失われし伝説
こんにちは! ワセリン太郎です!
明日、参院選の投票に行こうと思っていたのですが、テレビをつけたら何故だか開票速報があってました! あっれぇ??
商店街のBBQ大会も終わり、深夜零時が近付いた頃。散らかした公園の片付けを終えた俺達は……大家さんの考えた“ロクでもない作戦”を決行する為、未だこの場へと留まっていた。てか何だよ、この『祝! 高崎興業、爆散記念! 神丘市商店街一同』とかいう物騒な手作り横断幕は……
とまあそれは置いといて。
今現在、街の連中はとっくの昔に解散し、河川敷に残る人影は俺達の一団のみ。流石にこれから起こるであろう“ファンタジー”を商店街の連中に見せる訳にはいかないからなぁ。当然、例の人払いの魔法も済んでいる。
「よーしテメーら、全員配置についたな?」
そう言った大家さんに、皆がニヤニヤしながら頷く。
「ちょっと大家さん、マジでやるんすか? せめて酒抜いてから考え直しましょうよ。まだ少しだけ時間の猶予はあるワケだし」
ロキも同意する。
「太郎の言うとおりよ。アンタ達って前々からロクでもないとは思ってたけど、ほんっっっと呆れるわ。そもそもこれは神属と精霊間の神聖な契約なのよ? それをこんなイカレた方法で反故にしようとか……」
そう抗議する俺達を、『へっ』と鼻で笑う大家。
「バカか? こういうのはな、“ノリと勢い”が大事なんだよ。そんなんがわかんねぇからいつまで経っても“粗チン”と“貧乳”コンビなんだよ、オメー達は」
「なんですってぇ──!? 誰が貧乳じゃこらあぁぁぁぁ!!」
「ああもうロキ落ち着け! 大家さんも! いつも“ノリと勢い”だけじゃないっすか!」
「ああ? この神丘イチの知性派と呼ばれる俺様の作戦だぞ? 上手く行くに決まってんじゃねーかチンカスが!」
「知性が感じられた試しがないんですが……」
「ああ? 何か言ったか──!? 土手に埋めんぞオラアッ!!」
この人酔ってるし、マジでやられかねない。野犬のおやつになるのは御免だ……
「いえ、何でもないっス!」
大家さんに飛びかかろうとするロキを羽交い締めにしつつ、考える。
そのシグルドさんの契約相手、えっと湖の乙女……だっけ? 先ずはその人物を水気の多い場所、これは井戸や沼地なんかでも召喚可能らしいんだけど、とにかく“そういう場所”において呪文で呼び掛け、それから折れたエクスカリバーを投げ込むと……彼女は現れる筈なんだとか。ちなみに河川なんかの流れがある場所はダメらしい、っと。
それから“交渉”を開始するという話になってるんだけど、その交渉ってのが……
「あの、大家さん」
「あんだよ、まだ何かあんのか? インキン」
「いやもうケンベンから原型留めてねぇっすから。それでもし、その湖の乙女が現れなかったらどうするんすか?」
あからさまに『オメーなんにもわかってねぇな』といった表情の筋肉ダルマ。
「あ? んなモン決まってんだろ。出なけりゃ出ねえでそのまま“ブチ込んどけばいい”んだよ。んで知らん振りしてりゃいい。相手さんがもし『剣が折れた筈だ』とか言ってきたらよ、こっちは『そんなら折れた証拠を持って来いや』ってハナシになるワケよ」
借り物になんつー理屈だ。
「いやでも、その証拠はそこに“沈んでいる”ワケでしょ?」
「バカだなケンベン。そんじゃオメー、一つ聞くけどよ。その沈んだブツ、“ホントに拾える”のか?」
言われて、彼の足元へと視線を泳がせる。
「うっ……」
いや、無理だ……いくら何でもこれは無理だ。
「へっ。そうなるだろ?」
マジで何て事を考えやがる、確かにそれは……いや、拾える気が微塵もしない。そもそも絶対に拾いたくない。
そう考えつつ、ゲラゲラと焼酎瓶を逆さに咥える大男を見上げた。
力なく首を横に振るロキ。
「ほんっっと悪質ね。普段はバカばっかやってるのに、こういう悪知恵だけは呆れる程に良く回るなんて」
当然、ヒルドも呆れ顔だ。
「まったく大家殿、毎度毎度、貴方という人間は……」
「……ん。さすが大家。超あたまいい」
「おう、だろ?」
ニヤつくオッサンをパチパチと賞賛するロッタちゃん。その蒼い瞳の奥に……邪悪な炎の揺らめきを見た気がした。
こちらも御機嫌で笑う、千姫様。
「貴方達、本当に“頭が良くて面白い方達”ばかりですのね。ああ楽しい、これは遠路はるばる返済不能の貧乏神を追い掛けて来た甲斐があったというものです」
「な、なにおう!? 誰が貧乏神よ!!」
「では五十万円、明日中に“お返し”願えて?」
「……」
「おい賢人、準備はいいか? そろそろ詠唱を開始するぞ!」
借金返済をチラつかされ、急にトーンダウンするロキの背後で……シグルドさんが何やらブツブツと呪文を唱え始めた。
「大家、こっちも準備おっけー」
公衆トイレの屋根の上からミストの声が聞こえて来る。彼女は鶴千代と二人で高所によじ登り、先程アキヒロさんから提供された“店の商品”を元気よく頭上に掲げて見せた。
おいおい、その神聖な精霊とやら相手にマジでやんのか……
「おう! ミスト、鶴千代、任せたからな! あとシグルド、まだ剣は投げんなよ?」
「ああ、わかっている」
皆を見回し、ニヤリと笑う大家さん。
「うし、そんじゃあ一丁……おっ始めっとすっか! いくぜ野郎共──!!」
「「おー!」」
彼は満足気に頷くと、悠然と建物の影へと消えていった。
折れた剣を持ち、大家さんから指定された“湖”の前へ歩み寄るシグルドさん。
「よし、召喚の詠唱は完了した。あとは神器を放り込むだけだが……なあ、これ本当に大丈夫なのか?」
やはり、少し気になる様子。
建物の影から、大家の笑い声が響いた。
「なあに、やってから考えればいいじゃねーか!」
「ふむ、それもそうだな!」
シグルドさんも随分と酒が回ってんな……
「アタシ、どうなっても知らないわよ?」
「ふん、出たとこ勝負だ。そんな事、戦場ではよくあるハナシさ……では行くぞ!」
「ぶぷーっ! くすくす!!」
ロッタちゃん……これから起こる事を想像し、楽しくて仕方が無いのだろう。ホント、良い性格してるぜ。
シグルドさんが、構えた。
「──湖の乙女ヴィヴィアンよ。契約者シグルドの名の下、召喚に応じ、その姿を現せ──!!」
……来るのか?
折れた剣を頭上に掲げ、“その湖”へ二つを投げ入れるシグルドさん。
すると剣は折り重なり、ボウッと青白い光に包まれつつ……まるで重力の存在を無視するかの要に、ゆっくりと“水面”へと吸い寄せられた。
刹那──
“湖面”が赤く輝き、その魔法陣の中から……青白い女性の手が現れ、折れた剣の柄の部分を静かに掴んだのだった。
「来たな……」
赤い円陣の中から音も無く、長い黒髪の女性が姿を現す。
その、神話を思わせる青白く輝く羽衣。そして透明感のある白い肌と、見透かす様な鋭い眼光。そして確かに目の前に存在するのに……どこかこう、透ける様に曖昧な存在感。
「ホントに現れた……」
実際こうして目の当たりにすると、確かに彼女がこの世の者ではないのだと……その手の理屈に対して疎い俺でも、直感的に理解することができた。
そう、彼女は“精霊”。
レアやヒルド達の様な天界人、また姫様やフェレスさん達、魔族とも出自を異にする、純然たる自然の化身と呼ぶのが相応しい、地球が生んだ正真正銘の高位霊体……“精霊”である。
そして彼女には……俺達人間は当然、レア達天界人ですら“触れること”は叶わない。
純然たる概念的存在。兎に角、そういう事らしい。
先程、ヒルドから予備知識を与えられていたので、色々と想像はしていたが……
実際にこうして見ると、彼女たち天界の人々とは違い、何かこう霊的で血肉を感じないというか何というか、正直なところ……少しだけ恐ろしい。
だがそれは幽霊なんかに感じる恐怖や不気味な感覚とは違い、感情としては“畏れ”。きっとそう、地球の雄大な自然に対する畏れと表現する方が適切なのだろう。
本来の“神”である神様達は、はっきり言って人間臭くて馴染みやすい。感情も豊かだし、様々な欲求だって俺達人間に負けず劣らずだ。畏敬の念こそ当然あるが、不思議と何かこう……憎めない近しい存在でもある。
しかし目の前に現れた“彼女”は……何というか、“個”を殆ど感じさせない不思議な雰囲気と言えば良いのか……
ヴィヴィアン。そう呼ばれた湖の乙女は、ゆっくりと口を開いた。
「シグルドか……我に何用か?」
人間味を感じない、“圧”に気圧される。やはり怖い。それはまるで凍てつく大地に吹きすさぶ、氷の吐息を浴びせられたかの如く。
底知れぬ深淵を感じさせる黒い瞳。見ているだけで魂を吸い取られそうだ。
しかし、同時に全てを包み込む包容力も確かに感じる。命を育み、そして躊躇なく奪う。正に大自然の化身。もしかすると、俺たち人類の祖先が大自然を“神”と認識して畏れ、敬って来たのはこういう感覚であったのかも知れない。きっと昔は人と自然、二つの存在がもっともっと“今より近かった”のだろう。
しかし問題は今現在、この場に“神をも怖れぬ不届き者”が大集結しており……
シグルドさんが彼女の問いに応じた。
「久しいな、元気だったか?……いや、大地の精である貴様にそう聞くのも妙な話か。実はその、貴様から貸与されていたCaledfwlchが折れてしまってだな……」
一瞬、ヴィヴィアンの口角がニヤリと上がった気がした。
「ほう、それは……困った事になったな」
「ああ、それで『破損した場合は三日以内に報告する』という約束通り……」
シグルドさんの言葉を遮るヴィヴィアン。
「なるほど殊勝な事だ。では『神器を破損した場合、返却時に“何でも一つ、我が望みを聞き入れる”』この交わした“契約の履行”についても異論はあるまいな……?」
「ああ、その事なんだが……」
予定通り、曖昧に濁すシグルドさんに対し……その“精霊”は、凍てつく様な笑みを浴びせた。
「汝、シグルドよ。契約に基づき命ずる。貴公の妹、ブリュンヒルデの“首”をここへ」
ちょ!?
「おいアンタ! 何て事を言いやがる──!!」
流石の俺も、大声を上げた。
こいつが“冷徹な性悪”の正体か!
「ちょっとアンタ! やって良い事と悪い事があるでしょ──!?」
ロキもそう言って飛び出しそうになるが……
「……?」
意志すら感じさせない精霊の顔に、一瞬、僅かな変化が見て取れた。
『あれっ??』といった様子のヴィヴィアン。
「いや、だからその事なんだが……」
シグルドさんは、全く動じずに頭を掻く。それを見た千姫様が……その精霊の背後で、とてつもなく悪意に満ちた笑みを見せた。うわぁ、やっぱあの人怖ぇ!
そう。本来、神属や精霊、また魔属同士の契約は“絶対”。よって予め交わされた約束は、当人同士の意思を超越した強制力が働き、必ず果たされる。だがしかし千姫様によると、そこには一つ、“ある抜け道”が存在するのだとか。
それが何かというと……案外簡単なお話。
実は契約を交わした双方が“その状況に納得している”という事が前提であるらしいのだ。
先日のロキと千姫様の契約の件は、借金を踏み倒そうとしたロキが『ヤバイ、借金取りに見つかっちゃった!』と“状況に納得した”為に強制力が発生したのだとか。今思うと、あれはホント恐ろしかったが……なんと“俺に査定額がつかない”という、ある種泣きたくなる様な状況をもって“再契約”となったワケで。ああ、死にてぇ。
要は今現在、大家さんの“とある無茶苦茶な主張”により、シグルドさんが“契約に納得していない”状況なのである。
徐々に不快感を露わにする湖の乙女。
「何故、強制されぬ……? シグルドよ、我と貴公の“契約”は正当なものであった筈……そして、確かに剣は折れた。その事実は明白であろう?」
「ああ、それなんだが……」
その時。公衆トイレの背後から大家の野太い声が辺りに響く──!!
「おう今だテメーら! ヤっちまえ──!!」
「「おかのした!!・承知した──!!」」
突然、便所の屋根から精霊目掛けて飛びかかる、鶴千代とミスト。
ヴィヴィアンは二人を一瞥こそしたが、特に気に留めた様子もなく……
「喰らえぃ、この雪女!」
いや鶴千代、それ雪女じゃねぇ……
神通力を帯びた鶴千代の髪で編まれた縄が、精霊の上半身を固く縛りあげる!!
「──なっ!?」
驚愕する大地の精霊。
きっと“精霊故に誰にも触れられる事はない”と高を括っていたのだろう。だが、そこに大きな落とし穴が存在した。
ヴィヴィアンは精霊であり大地の化身。そしてその超常的で概念的な存在は……俺達人間は当然、レア達の様な天界人にも触れる事は叶わぬ、ある意味で“ヴィジョン”の様なものだとのこと。当たり前だが、実体の無いものは捕まえる事は出来ない。精霊側に、こちらへ触れる意思があれば話は別らしいが、勿論この状況でそれはないだろう。
しかし、世の中そう都合良いハナシばかりでもなく……実は、その大地の化身たる精霊に触れる事が出来る、ある種の“天敵”が存在する。
それは自然現象と我々人間の橋渡し役とも呼べる……妖の者、そう。“妖怪”である。
しかしその妖怪にも、存在毎に得手不得手があり、例えば鶴千代たち天狗の血族は、死後の世界……いわゆる“異界”への干渉は出来ない。それが可能な“鬼”を始めとする一部の妖怪も存在するらしいのだが。
では天狗はどういうものかと言うと、見てもわかる様に、ある種、姿が最も人間に近く、またその成り立ち上、大自然にも近しい存在。つまり、“人と自然を繋ぐ者”。
詳しい理屈は俺にはわからないが……アレか? 修験道の山岳修行がどうとか、元は山伏がどうとか。兎に角、この“人間”と“自然”の橋渡し役である“天狗”という存在がこの場に居た事が、目の前で仰天している湖の乙女、ヴィヴィアンにとっての仇となった。
要は簡単なハナシ……鶴千代の毛髪に神通力を流して変化させたワイヤー。これで縛り上げられた精霊は文字通り“橋渡し”されてしまい……触れられる様になるのだとか。いやまあ、その辺に天狗がいるとか思わんよな、普通は。
ちなみに大家さん。当然、彼がこういう理屈を知る筈もなく、当初は駐車違反切符よろしくゴネまくり……逆に精霊相手に損害賠償を請求する予定だったらしい。つまり、無策。冗談じゃねえぞ。
「んじゃさ。はい、これ!」
そう言ったミストが……“変わったプレイに使用されると思しき手錠”を使い、驚いて硬直するヴィヴィアンの両腕を縛り上げた。それから……
「隙あり! 喰らえ、しゃがみ強キック!!」
スパアンッッ──!!
「なっ──!?」
放心した彼女へミストの強烈な足払いが決まり、先程まで荘厳な雰囲気をまき散らしていた大精霊が宙に浮く。
その時。
突然、便所の影から弾丸の様に飛び出す巨体──!?
「ッシャオラアッ──!!」
「うぐっ!?」
体勢を崩したヴィヴィアンの背後から、彼女の胴体へタックルする大家さん! 大家は、そのまま抱きかかえた彼女の銅を回して天地逆さまにすると……
「おいオッサン、アンタ何してんの──!?」
彼女をくの字に丸め込む! 捲れ上がるヴィヴィアンの白いケツ!!
「いくぞオラァッツ──!!」
こ、この体勢はパワー・ボムか!?
「や、やめよ人間!!」
いや、違う! まさかこれは――!!
「やめろって言われてやめる馬鹿がいるかよ!!」」
彼女を抱えたまま、後方へ勢い良く倒れ込む筋肉ダルマ。
ま、まさかこれは!? 握りしめた拳に自然と力が入る……
「な、何をする! やめよおぉぉぉぉぉ!?」
「おっしゃ大家、いっけえぇぇぇぇ!!」
「っッしゃあ!!」
そして彼は、ヴィヴィアンのふとももの間へ、丸太の様なぶっとい両脚を無理矢理ねじ込むと……
「セイッ!!」
──ガバアッッツ──!!!
お、オープン・ザ・ファンタスティック・ワールド――!?
「──超・必・殺!! “恥ずかし固め”だオラアッッツ──!!!」
うわあああああ!? マ、マジか!? 決まったあぁぁぁ――!?
「ぎゃあああああ!?」
そう、このオヤジ。神聖なる大精霊を、公共の場で“尻出し逆さ大開脚”させてしまったのである!! 何これ台本にねぇぞ!?
「ウイィィィィ──ッツ!!」
大家の、ハンセンの様な雄叫びが辺りに木霊する。
スマホを取り出しながら、はしゃぐミスト。
「ス、スゲエエエエエ! 決まったぁぁぁああっ!! 屈辱の恥ずかし固め!!!」
状況を分かってかわからずか、鶴千代が屈託のない笑顔を見せた。
「おお、雪女のやつ、何ぞ物凄い格好じゃの!」
そう、もう一度、いや何度でも言おう。あの伝説の大技、“恥ずかし固め”がガッツリと決まってしまったのである。
「ぶぷーっ!! ミスト、しゃしん撮って! はやく! ついったーにアップして!!」
「おっしゃ、まかせろロッタ! これ“いいね”がいっぱい付いて、くっそバズるかも!」
──カシャカシャカシャカシャカシャカシャ──!!
スマホの連射機能で写真を撮りまくるアホの子二号。
なんてこった。悪魔か、こいつらは。
「おいやめろ! もうそこまでにしとけ!」
「……ん! 太郎うっさい。ミスト、いんすたにもアップ!」
「おっけー! テックトックにも……投稿完了っと! ぶはは、ひっでー格好! マジくそわろ!!」
ロッタちゃんが、恥ずかし固めの隣に滑り込む。
「ぶぷーっ!? しんだ! ヴィヴィアン、社会的にしんだ!! はい、ワン、ツー、スリー、フォー……」
バシバシとテンカウント取りながら、何言うのこの子──!?
「放せえぇぇぇぇぇ!」
暴れもがき、必死の形相で叫ぶヴィヴィアン。しかし、誰もカットには入らず。いやそら叫ぶわ、パンツと尻が丸見えだし。しかし実体化してしまえば華奢な彼女、筋肉ダルマのロックを容易に外せはしない。いや多分、俺でも無理。
「オラッ! オラッ!!!」
力任せに、彼女の股を閉じたり開いたりさせる大家さん。
「ぎゃはははははhハ!!」
酔ったシグルドさんが笑い転げ、逆さに握っていたビール瓶を土手に放り投げた。やべえぞ、何か俺が想像してたよりだいぶ酷い展開になってきてる……
「ぶ、無様だわ! いいわ貴方たち、最高よ! もっと! もっとやっておしまいなさい!!」
頬を紅潮させて興奮なさる千姫様。そこに大股を開いたままの大家の声が轟いた。
「っしゃ追い打ちだミスト! やっちまえやオラアッ!!」
「おっけー! 大家もそのまま屁ぇこけよな!」
「ああ? “実”が出ても知らねぇぞ――!!」
――ブブボフッ!
「「ぎゃははははは!!」」
こいつらは鬼畜か。大家から指示されたミスト、先程アキヒロさんから“提供”を受けた段ボールから何かをごそごそと取り出すと……
「おっ、これなんかイイじゃん! “M字開脚ベルト”! 両脚と首に掛けて縛り上げるんだって! 流石アキヒロ、ないすちょいす! クッソうけるんですけど! てかSMグッズって書いてあるけどSMってナニよ? ま、いっか。あ! つるっち、このギャグボールっての咥えさせて!」
「承知した! これは……こうじゃな?? あとこの“鼻ふっく”という道具は……」
「んんーッ!?」
何事かを叫ぶ精霊の口を、アダルトグッズで塞いでしまう天狗の娘。
「ぶぷーっ! よ、涎たらしてる!! ブタ! この精霊、ブタみたい! このブタ! めすブタ!!!」
「こらロッタ!!」
怒るヒルドの声も耳に届かず、興奮が最高潮の小さな邪神。
「ぶぷーっ! ミスト、このままパンツぬがそ!!」
「なにそれ! クッソうけるんですけど!」
「おい! お前らもうやめろ──!!」
「――ロッタ!!」
「おっけー。集合写真撮るからみんな入れよなっ!」
「ホラ写真撮ってくれるってよ!! オメー、感謝の心でカッパリ股開いて笑顔でピースしろや!!」
「ん゛ん゛んーっ$%&')('&%$$──!?」
「ちょ! アンタ達バカじゃないの!? いい加減に――!!」
「ミストもやめなさい――」
訳もわからず、“にぱっ”と笑ってピースする鶴千代と、画角にカットインするロッタちゃん。シグルドさんと千姫様もノリノリだ。
「ヴィ、ヴィヴィアンお前、今、最高に面白い格好してるぞ!」
「ほらミストさん、このスカした精霊を最高に可愛く撮っておあげなさいな。あらあら彼女、目が血走っているわ……余程嬉しいのかしら?」
んなワケあるか……
「んじゃいくぜー? はい、チーズ!」
「「うえ〜い!」」
――カシャッ!
「んんん゛ん゛んnッ"#$%$#$%&')('&%$$──!?」
人権侵害、ここに極まれり。
こうして。
こうして捕縛不能な筈の大精霊が……いとも容易く悪党共の手中に落ちてしまったのであった。




