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96 未来への選択

「僕は――魔王になんてなりたくない」


 僕は絞り出すように言った。


 確かに、力は必要だ。


 けれど、そのために手を染めてはいけないものもある。


「僕が欲しいのは、平穏だけだ。フラメルと共に生きる優しい時間なんだ」

『それを得るためには力が必要であろう? お前に力がなければ、未来はつかめぬぞ』


『奈落』が言った瞬間、右目の激痛が走った。


「うううっ――ぐっ」


 熱い。


 眼球が焼けそうだ。


『見るがいい』


 その声にハッと顔を上げる。


 見渡す限りの焦土だった。


 帝都全体が炎に包まれ、人も建物も燃え尽きていく。


 爆炎に照らされた帝都で、僕が一人の女を抱きしめている姿が見えた。


 僕そっくりの少年。


 いや、もしかしたらあれは――。


「未来の、僕――!?」

『フラメル……嘘だ……』


 もう一人の僕はその女を抱きしめたまま嗚咽している。


 フラメルは動かない。


 顔は血の気を失い、瞳は光を失っている。


 そして胸元にはポッカリと大きな穴が開いていた。


 明らかに、致命傷だ。


「あ……あああああ……」

『あああああああああああああ……っ!』


 僕と、もう一人の僕の声が重なっていく。


『これが――お前の無力さが招く結末だ』


 奈落が言った。


『その女だけではないぞ』

「えっ……?」


 僕は周囲を見回す。


 折れた剣や砕け散った鎧の破片が見えた。


 リゼッタ先生とブリュンヒルデが血の海に沈んでいる。


 ドルファ将軍や兵士たちも残らず殺されている。


 誰もいない。


 守りたかった人たちは、一人として残っていない。


 残ったのは僕だけ――。


 何も守れず、すべてを奪われ、絶望の中で――僕一人だけが生き残っている。


「これ……が……」


 結末なのか。


 僕に待ち受ける未来なのか。


「嘘だ……信じない」

『力なきものは敗れる。敗れたものはすべてを失う。それがお前たちの世界の理であろう』


 奈落が告げる。


「僕は――こんな未来は」

『ならば、未来を変えるために』


 奈落が重ねて告げた。


『真なる魔王の力を望むか?』


 その誘いは、とても甘美に響いた。


 声が甘美に問いかける。


『このままでは悲劇は確定する。お前の【魔眼】がいかに強かろうと、お前の剣技がいかに優れていようと、運命には抗えぬ』

「運命……」

『定められた運命を覆すことができるのは絶対的な力。そして人間を超えた存在へと昇華すること』

「つまり――魔王になれ、と」


 つながった。


 そんな気がした。


 僕が人造の魔王にされたのは。


【魔眼】の黒騎士として超絶の戦闘能力を得たのは。


 すべては――愛する女性を救うためだったのか?


『力を欲せよ』


 奈落が促す。


 その声はますます甘美に、僕の心の中心部に染み渡った。


『この時代、世界に君臨する真なる魔王は一人――お前はそれを望むか?』


 僕の、答えは。




「お待ちを、奈落様。魔王の力を望む者はここにもおります」




 そのとき、突然声が響いた。


 誰だ――!?


 驚いて前を見ると、二つの人影が近づいてくる。


 一人は十代前半くらいの美しい少年で、幼い顔立ちに似合わない老成した雰囲気を漂わせている。


 もう一人は、波打つ白銀の髪に柔和そうな表情をした美女。


 二人とも知っている顔だった。


 少年の方はメルディア六神将の一人、【氷嵐】のイオ。


 そしてもう一人は僕の姉皇女レミーゼ。


 一体どうして、こんな場所に――?


 イオが優雅に一礼した。


「なるほど、【黒の位相(クリフォト)】への扉を開けたんですね、兄上」


 イオが僕に向かって一礼した。


「……兄上?」


 メルディアの将軍が帝国皇子であるクレストに対してそう呼ぶ道理はない。


 だとすれば――。


「おや、驚いていますね。ご存じありませんでしたか、私たちの関係を――アレス兄上」


 イオがほほ笑む。


 僕をクレストではなくアレスと呼びながら。


「……まさか、君は」


 ごくりと喉を鳴らす。


「私はあなたの弟です。母は異なりますが――ふふ、あなたが『アレス』であったときは話す機会がほとんどありませんでしたね。こうして言葉を交わせるのが嬉しいですよ」


 イオが語る。


「異母兄弟とは初耳だね。だけど、そんなことはどうでもいい」


 僕はイオをにらんだ。


「どうして、こんな場所にいる? それにレミーゼ……姉上も」


 レミーゼは答えず、近づいてきた。


 やけに熱情的な視線が僕をとらえる。


 強烈な違和感があった。


 彼女は【虚無の皇女】と呼ばれるほど感情に乏しく、常に虚ろな視線をさまよわせていたはずだ。


 それが、いったい――。


「わたくしは心を取り戻しましたのよ、クレスト」


 レミーゼが僕の前にやって来た。


「虚無ではなく情熱をもって、あなたと向かい合いたいと思っていましたの」

「姉上……んぐっ!?」


 それは一瞬の出来事だった。


 素早く顔を近づけてきたレミーゼに、僕は唇を奪われていた――。

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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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