤトたち。
「あれ?雪止んだのに門が閉まってる」
門の手前で止まるリル。それに合わせてハヤトはリルの背から降りた。
「よっと。リル、とりあえず子狼のサイズに戻って」
『うぬ』
子狼のサイズに戻るのを確認し門の扉をドンドンと叩くハヤト。
「アーケンさん!ハヤトです。扉を開けてください」
しばらくして扉がギィーっと音を立てて扉が開く。
「おかえりなさい。ハヤトさん」
「え……ロイド?」
ロイドは家で待っていると思っていたハヤトは驚く。
「なんでここに?」
「驚かせようと思って待ってました。あ、ちゃんと雪が止んだ後母さんに許可取って来ているので大丈夫です」
「そ、そうか」
ロイドの大胆な行動にハヤトは若干引いた。
「お、ハヤトさん。戻ったんで。リルもお帰り」
奥からアーケンが顔を出す。
「はい。今帰りました」
「わふ」
アーケンと会話していると視線を感じるハヤト。目を向けるとロイドがじーっと見ている。
「どうした?」
「ハヤトさん……髪と左目の色……」
ロイドはさっそくハヤトの変化に気づく。
「あー本当だ」
ロイドが言ったあとにつられてアーケンも気づいた。
「えっと、ちょっと……気分変えよと思って……どうかな?リルとお揃いにしたんだけど……似合ってないかな?」
真実を伏せて話すハヤト。
「いえ!似合ってます!かっこいいです!」
「いいんじゃないか?」
二人に褒められ頭を掻きながら照れるハヤト。足元ではリルが嬉しそうに尻尾を振っている。
「ありがとう、ロイド。アーケンさん」
「わふ」
二人にお礼を言うとハヤトの腹の音がなる。太陽は頂点に位置している。もう昼時なる。
「あーお腹空いた……途中で食べてから冒険者ギルドに行くかな」
「わふ」
「ロイドはどうする?」
尋ねるハヤト。アーケンは仕事に戻りいなくなっていた。
「あ、俺もいいですか?」
「了解。じゃ行こっか」
「はい」
道中にあった屋台で昼食を済ませ冒険者ギルドに辿り着くハヤトたち。入る前にリルを懐にしまい扉を開ける。冒険者ギルド内は人が職員しかいない閑散としていた。
「あ、ハヤトさん。ロイド君。こんにちはにゃ」
空いている受付に行くと受付嬢のカレンが座っている。
「こんにちはカレンさん。朝から働いているんですか?」
「そうよにゃ。って言っても誰も来なくて暇してたにゃ……あれ、ハヤトさん雰囲気変えたにゃ?」
カレンもハヤトの変化に気づく。するとリルはハヤトの懐から顔を出しす。
「わふ」
「リル!」
突然の行動に驚くハヤト。
「わー可愛いにゃ。魔物の子犬にゃか?」
「ちょっと成り行きで契約した子狼です」
「ハヤトさん魔物使いだったにゃね」
魔物使い。契約した魔物を使役して戦う者。さほど珍しくない存在だ。
リルは魔物と勘違いされて顔を顰める。リルの頭を撫で宥めるハヤトは本題を切り出す。
「今日グラルさんに会いに来たんですが、会えますか?」
「ちょっと確認してくるにゃ。待っててにゃ」
カレンは席を立ち奥にあるギルドマスターのグラルの部屋に向かった。
ロイドと雑談しながら待っているとカレンが戻ってきた。
「お待たせにゃ。こっちにゃ」
カレンに案内され部屋に入るとグラルはソファーに座っていた。
「よく来た。今お茶を出すから座って待っておれ。そちらの子狼には水を出そう」
「ありがとうございます」
そう言われたハヤトとロイドは座って待つ。
案内を終えたカレンは一礼してそっと部屋を出る。
グラルは立ち上がりお茶を入れ始める。次にリル用に深めの皿に水を入る。
「さあ、冷めないうちに」
「「いただきます」」
「わふ」
温かいお茶を飲みほっとするハヤトとロイド。あっという間に水を飲みほしたリルはハヤトの足元に戻り丸くなる。
「美味しいですね」
素直に感想を言うハヤト。
「そうだろ。はっはっはっ。それで今日は馬車の件かね?」
「はい。それもあるんですが実は……」
ハヤトはロイドの件とリルの件を猛吹雪を晴らしたこと以外を話した。
「そうか……本当に平気かロイド」
「平気です」
ロイドは元気よく答える。
「平気だとロイドも言ってるんですが、一応様子見をすることになって馬車を遅らせたくて相談しに来たんですがなにかありますか?」
「馬車の件なら問題ない」
グラルは立ち上がり机にある一枚の封筒を持ってくる。
「先ほど報告書が届いてな。先ほどの大雪の影響で王都までの街道が雪に埋もれてしばらく再開できそうにないそうだ。その報告書には氷帝様からの言葉が記された紙も入っておってな」
グラルは氷帝からの紙をハヤトに渡す。そこに書かれていたのは馬車が再開してから来るべしっと一言だけだった。
「と言うことで馬車は再開したら追って連絡する」
「わかりました」
氷帝は意外と心が広いとハヤトは心の中で思うのだった。
「問題は神獣の方だな……ハヤト殿の外見が変わったのも契約した影響か?」
グラルはちらりと床で丸くなっているリルを見たあとハヤトを見る。
「かもしれません」
ハヤトは曖昧に答える。
「この件を知っているのは話を聞く限りだと儂にロイドにアンネとミンシアで間違えないな?」
ハヤトは少し考える。
「はい。グラルさん含めて四人です。他の人たちには魔物の子狼と説明しているので」
「そうか。この事は他言無用だぞ」
「わかりました」
リルの事で釘を刺され冒険者ギルドをあとにしロイドの家に帰宅するのだった。




