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つわものたち

 こんにちは! ワセリン太郎です! 何故だか急に納豆が食べたくなりました! 納豆!! 今回も内角高めスレスレの危険球をビシバシ投げていきます!(白目


 毎度の如く、健全なお子様はそっ閉じです!!

「さあ、いつでも掛かって来るがよい!」


 バットを担いでクイクイと手招きするレアに応じ、身体へ巻き付けていた分銅付きの鎖をブンブンと激しく振り回す習オバサン。その制空圏は徐々に広がり、攻守一体の非常に危険な動きを見せ始める。


 フォン、フォン、フォン、フォン──


 次第に風切り音が力を増して行く。


 それを見てふうっと息を吐き、聖剣様(キンゾクバット)をスッと中段へ構えるレア。


 刹那──


 突然、鎖の音が変化し、レアの身体へ向けて黒き弾丸が飛来する!!


 ブォンッ!!


 だがそれを、半歩横に開いて平然と躱すレア。それから彼女は……


 リーチが伸びきった一瞬の隙を逃さず、バットを持たない左手で鎖をガッチリと掴み、捕えて見せたのだ。


「──!?」


 驚き、眠そうな目を大きく見開く習オバサン。


 チェーンが張り詰め、場の緊張を増してゆく。


「もう終わりか?」


 そう、もしこれが近所の住民であれば、間違いなく最初の一撃で地に伏していただろう。彼女はようやくここで……レアが全力で戦うに足る相手であると確信する。


 間髪を入れず、独楽の様に全身で回転を加えながら、力強く鎖を引き戻す! だがレアが一瞬先に動き、鎖の中央辺りをを掴んだまま習オバサンへと突撃した。


「甘いっ!」


 レアは叫ぶと同時に鎖をブン回して距離を詰め、その物騒な得物を“持ち主”へと返却(おかえし)する──!!


 シュッ!!


 オバサンの眼前へと迫る分銅。だが彼女は、手に持った刈込鋏(かりこみばさみ)を躊躇無く手放すと、上体を大きく逸らしながら仰け反り、そのままバク転を決めて攻撃を回避したのだった。


──タン、タンッ!!


 咄嗟の勢いを殺す為にバク宙し、雑技団の様な身のこなしで、ブロック塀の上へと華麗に跳躍。そのまま腕を組み、高い位置からグッとレアを見下ろす専業主婦。


 彼女は、足元のブロックに引っ掛かった黒鎖の中央へとつま先を差し込み、それを『ハイッ──!!』という野太い掛け声で、垂直に蹴り上げた。


 主の手元へ帰り、再び勢いを取り戻す漆黒の分銅。


 それはまるで水を得た(うお)。一連の動きを見て、満足気に頷くレア。


「ふむ、良い判断だ。やはり貴様、かなりの手練れと見受ける。相手に取って不足なし! さあ、続きをやるとしようか!!」


「ファァァッ! ウェイッッ!!」


──ブォンッ! ガリガリガリッ! パキインッ!!


 気合いの掛け声と共に大きく半径を増し、レアへと迫る長大な鎖は……先程まで戦乙女(ヴァルキリー)が陣取っていた場所のアスファルトを大きく抉り、戻る反動で近くの電柱へと激しく激突したのだった。


 柱の表層が割れ落ち、内部の鉄筋が一部露出する。レアは右手でバットを構え、左手でテロドスの首根っこを掴み、余裕を見せつつ笑う。


「今のも、なかなか良い攻撃だったぞ」


「イッタイイチロ……」


 再び渾身の攻撃を躱された事に、苛立ちを隠さぬ習オバサン。


 その時だった。自宅前の喧騒に誘われ、習家の玄関扉がガラガラと音を立てたのは。


 中から現れたのは、四角いメガネをかけた白髪交じりの初老の男性。彼こそは、半年後に定年退職を控えた一家の大黒柱、“(しゅう) 在寅(ありとら)”氏、その人である。


「もへよ……?」


 目の前に立つ電柱は表層が欠け、また、割れて盛り上がるを見せるアスファルト。突如として自宅前で起きた惨状に理解が及ばず、眼鏡をずり上げて目を(またた)かせる在寅(ありとら)氏。だが、彼の登場が更に事態を悪化させる引き金となり……


 再び、得物を手にした二人が激突する──!!


 薄らと虹色の輝きを帯びるレアのバット。


「ゆくぞオバサン、受けてみよ! 必殺! えくす!! かりばーーーーーっ!!!」


 両手による刈込鋏(かりこみばさみ)の攻撃をものともせず、挟み込みに対して真っ正面から金属バットを叩き込むレア! テロドスは……涎を垂らしながらレアの脚にしがみつき、必死に腰をカクカクと振り続ける!!


 その必殺の一撃は、習オバサンの持つ大鋏を真っ向から粉砕し、トドメの一撃たらんと彼女へ迫る──!!


 だが。


 勝ちを確信したレアを、予想外の事態が襲ったのだった。


 ボンッ!!


 突如、爆発する刈込鋏(かりこみばさみ)!!


「なにっ!?」


 危険を察知したレアは、産業廃棄物(キンゾクバット)を引いてバトンの様に素早く回し、飛び散る破片を受け流す。


 バキバキッ――!!


 同時に、先程放った金属バット(エクスカリバー)の魔力的衝撃が地を走り、習家と隣のお宅の境界でもあるブロック塀を破壊、勢いよく倒壊させる。レアがバットを完全に振り抜けなかった為、その威力があらぬ方角へと逃げてしまったのだ。


 通常では考えられない、刈込鋏(かりこみばさみ)の爆発。


 だがしかし……そう、かの国では何でも、ありとあらゆるものが爆発する。


 机や椅子にスイカにトマト。肥溜め、タイヤ、家電にマンション。突然、肛門や親戚のおじさんが爆発するのだって日常茶飯事だ。なので、例えそれが豆板醤だろうと剪定用の大きな鋏であろうと、そこに一切の例外はあり得ない。唯一、爆発しないのは爆弾だけ……つまり、皆、等しく“爆発”する可能性を秘めていると言えるのだ。


 ニチャァ……倒壊したブロック塀を一瞥し、銀歯をむき出し不気味に笑う習オバサン。


 ジャラリ。レアの爪先へと何かが当たる。


 本体を失い、路上に転がる鎖分銅。少し視線を落としたレアは……それを足に絡めて遠くへ蹴飛ばし、己自身もバットを背中へ仕舞い込んだ。


 自ら潔く武器の優位性を捨てた彼女(レア)を認め、拍手と共に敬意の表情を浮かべる習オバサン。


 静寂が支配し……テロドスが『ハッ、ハッ、ハッ』と腰を振る息づかいのみが辺りへ鳴り響く。


 そう、ここから先は、常人の踏み込めぬ戦士の領域。彼女達は嬉しそうに笑うと……今度こそお互いの拳で決着をつける為に全力で激突を開始する──!!


 もはや人間同士のものとは思えない、強烈な打撃の応酬。蹴りの当たった塀が歪み、裂けた部分から細い鉄骨が露出する。


 それを黙って見つめていた在寅(ありとら)氏は……心底恐怖し、膝をガタガタと震わせた。


(こ、このままでは本当に警察が来てしまう!)


 ちなみにこのオジサン、元々完璧な“事なかれ主義者”であり、妻によって日常的に行われる近隣への侵略行為をも……己が家庭内で悲惨な境遇に置かれぬ様、我が身可愛さに見て見ぬ振りをして生きてきた。それは何故か? 答えは簡単。もし妻に逆らうと、即座に“苛烈かつ無慈悲な家庭内粛正”が執行されてしまうからだ。


 なので普段ならば、近隣住民へ迷惑を掛ける妻を見ても心の中で謝罪しつつ……そっと玄関を閉めるのが彼の日常。だが今目の前で起きているのは、もはや“ご近所トラブル”の範疇を完全に逸脱した、恐るべき決闘そのものである。


(い、いかん! なんて事だ! これは、これはもう、完全に……)


 涙に肩を震わせギュッと目を瞑り、暗くなる視界に嘆きと嗚咽を(こら)えながら……腹の底から絞り出す様に、独り呟く在寅(ありとら)氏。


「キ◯ガイだ……キ◯ガイが二人も居る……」


 己の無力さに打ちひしがれ、握った拳がガクガクと震える。


(誰も……止めてはくれない)


 そう。この場を収めてくれる他人など何処にもおらず、唯一の肉親である一人息子も……“北のマス・ゲーム”とかいう名のオンラインゲームへ病的にのめり込み、部屋に篭って三年目だ。その生活は昼夜逆転しており、毎晩の様に拍手の音が明け方まで鳴り響いている。助けに来る訳がない。テポドン。


(わ、私が何とかしないと……)


 普段、妻の行う迷惑行為は、言うなれば重篤なご近所トラブル。


 通報されて警官が来る事もあるにはあるが、警察側としても面倒なのか、『お互い、よく話し合って和解してください』とだけ言って、結局は民事不介入のまま……深々と頭を下げる彼を背に、舌打ちしながら署へと戻って行くのが毎度のパターンだ。当然ご近所のヒソヒソ声と、胃がキリキリするのが絶える日は無いが、言ってしまえばそれまでの事。


 だが今日の妻は……いつもとまるで違う。目の前の不審なツナギ女と相対し、嬉々として凶器と狂気を振りかざしているのだ。脳裏をよぎる、刑事事件の四文字。また逮捕され、メディアに対して『抗議しまぁああああす!! 引越し! 引越し! さっさと引越し! しばくぞ!!!』と、威嚇の表情で新聞の一面を飾る、妻の姿。そういった事を想像するのは、あまり難しくない。


(何がここまで狂わせたのか……)


 だが、珍しく彼は奮い立った。


(そう、このまま何事も起きずに、何事も起こさずに定年まで勤め上げさえすれば……いずれ静かに訪れるであろう、平和でささやかな年金暮らしが私を待っているのだ! あと半年、守らなくては! 何としてもそれだけは守らなくては!!)


 彼は……人生で初めて、腹を括った。


「ほぉうあぁぁあぁぁああ――! あにょはセヨォォオオオオッ!!!」


 両胸を平手で叩きながら、己を鼓舞して奇声を上げた。心に抱くは『非・暴力』を説いた、マハトマ・ガンディーのお姿。


(我を、我を守り給えハセヨ――)


 それから……決死の覚悟でバンザイしつつ、二頭の猛獣の間へ割って入る――!!


 今、まさに雌雄を決しようと襲いかかる竜と虎。


「ひ、ヒョんデ――!?」


――がちいんっ――


 無惨、ああ無惨。まるでプレス機にでも挟まれたかの様に潰される、在寅(ありとら)氏。


 だが、不思議と恐怖は感じない。全てが色褪せ一切の音が失せ、時の流れまでが淀んだその世界で……彼は独り、静かに想った。


(私は。ただ、ひっそりと……ひっそりと生きていたいだけなんだ。そう、狂った恐ろしい妻や、ご近所の冷たい視線の恐怖に晒されて怯えず、ただひっそりと……生、き、て……)


「ゔゔぅぉおぁぁぁぁぁ……」


――グシャリ。


「ライんっッッッ!?」


 前のめりに打ち抜かれたレアのパンチが、彼のメガネのフレームをゆっくりと歪め、そのひび割れたレンズが拳圧に耐えきれず……本来在るべき場所から、そっと静かに旅へ出る。


 ズボンッ――!!


 そしてほぼ同時、習オバサンが全力で放つ、ブルース・リーばり(・・)のサイドキックが、彼の臀部へと炸裂し……その骨盤を、グニャリ。明後日の方向へと(いざな)った。


「あ、アいごぉぉぉぉぉ――!」


(ああ、神よ……救い給え。私に救いを与え給……)


 遠のく意識の中。天空に神の幻想を見た在寅(ありとら)氏。


 そうしてゆっくりと崩れ落ちる彼は、天に祝福された荘厳なオルガンの音色の中、舞い散る天使達の羽根へと手を伸ばし……救いを求める祈りを……


 ガクン!!


「さあ来い、習オバサン!!」


(──!?)


 突然、倒れる在寅(ありとら)氏の襟首をガシリと掴み、“肉の盾”とするレア!


「ファァァッ! ウェェェイッッ──!!」


 習オバサンによる、鋭い気合い。


──ドン!! ドン!! ズドン!!


 力強く大きな、殺意の震脚。


「――恒・大・集・団――!!」


 発勁と共に在寅(ありとら)氏へと無慈悲に叩き込まれる、習オバサンの放つ強烈な猛虎硬爬山(もうここうはざん)。それは防御を知らぬオッサンの全身へ、小型の爆弾でも爆ぜる様に確実に着弾してゆく。


 全弾、命中。


「なるほど良い打撃だ! では次は、私の番とさせて貰おう!!」


 そう言ってオバサンへ、在寅(ありとら)氏をブン投げるレア。口から魂の抜け掛けた亭主をガッチリ掴んで盾とし、腰を落として衝撃に備える習オバサン!!


 レアは、リラックスしつつ、拳を彼に押しつけ……まるで放り投げる様に真っ直ぐ、素早い伝達で全体重を打ち抜いてゆく!!


「むんッ──!!」


──ズドアンッ!!


 重い音と共に炸裂する、強烈なワンインチパンチ。


「じぃえいんッツ――!?」


 ぐにゃり。浸透する波状衝撃に、在寅(ありとら)氏の全身が激しく波打った。


「イッタイイチロ……」


 レアの放つ強烈な衝撃に、オバサンの表情が僅かに歪んだ。発された勁が旦那の身体を貫通し、届いたのだ。


 地に膝をついた彼女は再び立ち上がり……用済みとなった“肉の盾”を、路上へゴロリと転がす。


「あ、あいごぉぉぉぉぉぉぉ」


 決着の時は……近い。


 レアはポケットから残りの竹輪を取り出して袋を破り、『邪魔だテロドス、あっちへ行ってろ!』と遠くへ放り投げた。


 宙を舞う、二本の“おいしい竹輪”。


「コ、コヴィッド──!!」


 それまで彼女の脚にしがみつき、カクカクと腰を振っていたテロドスだが、それを見た途端に竹輪を追いかけ……路上でソレを、必死に貪り食い始める。


「じゅる、べろべろう゛ぇろ! ベロベロベロベロ……」


 相も変わらず食い方が汚い。そうして習オバサンとレアが、再びジリリと距離を詰めようとしていたその時。


 二人の背後から、思わぬ“声”が掛かったのだ。

※【ビニール傘と金属バット】は非常に低俗でお下劣な悪質コメディであり、筆者も読者も脳内がお花畑の、どうしようもなく頭の悪いファンタジー作品です。


 なお作中に登場するお馬鹿さん達は、実在の人物、また実在の国家◯◯、組織等には一切関係ございません。作品はどなたもご自由にお読み頂いて結構ですが、読んだ後は現実とフィクションの区別をキチンとつけて宿題等を早目に終わらせ、公共の場で奇声を上げたりされませぬ様、重々ご注意ください。


 またこの作品には年齢制限がございます。本来、大きなお友達向けの作品ですので“マ◯・ゲーム”や“チ◯ポ”等、まだ学校で習っていない難しい言葉が沢山出てきます。なので小学生以下のお友達は、必ずお母さんと一緒に読んで、難しい言葉を教えて貰いながら楽しんで下さいね!

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