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契約

「あら、ハヤトさんおかりなさい。ロイドは……!」


 ベットで横になっているロイドをみてアンネさんの表情が一変した。アンネさんは縋るように聞いてきた。


「何が、あったのですか?」

「実は……」


 リルのことも含めてアンネさんに全部話した。アンネさんには嘘をつきたくなかったからだ。


「そんなことが……」

「……ハヤト、さん……」


 弱弱しい声でロイドは俺を呼んだ。皆でロイドに駆け寄った。


「……母さん?ここは、俺の部屋?」

「覚えてないの?」


 アンネさんが尋ねる。


「三人で氷柱猪を討伐して……それから……うっ」


 ロイドは記憶を思い出そうとしたが痛みだした。アンネさんは思い出すのをやめさせた。


「今はゆっくり寝なさい。明日話すわ」

「うん……」


 相当疲れたのだろロイドは目を瞑るとすぐに眠りに就いた。

 音を立てないようにそっと部屋を出て居間に移動した。


「ハヤトさん、ロイドは大丈夫なんでしょうか?」


 アンネさんに尋ねられる。


「わかりません……」


 俺の答えを聞いてアンネさんは不安な表情になる。


「でも、なにがあってもどうにかします」


 自信はある。光芒の杖と共鳴すれば上級以上の治癒魔法が使えるからだ。

 最後まで聞いたアンネさんはようやく安心した表情になった。


「わかりました。ハヤトさんを信じます」


 とりあえずロイドの容態は様子見と決まりミンシアさんは教会に帰った。二人で見送ったあと俺はリルの所に向かった。




「なんだ、これ……」


 急いでリルの所に向かったのだがそこには魔物の死骸の山が築かれていた。

 今までに遭遇した氷小鬼(アイスゴブリン)、氷柱猪、吹雪熊がほとんどだ。


『やっと来たか。遅いぞ!』


 死骸の山を眺めていると後ろから声を掛けられ、振り向くと大きな竜を咥えたリルがいた。


「それ……絶対零度竜(アブソリュードラゴン)だよね?」


 絶対零度竜アブソリュードラゴンは劫火竜と対を成す存在。全身からなにもかもを凍らす冷気を振りまき、全てを凍らす息吹を放つ危険度Sの魔物だ。


『ああ、そうだ。身体を動かしたくなってな。まぁ我の敵ではないがな!』

「すごいな……てかこの魔物の死骸の山どうすんだよ!他の人たちにみられたどうすんだよ!」


 山のように積み上げられた死骸をみたらパニックになってしまう。幸い村から離れているが救いだ。


『我に聞くな。お主で考えろ』


 リルは俺に丸投げしてきた。どうしろと。


「うーん。これ、貰ってもいいのか?」

『構わん。好きにしろ』


 貰っていいことになったので魔物の死骸を全て【無限収納】にしまった。


『ほう。あの山を消すとはお主のスキルか?』

「消してないよ。しまっただけ。ほらこの通りに、出し入れもできるよ」


 リルの前で出し入れをするところを見せる。


『便利なスキルだな』

「このスキルはクレアから貰ったんだ」

『そうか……』


 リルは苦笑した。

 しばらく沈黙が続いた。話を逸らすためにリルが目覚めてまで俺の所まで訪ねた目的を聞いた。


「なんでリルは俺に会いに来たんだ?」

『あの女神が選んだ者の顔をだな。見ておこうっと思っただけだ』

「え、それだけ?」

『それだけだ!』


 そんな理由で俺を探してわざわざ会いに来たのか。


「そっか。あ、そうだ!遅くなったけど背中乗せてくれてありがとな」


 俺はリルの頭を撫でながらお礼を言った。

 リルは嬉しそうな顔して尻尾を左右に振っている。まるで犬のようだと思った。

 しばらくリルと話していると空から雪が降り始めた。


「雪が降ってきたか。俺、そろそろ帰るよ」


 俺はリルに帰ること告げた。


『そうか……では、我も帰るとしよう』


 リルも帰るみたいだ。


「うん、会えてよかった。クレアに何か伝えとくか?」

『気遣いは無用だ』

「わかった。じゃあ帰るな」


 俺は村に向かて歩き始めた。


『待て』


 リルに呼ばれ振り返った。

 やっぱり伝えたいことがあるのかな?


「どうかした?」

『我の武器をここにおけ』


 俺は言われた通りにリルの武器――氷獄の手甲を指定した場所に置いた。


『よし、次は目を瞑れ』

「え」

『さっさと目を瞑れ!』

「わ、わかったよ。これでいいのか?」


 リルが俺の周囲をぐるっと回る音がした。


『よし、準備はできた』

「え、準備って?」


 俺の質問には一切答えずリルは進める。思わず目を開けた。


『我、氷獄の銀狼フィンブルリル。汝、ハヤトを主とし契約を結ばん』


 リルが言葉を紡ぐ。俺の周りはいつの間にか描かれた魔法陣がある。すると魔法陣が光りだし俺を包んだ。眩しすぎて目を閉じた

 やがて光が収まり目を開けると地面に置いたはずの武器とリルがいなくなっていた。


「え……リル、どこ?」

『我はここだ』


 声がする方をみると子狼がいる。俺の足をバシバシ前足で叩いている。ちょっと可愛いいと思ってしまった。そんな子狼を抱き上げた。


「リル?」


 この子狼がリルかどうか確かめために呼んだ。


『なんだ』


 間違えなくこの子狼はリルだった。


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