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「えええ?!うちにですか?!!」
「だめか?」
「い、いえ、そんなことは・・・で、でも・・・・。」
「あら、すてきね。私もご一緒していいかしら。」
「ええー!!リエダ先生まで?!」
驚きがメーターを振り切ってしまって、ユーリは震え上がった。
ジール先生が突然村にやってきただけでも心臓が止まるかと思ったのに。校舎内のリエダの部屋で3人でお茶を飲み、ジール先生に学校内を案内し、もうユーリは、それだけで胸が張り裂けそうだった。ジール先生と最初に話したときとどっちが命を縮めただろう。
それから、3人はまたリエダの部屋に戻ってきて、やっと心臓が落ち着いてきたユーリは、「これからどうしましょう。」とジール先生に声を掛けた。そうしたらその答えが、「ユーリの家が見てみたい。」だったのだ。しかもリエダ先生までご一緒したいだなんて。
いいい、いったいお二人は何を考えてるのー!!
「で、でも、う、うちなんて、見ても何もいいこと無いです。汚れてるし、弟妹たちは暴れ回ってるし、ぼろぼろだし。」
「変な気は遣ってくれなくていい。
ごく普通の、民家を見てみたいだけなんだ。」
普通じゃないのよー、どっちかっていうとっていうか、かなり真ん中より下の方なのよー。
「お母上の見舞いもしたいし。」
うちの母さんはお母上なんて立派なものじゃないのよー。
「御家族が多いのも楽しそうだ。俺、親とか知らないから。」
ぼそりと付け加えられた一言に、あ、とユーリは口を押さえた。
そうだ。彼はずっと、兄王とたった2人きりだったのだ。あんなにお城は広いのに、一緒に住んでいる家族は2人だけだなんて。それがどういう状況なのか、ユーリには想像だにできない。
ジール先生はばつが悪そうに視線を泳がせている。
ユーリは口に当てていた手を下ろした。
「あの。ほんとうにお構いはできませんけど、それでもよければ。」
そう答えると、ジール先生から礼とともに笑みが返ってきた。




