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リル

「なんで小さくなったの?てか、リルの武器は?」


 目の前で色々なことが起こりすぎて思考が追いつけなくなったハヤトはリルに矢継ぎ早に質問した。


『あとで答えてやる。早く帰らないと雪が強くなるぞ?」


 リルに言われ空をみる。先ほどよりも降る量が増えている。


「そうだな。帰ったら聞かせてくれよ」

『ふむ』


 リルをローブの中に入れる。毛がもふもふしていて自然のカイロみたいになって温かい。苦しかったのかリルは首だけを外に出した。撫でたくなる衝動を抑えて門に向かった。


「ちょっと走るぞ」

『うむ』


 リルに走ることを伝え急ぐ。もうすぐで門が閉まる時間だからだ。一度閉まれば朝までは開かないため野宿するしかない。しかし氷の階層世界の夜は高確率で雪が降るため零度以下にもなり野宿は危険でしかないためこの階層世界の住人たちは夜は出歩かないし、閉まる前に戻るのが当たり前なのだ。

 ロイドが一晩帰ってこなく周りが心配したのはこの背景があったからだ。


「はぁ……はぁ……間に合った」

「ハヤトさん、もう少し余裕を持って帰った方がいいぞ」


 息を整えていると門兵のアーケンさんに言われた。


「そうですね。気を付けます」

「わふ」

「その犬みたいのはなんだい?」


 アーケンさんは頭だけ出してるリルをみてた訪ねてきた。


「魔物に襲われている所を助けたら、懐かれてしまって……外で一匹にするのも可哀そうだったので連れてきました。責任は俺が持ちます」

「くぅん」


 リルは上目遣いで可愛く鳴き声を出す。容姿を最大限に使ったやり方だ。どこで教わったんだよと心の中でハヤトはツッコミを入れた。


「し、仕方ねえな!ハヤトさん、ちゃんと面倒見てくださいね!」

「わかりました」

「わふ」


 リルの可愛さに墜ちたアーケンさんは撫でたそうにちらちらとリルを見ている。


「撫でます?」

「いいのか!」


 撫でるか尋ねたら物凄い勢いで返事が返ってくる。余程撫でたかったのかとハヤトは苦笑した。


『おい。我は嫌だぞ』


 リルが念話で話しかけてくる。

 初めて会った時、リルはその場にいた全員と念話していた。アーケンさんにも聞かれたと思いおそろおそろみた。


「早く撫でさしてくれよ」


 アーケンさんに目を輝かせまるで子供のように催促している。どうやら聞こえてないみたいだ。ハヤトが疑問に思っているとリルがまた念話で話しかける。


『お主にしか念話は使っていない。それに契約した事でお主も念話が使えるぞ。頭の中でイメージしては話しかけてみろ』


 リルに言われ頭の中でリルに話しかけるイメージをした。


『リル聞こえる?』

『ふむ』


 成功したようだ。さっそくリルを宥めた。


『今回だけだから、な?』

『嫌だ』


 リルは頑なに拒否をする。あまり時間をかけれないと思いハヤトは最終手段を使う。


『俺が聞ける範囲ならなんでも言うことを一つだけ聞くから。お願い!今回だけ』

『……今回だけだぞ』

『ありがとう』

『ふん』


 リルは渋々承諾してくれた。

 アーケンさんにリルの頭を近づかせるとわしゃわしゃと撫でた。

 数分撫でて満足したアーケンさんは活気が溢れ、リルは疲労困憊になった。

 アーケンさんに別れを告げロイドに家に着いた。その間リルは一言も喋らなかった。


「ただいま」

「お帰りなさい。もうすぐご飯が出来るから着替えてきてください」

「わかりました」


 ハヤトはリルを連れて部屋に戻った。ローブからリルを出そうとしたときリルは部屋ギリギリになる大きさまで戻しハヤトをベットに押し倒した。


「リル……重い……」


 腹を前足で押されて呼吸が辛くなる。どかせどかせようと動かすもびくともしない。すると今度は頭を乗せてきた。


「ぐっ……リル……ほんとに、重い……」


 余りにも重く辛くなり涙目になった。


『疲れたのだ……』


 リルの念話でキョトンとしたハヤトはリルの頭を優しく撫でた。


「辛かった……よな、本当にごめんな」


 リルはハヤトの顔をちらり見た後子狼のサイズに戻った。

 呼吸が楽になり大きく深呼吸したハヤトの顔リルは近づきペロペロと舐め始めた。


「くすぐったいよ」

『悪かったな……』


 リルは素直に謝った。ハヤトは身体を起こし姿勢を正しリルに向かいあった。


「俺も悪かった。リルが嫌がることはさせない。約束するよ」

『絶対だぞ?』

「ああ!」


 リルと和解したハヤトは契約のことを聞こうとしたら扉がノックされる。


「ハヤトさん夕食出来ましたよ」


 夕食の準備が終わりに呼びに来たアンネさん。


「今行きます」


 と返事をしたハヤト。アンネさんは扉から離れ居間に戻っていく。

 ふとリルの食事をどうするか考えてなかったハヤトは尋ねた。


「そういえばリルって何食べるんだ?」

『我は食べなくても平気だ』

「そうか……」


 明らかに残念がるハヤトに気が付いたリルは疑問を声にした。


『何故残念がるのだ?』

「一緒に食べたかったからだよ」


 鼻を掻きながらハヤトは素直に答えた。


「ハヤトさーん、まだですか?」


 アンネさんが催促している。


「今行きまーす。……じゃ行ってくるね」


 リルを置いて部屋を出ようとしたときリルに呼び止められた。


『待て!我も行く』


 ベットから降りたリルはハヤトの足元まで尻尾を振りながら駆け寄ってくる。


『食べなくても平気だが決して食べないわけないぞ!主がそこまで言うなら一緒に食べてやってもいいぞ

 !』


 ツンデレっぽい言い訳に思わず笑ってしまったハヤトはリルを抱き上げた。


「ありがとう。よし行くか!」

『うむ』


 今度こそ部屋を出たハヤトとリルはアンネさんが待つ居間に移動した。

 

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