竜虎相搏つ
こんにちは! ワセリン太郎です! ようやく少し涼しくなってきましたね! 皆様、如何お過ごしでしょうか?
今現在、別に連載しております短編、【魔法少女まこと】〜クソ森少年探偵団〜 N2423GE の方も、徐々に投稿が進み……ようやく半分、完結までの折り返し地点へもうすぐ到達、という感じになっております。
もしお時間がありましたら、お暇つぶしにでも御一読頂けると……非常に“やる気”が出る次第にございます!
コンビニで買った竹輪をポケットから取り出し、凧糸を結びつけた竿の強度をしっかりと確かめるレア。
「うむ、大丈夫だな。それでは、これをこうして……」
彼女はそうブツブツと呟きながら、手にした竹輪の穴へ……スルリと凧糸を通して輪を作り、余った部分でキュッキュと真結びする。
釣具、一揃えの完成だ。
ぶらり。竹竿の先に、丸々一本の美味しそうな竹輪が揺れる。
レアは完成したそれを手に取り、満足気に頷きながら……余ったもう一本の竹輪を口に咥え、モゴモゴと美味そうに咀嚼し始めたのだった。
「びょじ、こでで(よし、これで)……もごもごもごもご。これで“釣り竿”の準備は万端だ! 後はこの竹輪で保存食十九号のヤツを釣り上げれば私の仕事は完了だ……もごもごもごもご。ごきゅん。はっはっはっ、これは今晩の夕飯が非常に楽しみだな!」
彼女は大きな独り言を発すると、再び住宅街へと向かって歩みを進める。
それから十分程歩き……
「うむ、ようやく習オバサンの自宅が見えてきたぞ。もしオバサンが不在であるなら面倒も起きなくて良いのだが。さて、どうなる事やら。それでは“狩り”を始めるとするか! あれ、釣りだったか? まあどちらでもいいや」
背負っていたウー〇ーイーツのリュックを地面へ降ろし、『習』と書かれた表札を一瞥したレアは、『ふむ。習オバサン、名前は“近子”というのか』と呟くと……
習家の裏口にあるブロック塀へ、ヒョイと身軽によじ登った。ふと、開いた窓に気付く彼女。室内の壁に貼り付けてある、赤く塗り潰された世界地図が少し気になったが……気を取り直して竹竿を握り締めた。
レアは帽子を目深に被り直し、家屋の裏手に届く様に大きく声を張り上げる。
「おいテロドス! 居るか? ほれ、貴様の大好きな竹輪だ! 犬が竹輪を好きかどうかは知らんが、どうせ雑食で、三時のオヤツに“自分の捻り出した糞”でも食ってたりするのだろう? ハッハッハッ、まるで永久機関だな! さあ竹輪は美味いぞ、貴様も遠慮無く喰らいつくが良い!」
そうして釣り糸を垂らし、塀の上に腰掛けて待つ事、二十秒。
「ハッ、ハッ、ハッ……!」
庭の奥から鼻息も荒く、気味の悪いオッサン顔の小型犬が顔を出した。いや、人面犬と呼んで、差し支えない。
「おお。来たな、保存食“十九号”! いや、ここはあえてテロドスと呼ばせて貰おう!! さあテロドス、遠慮無くこの竹輪で私に釣り上げられるが良い!!」
マッハで周辺にブチ撒けられる、黄色い嬉ション。
まるでパンチパーマの様な、薄汚れたグレーの毛をボンボンと揺らし、『スンスン!』と臭いを嗅ぐテロドス。それから“食い物が来た”と認識した彼は……小刻みに痙攣し、再び嬉ションを垂れ流し始め、それをブンブンとまき散らしながら、耳障りな甲高い声で奇妙な鳴き声を上げ始めたのであった。
「ウゥゥゥ……コヴィッド! コヴィッド、コヴィッド!! ぢゅぶっ、グチャグチャグチャ、べろべろべろべろ……」
視線を左右に散らし、涎を垂れ流しながら必死にむさぼり食う、オッサン顔のパンチパーマ犬。どうやら竹輪がお気に召した様子だ。
「うむ、気に入って貰えた様で何よりだ! しかし非常に汚い絵面だな!」
釣り糸を垂らしながら笑顔を見せるレア。
この座敷犬、いや本来なら座敷犬である筈なのだが、何故か日常的に軒先の庭で野放しに飼われており、当然、風呂など一度も入れられてはいない。また人面犬を思わせる不気味なオッサン顔であり、そこら中に痰や唾を吐き、あたり構わず世界中に糞尿を撒き散らかす不衛生な習性も手伝って……お世辞にも可愛気があるとは言い難く。
レアにせよミストにせよ、よくもまあ、これを“食おう”などと考えるものだ。きっと、“庭で放し飼いになっているので目についた”等という単純な話なのだろうが。
因みに近隣の住民は、この犬が散歩中に路上へ転がり“寝グソ”をする姿を度々目にしており、しかもその飼い主ときたら、ペットが残した“宝物”を火バサミで拾い上げ、回収せずに……手近なお宅の庭先へと次々に放り込んでゆくのであった。
「うむ、やはり貴様の鳴き声は最高にキモイな! しかしコイツは本当に犬なのだろうか? 顔はなんか、利権まみれのオッサンみたいだし、どう見てもこれが“立派な和牛”になるとは思えんのだが……」
「コヴィッド! コヴィッド、コヴィッド!!」
「うんうん、本当に小汚いヤツだ。あと際限なくキモイぞ。だがここまでキモいと、それはそれで大したものに思えてくるな!」
「くしょん! ぶぅぇくしょん! う゛ぇくしょん──!!」
鼻水を飛ばし、涎を垂らすテロドス。
「おお、鼻水を垂らし始めたぞ!? こいつもしかして狂犬病ではないのか? 何かヤバイのをまき散らしそうだし、捕獲したらガッツリとマスクでも被せておいた方がいいのかも知れんな!!」
レアはポケットから別の竹輪の袋をゴソゴソと取り出し、その梱包をビリリと破ると……更にもう一本をテロドスの目前へと放り投げた。
「よしよし、それが貴様の“最後の晩餐”だ。よーく味わって食うがよい!」
「コヴィッド! コヴィッド、コヴィッド!!」
鼻水と涎を垂れ流しながら竹輪を貪るテロドスを眺め、ウンウンと楽しそうに頷くレア。
「だがな、いくらキモかろうと食ってしまえば甲乙も無し! もしそれが美味しいお肉であろうと、狂犬病のヤバいお肉であろうと、口に入れて消化してしまえば……皆、等しくウンコになるだけなのだ」
そう呟く彼女は、己の発言に深い哲学を感じ取る。
「結局、全てのものはウンコとなって大地へ還るのだ。それが輪廻の真理であり、最終的には人類、生物、皆ウンコ。その意味で我々はまさに、地球船ウンコ号の兄弟姉妹だと言えよう」
空を仰ぎ見るレア。
「そう、人生とは如何に金や名誉へ執着しようと、誰しもが最後は平等にウンコとなる。私もウンコ、貴様もウンコ。皆ウンコとなって世界の肥料と化し、巡り巡っていつか再びこの世に生を得る。そう、あの日トイレに流れて行った未消化のコーンの様に、長く苦しい旅路を経てな。改めてそう思うと、何故だかこのクソ小汚い不気味な犬ですら愛おしく、そしてなかなか美味そうに見えて来るのが不思議ではあるのだがな!」
何を言っているのか良くわからない。それに一体何処をどう見れば、この悪臭を放つオッサン顔の小型犬が、美味そうに映るというのだろう?
「グェ……ゲブレイッェソス」
不気味なゲップを吐き出す人面犬。
竹輪を食い終えたテロドスはしゃがみ込み、己の股間をベロベロとしゃぶり始める。それを確認し、塀から降りて敷地へ侵入するレア。
「はっはっはっ! それは竹輪ではないぞ、貴様のポークビッツだ! よし! これで今晩より、貴様も名誉ある和牛の仲間入りだ。さあ、その“保存食十九号”の名にふさわしい美味しいお肉に……えっと、ここが肩ロースか? うむ、何だったかな? まあ細かい事は後でいいや。それよりえらく臭いぞコイツ」
そう言った彼女はテロドスを小脇に抱え上げ、今度は習家のブロック塀を軽々と飛び越える。
それから路上へ人面犬を放してしゃがみ込み、置いてあったウー〇ーイーツのリュックの天板へと手を掛けた。
バリバリバリ……
彼女はベルクロを剥がし、リュックのB面を上へと持ち上げる。それから仕切り板を取り出すと……『これはどう組み立てたものか』と頭を悩ませ始めたのだった。
「ふむ。気を付けんと、背中で小便を撒き散らされそうだな」
「コヴィッド! コヴィッド、コヴィッド! ぶぅぇくしょん! う゛ぇくしょん──!?」
しゃがみ込むレアの脚にしがみつき、これまた唾と鼻水をまき散らしつつ、カクカクと腰を振り始めるテロドス。
「はっはっはっ! 面白いヤツめ。あと貴様は本当に気色の悪い犬だな! なに、心配せずに待っていろ! このリュックが完成した暁には貴様をここへ放り込み、中国の犬ではなく立派な和牛として……」
そこまで言葉にしたレア。
だが次の瞬間──
何かに気付いた彼女は、しゃがみ込んだままツナギの首元を緩め、右手で素早く背中から産業廃棄物を抜き放つ──!!
──ガキィンッ!!
背後を視認すらせずバットを半分程抜いて、襲い来る刈込鋏の一撃を受け止めるレア。
「ふん、背中から不意打ちとは卑怯千万! だがその様な姑息な手が、このレア様に通じるとは思わぬ事だ。なあ、そうだろう? 習オバサンよ!!」
そう言ったレアが立ち上がって振り向くと、そこには……
“尖◯諸島”と書かれた赤いエプロンを身に纏い、またその手に“一◯一路”と彫り込まれた大型の刈込鋏を構える、大柄でオールバックな垂れ目のオバサンの姿。
そう。彼女こそ、この女性こそ、付近住民と土地境界問題で幾度も衝突を繰り返し、周囲に理解されない独自の理論を持って、近隣への侵略行為を繰り返す……市内最強の迷惑系専業主婦。習オバサンこと、“習 近子”、その人である。
「コヴィッド! コヴィッド、コヴィッド!!」
レアは、己の脚にしがみついて腰を降り続ける、テロドスの首根っこをガシリと掴むと……
「テロドスよ、危険なので貴様は少し離れていろ!」
そう言ってポイと放り投げる。しかし、着地と同時に駆け寄り、再び腰をカクカクさせ始めるテロドス。
「コヴィッド! コヴィッド、コヴィッド──!!」
「はっはっはっ、本当にどうしようもない駄犬だな! さてと、貴様の主人はどうやら……このまま我々を見逃すつもりは毛頭無さそうだ」
「ゴモウ!? ゴモウ、ゴモウ──!!」
涎が気管に入ったのか、急に咳き込む人面犬。
しかし冷静に考えれば、オバサンの行動にも一理ある。
自宅の飼い犬を保冷リュックに詰め込み、連れ去ろうとしている不審な人物。まともに考えれば、それをみすみす見逃す道理も無い。ただこの習オバサン、こちらもまた、決して“普通”とは呼べない類の人物であるのが……非常に大きな問題でもあった。
「イッタイイチロ……」
フウゥゥゥッ……と丹田から絞り出す様な呼吸で重心を落とし、大きな刈込鋏を広げ、構えを見せる習オバサン。レアの身長は百六十八。当然、女性の中ではそこそこ長身の方であるが……それを悠然と見下ろす彼女は、更に頭一つ分抜けて大きい。
そしてまた、オールバックになされた髪型と眠そうな表情も相まって、まるでその辺の仕事帰りのサラリーマンのオッサンの様な、はたまたリアルプーさんの様な、気怠げで鬱屈としたオーラを周囲へと醸し出していた。
彼女を横目で睨んだレアは、脚にしがみつくテロドスをブンブンと振り飛ばしつつ……その背中から完全に産業廃棄物を抜き放つ。
「不本意だが……衝突は避けられん様だな」
自覚なき犬泥棒。当たり前である。
ただそれでも普通なら、他人へ刈込鋏を向ける様なマネはしないだろう。そしてその鋏の握り手には……なんと鎖鎌よろしく、“覇権”と刻まれた小さな鉄球が、まるで分銅の様に繋がれているのである。もはやそれは単なる鋏の類などでなく、明らかな戦闘用に準備された危険な得物。
「ふん。オバさん、貴様、なかなか出来そう……」
そう喋りかけたレアの右頬を、
「フウゥァァァアッ、ウェェエイッッ──!!!」
気合いに満ちた掛け声と共に、飛来した鉄球がかすめ飛ぶ──!!
──ガキインッ!! ジャジャジャジャジャ!!
バットで擦れ、火花を散らす漆黒の鎖。
レアは垂直に構えたバットで軌道をずらし、その攻撃を受け流す。ジャララ……と落ちた鎖を引き、再び必殺の構えを取る習オバサン。
「暗器か。やるではないか」
路上に……緊張が走った。
「コヴィッド! コヴィッド、コヴィッド! ぶぅぇくしょん! う゛ぇくしょん──!?」
再びレアの脚に向かって腰を振り始めるテロドス。
「イッタイイチロ……」
習オバサンは長い鎖を器用に身体へ巻き付け、それをブンブンと上半身で踊るように振り回し……刈込鋏をまるでヌンチャクの様に自在に操りながら威嚇する。
「いいだろう、このレア様が相手になってやる」
カクカクカクカク……
レアの脚へとしがみつき、必死に腰を振り続けるテロドス。
「さあ、雌雄を決するとしようか!」
中世における騎士の如き仕草で、金属バットを胸の前へ構えるレア。徐々に分銅を振り回す速度をつり上げて行く習オバサン。
こうして今、真昼の住宅街における決闘が……ゆっくりと、その幕を上げようとしていたのだった。
※【ビニール傘と金属バット】は非常に低俗でお下劣な悪質コメディであり、また、筆者も読者も頭がお花畑の、どうしようもないファンタジー作品です。
作中に登場するお馬鹿さん達は、実在の人物、また実在の国家◯◯、組織等には一切関係ございません。作品はどなたもご自由にお読み頂いて結構ですが、読んだ後は現実とフィクションの区別をキチンとつけて宿題等を早目に終わらせ、公共の場で奇声を上げたりされませぬ様、皆様方におかれましても重々……以下略
この作品には年齢制限がございます。また“チ◯ポ”等、まだ学校で習っていない難しい言葉が沢山出てきますので、小学生以下のお友達は必ず、お母さんと一緒に読んで下さいね!




