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3ー6・少女の行方



「_____次は終点です」






 車内アナウンスが流れて顔を上げたとする。

次で降りなければと思いながら、



 窓の外を見ると灰色の空だけが

ぼんやりと見えていて他は窓を着く大量の雨粒で外は見えない。

強い雨音だけが聞こえる。


(不思議なものだ)



 職務とは言え、

何事にも冷めた心気で生きている自分自身が躍起になっている。

人からどう思われても構わない。人生はどうだって良いと投げ出していたのに。

どうして、行動に出ているのだろう。



 天気予報を察して、二つ分持って来た傘。



 孤独な少女は、今、どうしているのだろうか。




 圭介はそんな心配を覚えながら、バス停に着くのを待っていた。










 雨は止まない。

風花はふらりと立ち上がる。

北條家で唯一、皮肉なもので休める居場所は此処にしかない。


 でも。


(彼にとっては、苦痛だろう)




そして悪足掻きと理解しながらも、墓に向かって心の内で問いかける。

_____其方(そちら)に行っては駄目なのかと。



 当然、返事は帰ってこない。

きっと相手は怒っているだろうから、それは許されないこと。


せめてこの世で"北條 風花"として縛られながら生きる事を

望んでいるかもしれないと風花は心の隅で、諦観を抱いていた。






そんな時。

こつり、と後ろから足音が聞こえて視線を向ける。






(_____________今は、会いたくないのに)






 濃い口紅の色が見えてくる。

年に見合わない派手な少女が優雅に洒落た傘を差して此方を見ていた。

彼女は高飛車な雰囲気と、人を蔑む様に嘲笑を浮かべながら、

(やが)で、声を上げて侮辱する。




「あはは、不様ね。 北條家のお嬢様が」

「………そうね」




 分家の少女が此方を見て笑っている。

けれども今の情緒では、“風花は彼女を赦せない”気持ちでいる。



 自身が、笑われるのも蔑まされるのも、どうでも良い。

けれど咄嗟に墓を庇う様に

風花は手を広げて墓の前に立ち塞がった。

心なしか風花の目付きも据わり険しくなっていた。


(何様のつもりよ)




 そんな彼女の様子に眉を潜めて

不機嫌そうな面持ちをした後で華鈴は




「なによ。まるであたしが悪人みたい」

「そうとは言っていない。……………何故、関係のない貴女が此処に居るの」




「関係のない? 一体どの口が言っているのかしらね? 

 

それはこっちの台詞よ。

貴女の方こそ自分の立場を弁えたらどうなのかしら?

 本来はこの場所に入るのも許されない部外者の癖に

時が経てば北條家の人間ふりをして、大きな顔して!!」

 

 華鈴は雨音にも負けない程に声を荒らげ、肩で呼吸をする。

血走るその瞳には怒りと、そして風花への妬み。

風花は、顔を伏せる。



「……………そんなつもりはないの。ただ私は…………」




 懺悔に来ていたの。

言葉に詰まり、言葉にならない声でそう訴えかける。




「___当然の事に来ただけ。私は。

嫌味を言われても“この事だけ”については、

とやかく言われるつもりはないの。それに_____」






 この言葉だけははっきりと、口にした。







 

「それに、この家が、

直哉と私に受けた仕打ちは許すつもりはないわ」






 風花の言葉に 

プライドの高い華鈴は傷つき、頭に来てしまう。

冷静沈着に風花がそう言った所だった。








「風花」








 青年の声が聞こえたのは。






 少女二人揃って、圭介の方へ振り向いた。



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