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名無し神  作者: スズメのこころ
第一回 転生者に出会えば剣を取れ
1/5

人殺し

これが活動報告で言っていた出すか出さぬか悩んでいた物です。

適当に気が向いたら更新します。

その分楽しさを提供できるよう頑張りますので何卒宜しくお願い申し上げます。

さて、私は神だ。年なんてものは無い。精神体なので1年を数える習慣は無い。そして、性別もない。精神体だからな。

『地球』の皆さんには怒りを持っている。だが、これから始まる物語を聞いて改心してくれればいい。


まずは説明と行こうか。

私の世界ははっきり言ってもらい物だ。何の役職もないが、余った物を使わせてもらっている。

私の世界は私が『生きていく』ために必要な物と言えるだろう。まずはこの説明からさせていただく。


世界には『信仰心』と呼ばれる、神が神で有り続け神が今もなおここに居られる君達で言うところの『食糧』だ。

信仰心が得られないとどうなるか。それは私の古くに死んだ友神ゆうじんが教えてくれた。

「自分・・・もう駄目かもしれない」

「急にどうしたのさ?君らしくないよ。君は『友愛』の神ルーじゃないか。」

友人には役職というものがあった。友愛という、あいつにしか出来ない能力だ。

「信仰心が足りない・・・自分の世界にはもう、信仰という言葉は一切消え失せてしまった・・・」

私は、友人である彼を助けようとした。

「これを使って治せないか?」

私の世界で手に入れた『信仰心』だ。少しでも、分けてあげたかった。

「他の神の信仰はその神の物だ。無理なんだ・・・・・・・自分は君に最期を見届けて欲しい。」

「本当か・・・」

結局私は何も出来ずに彼というすべての存在が消えるのを見届けた。


そう。分かったかな。信仰心が消えると神が消滅するんだよ。

確かに神が消滅するのは世界から信仰心を集められなかった神が悪い。だけどね。この話を『あえて』したのはこの先の出来事が原因だ。


「人間・・・それも、不明?」

私は消滅してしまった彼の世界を調べていた。それは単なる気まぐれであった。

しかし、その気まぐれであり、「たまたま」が私の世界の『異物』に気付く切っ掛けを与えてくれた。

その人間は突如発生し、この世界をまるで知らないかのように探索していた。出現したと思われる場所においてもだ。

そして、あの人間はどこから手に入れたのか、強大な力を持っていた。世界ひとつ滅ぼせる程ではない。無限に強くなるような、彼とは関係のない私のような神をも危険に陥れる力だ。

やがて人間は『神』と呼ばれ、彼の信仰心はゼロになった。

だから死んだのだろう。

私はそれを調査した。

他の神にもどこか遠い所の神にも伝え回った。

「私の友神の世界を調査したら危険な人間が信仰心を独り占めしていた。」

勿論これで信じてくれる人が居ない事もあるだろう。その時は持っている情報・記録をすべて見せ、無理やり信じさせた。

神のルールには神が神を傷付ける事はできない。例え神を殺したい神がいてもできないのだ。ただ世界を作り、役職をこなし、世界を調整する。それが私達神の仕事だ。


私は仲間である神に伝え回り、最後に自分の世界を『観察』する。自分の世界の中ならばどこに居ても様子を観察し、そして過去を見る事もできるのだ。友人ルーの世界の観察は、友人ルーに任された事だった。だから権利の無い私でも自由に見る事が出来たというわけだ。しかし、本当にたまたまだったが。


しかし、私は気付いた。「出自不明の人間が居る。」って。たまたま見つけなければ『君たちに』世界を破壊されていただろう。

その人間をひとつずつ調べる。やはり不明だったようだ。

私は準備をした。

何でするかって?

お前ら日本人を止めるため・・・いや、当時の私には謎の人間だったな。


奴らの特徴を洗いざらい調べ、普段から世界の様子を見ている水晶玉のようなものに自動で奴らを探す機能を付けた。当然知っている神全てにも実装させている。私の世界の周りに居る太陽や月は人間が暮らすには厳しく、機能を付ける意味も念のため程度になっていたが。彼らは信仰心はいらずに生きていけるらしいし本当に念のためだ。

私は私の分身であるニンゲンを作り出した。当然ながら男と女を明確に分ける生殖器は無く、効率良く筋力を生成するように改良を加えた物だ。しかしそれだけだと人間は人間だと気付かないため、顔と体の造形にも多少凝っている。なぜ筋力を生成させるか?それは私のチカラの限界にある。


私には人間を丸ごと転移させるような力はない。

精々筋力の少ない、神の力の負担を極力少なくしたニンゲン(神工人間、とでも言ってくれ。)を作る必要があるのだ。それに、こちらの方が色々と都合の良い事がある。

一つは神の力を節約した分あちらの世界で使えるということだ。

謎の人間は強力な『能力』を持っているので舐めてかかると簡単に世界から信仰心が抜け落ちてしまう。

二つ目の都合が良い事は・・・それは、筋力を生成することに特化しているため最終的には通常の人間より遥かに強くなるのだ。となると通常より遥か筋力の弱い最初が肝心だ。

三つ目がある。副産物のようなものだが、複雑な構造を取っ払い最適化した事によって神の加護を受けやすいのだ。あちらの世界だけでは不可能な事を神の力を使い可能にしている。よって体に神気が染みわたりどんな時でも神の力を使う事が可能になったのだ。非常に脆いがな。


今のような色々とした準備の間にも私の世界で謎の人間は世界の破壊を続ける。

私にとっては常に集中していたためほんの一瞬だったが、彼ら『人間』にとっては10年が過ぎた頃だろう。

謎の人間にずいぶんと食い荒らされたが、私は準備が整った。

神は自分の世界に降りる事が出来る。身分を隠す事も可能だ。


私は身分を隠すために仮の体を持って世界へ降りた。私は精神体だから、こうしないと辺りを漂う事しか出来ない。

私には役職が無い。ただ「神」とだけしか分かっていない。鑑定が出来る神から私の事を鑑定してもらっても「神」とだけ書かれた結果が帰って来たぐらいだ。

私の使えるチカラはどの神も使える標準的な物だけで完結していた。だが、役職のない私には世界を創る事ができなかった。たまたま誰かが余らせたこの世界で私は生き延びているという事だ。


ようやく世界へ降りる。

降りると言っても、人間を真似て作ったニンゲンだ。天高くから落ちたら死ぬ程度には弱い。

私の世界は他の神が言っているような『魔法』はない。至って普通の世界に神の力で配置されていたものは信仰心を集めるための道具『モンスター』と、信仰心を生み出すための生物『人間』だ。

モンスターを倒し過ぎる事は環境を壊す事にもつながる。

早急に対処せねば・・・


―――――浮遊感を感じる。


そのすぐあと足は地面へとつく。

内心ホッとしたが自分が設定した位置だ。何の障害物も見当たらない草原だが、ひとつ違う事があるとすればモンスターがほんの少し強い。

私はナナシ。という事にする。神の世界でも名無し呼ばわりだし心は痛くない。

装備がしっかり付いているか確認する。

装備と言っても君達が付けるようなガキの遊びのような装備ではない。制限具だ。

制限具を外せば力は出るが常に使えばいずれこの体が朽ち果て私の世界は闇に包まれるだろう。

普段制限具は髪につけている。


説明会はもう少しで終わる。退屈していただろうがもう少しだけ付き合ってくれ。改心の為に。



私の体は特殊だ。まず男でも女でもない。内臓はあるがあくまで体を維持するための装置に過ぎない。

そして、私の体から発せられる電波のようなものは私にとって有利な状況を作り出すためにある。

どういう感じかというと、


‛‛人間を減らして力を持ち込む事が出来る'’


のだ。

例えばこの力で無理やり異物を吐き出すことにしよう。すると私の世界に住む人間は滅びる。

神が直接自分の世界に干渉するには、それなりの対価が必要なのだ。

減る人間の数は持ち込む力によって様々。世界に支障がない者から順に消費されていく。


私は世界のためと思い、天国と人間が呼んでいる楽園にこの人間を消費させる。

せめてもの私の償いだ。

本来世界に神が干渉する事はないからね。あるとしても人間に試練を与えてその人間自身の力で越えて成長させていくからね。


とりあえず私は体が壊れる事のない手頃な武器を作る。10人が差し引かれた。

人間は世界の素となるエネルギーを持ってる。この世界に干渉するには何かと自分の身を斬らなければいけない。

ん?君達の言っている天国と同じ意味だよ。死んだ人間が集まる場所だ。転生も行える。

だが、転生には時間が掛かる。何十年後になるか分からないがそれまでの間せめて楽しく過ごしてくれ。


君達の世界でカタナと呼ばれるような、切断に特化した剣を作った。

さて、長かっただろう。ここからは私視点で聞くが良い。改心してくれるならばいつでも大歓迎だがね・・・

だが、私の世界を日本語とやらで埋め尽くした事は改心しても許す気は無い。




―――――――――――

「ふぃ」

シュッ、シュッと剣を振り回す。

「物には名前が必要だね・・・」


少し考えた挙句、付けた名前は断剣ノートだ。

この先、謎の人間を探すために、少しだけ髪留めに使っていた制限具を外す。


視界が血に濡れたように薄く赤い。

近くの謎の人間を探す。・・・なるほど。

私はさっと制限具を付け、その方角へ向かって歩く。

歩いている間に様々な力を解除しておこう。

解除しなければ私の体は朽ち、破損した体の再生に気を取られている内に世界は滅亡するかもしれない。

私は今後を考えて出来るだけ人間の数は減らさないようにした。

160人。合計170人の人間が天国へ送られた事になる。

主にもしもの事体に逃げ切るためのチカラを手に入れた。


「行くか。」

準備はしっかりした。負けた時逃げる準備も出来ている。

何より、今の自分には強さが無い。

武器が優秀なだけだ。

筋力だって、しっかり付いていない。

『弱肉強食』のルールが適用されるこの世界では生きるために肉、強くなるために肉が要る。私の最も分からない所だ。

世界を調整し、観察することしか出来なかった私はどの世界にも標準で適用されているルールを理解することが出来なかった。


しばらく走る。

息切れは無い。チカラでほぼ無尽蔵な体力にしているからだ。軽く人間10人分の肺活量があるだろう。


やがて見えてくる。

「だ....お.....え.....ん....だ!」

目で見えていた通りだ。二人いる。

うち一人は奴隷、残りの一人は奴だ。

私は咄嗟に制限具に手を伸ばすが、少し話をしてみようと思いとどまった。


「こんにちは。」

「あ?何だお前」


―俺は戸惑っていた。―

―弱いくせにこの辺りをうろついている雑魚がいるだと?―

―俺には神様から授かった観察眼がある。―

―それによると無駄に体力ヒットポイントだけある雑魚じゃねーか。―

―こりゃあいじめがいがありそうだ。―


―俺は、なぜこんな体力があるのか疑問に思わなかった。―

―だからこそ、こんなことになったのだ。―

―ガッツと名前を貰いはや1年。こんな恐怖は味わった事がなかった。―


「おめえかわいいなぁ。どうだ。今なら奴隷にしてやるよ。」

奴隷か。

「すみません。あなたの奴隷になるつもりはありませんので。」

「あ?俺の言葉にケチつけるつもりか?」

「ええ。私は少しお話ししようとこちらへ来ました。」

「てめ....えッ!力の差が分かってないようだなッ!」

私は落ち着いて制限具を外す。外した制限具はポケットにでも入れておこう。


『目』。奴の握りこぶしには人間に害がある物体がある。

おそらく毒か何かだろう。

私はくらったかのように見せかけて大きく回避する。

「痛い!」

迫真の演技。

奴の手からぼろぼろと紫色の煙を出している物体が出てきた。こうして持っているということは奴には毒物に耐性があるようだ。

「ニ....ゲ.....テ...ハ....ヤ...ク......」

奴隷さんが私に逃げるように言ってくる。奴隷さんは私がやられると思っているのだろう。

「野郎・・・口をふさいでやる!!」

あーあ、標的が奴隷さんに変わっちゃった。

「そんな余裕でいいのかなー」

神の力によって強化されている私の体はいともたやすく男の眼前まで飛び込み、毟り取れるだけ髪をむしり取った。

「いdっだあああああああああああああ!!」

男は少し転げまわったが平静を保つ。

この時、私はチャンスを与えてあげたのだ。

もう一度私の能力を測るチャンスを。奴の能力は大分前に知っている。


「てめぇ・・・ただじゃ済まさねえ!」

「奴隷さん。少しあちらで待っていてください。あちらなら安全です。」

奴隷さんに耳打ちする。

まあ奴にも聞こえているだろう。

「ずいぶんと余裕だなぁ、ああ゛!?」

奴が吠える。私は奴に見えない速度で飛び上がり、

「ど、どこだ!!・・・奴・・・逃げやがったな?...フフフ。ハッハッハ。」

何という頭の中お花畑。

まだ私は逃げていないというのに奴隷に向かって行った。


今まで奴は負けた事がないのだろう。その能力で事前に危険を察知できたためだ。

だが。何度も確認する癖を付けていない結果奴は倒される事になる。

「さーさー、俺のかわいいおちびェフ゛ッ!!!!!」

奴隷さんはガタガタと震えている。

無理もない。強い主人を倒したのだ。

遥か上空からの踵落としで。

当然私の体は跳び上がった時点でボロボロだ。


「さて、逃げますか。」

「覚えていろ....奴隷が主人に逆らえると思うのか....!!」

「まだ生きているとはしぶとい・・・」

さっと奴隷が奴隷である証を外し、横でくたばっている奴の首に蹴りを入れる。

奴はまだ生きているがこれ以上は私の体が持たない。

制限を外せば強くなれる代わりに、使いすぎれば私の体が朽ち果てる。ただでさえニンゲンの限界以上を引き出しているのだ。神の力で衝撃以外のものは補助しているが、その衝撃だけでも人は脆く壊れるだろう。


神の力で使いきりゲートを作り、草原とは真逆の方向にある街に行く。

―あの時、腰にぶらさげていた断剣で斬ればよかった。そうしていれば私は本当の絶望を知らないで済んだだろう。―


トンッ。綺麗に着地できたところで制限具を付ける。

今襲われたら難しい。念のため制限具を変形させ腕に着ける。


「痛みはとても辛いですね・・・」

「ダ....イ....ジ....ブ?」

どうやらショックで喋れないみたいだ。

大方あの主人によるものだろう。

「そうでした・・・喋れるようにしなくては」

制限具を外し、奴隷さんを治療する。

「あ、ありがとうございます。」

なぜか、彼女は私にお礼を言う。

「お礼なんていりませんよ。」

「つ、ついていかせてください。」

少し困った。

しかし、

「いいですよ。」


仲間になった奴隷さんは女性のようだ。性別のない私にとっては人間は等しく人間にしか見えていない。

最初の170人天国送りの中に入っていないとすると、彼女には世界にとって価値がある人間のようだ。


私は街外れのスラム街へと行き、休む。

盗賊とかよりタチの悪い奴らが出るって?

天国行きになった170人のうちの一人がここを仕切る『解放団』のリーダーだった。

だから今頃そのリーダーを泣きながら探しているだろう。

遺体は無い。私の体にすべて還元される。すべて、というのは還元したい部位を還元した後、残りはすべて消滅する。ということだ。不便だが、一つ一つ強化したい部位を選んで人間を天国送りにするしかないのだ。


しばらくの時が経つ。

「・・・おなかすいた」

そういえば、人間は食べ物がないと生きていけないのだ。

似たような物で私には信仰心がないと生きてはいけない。

私は食堂へ向かう。

道中金が無い事に気付いて『目』を使い落ちている小銭を集めた。


ドアを開ける。カランコロン。

「いらっしゃいませ!奴隷はお断りだオラァ!!」

「すみません。外で食べるしお金もしっかり払いますのでどうか許してもらえませんか。」


「良い心がけだ。メニューは何にするんだ。」

驚くことに、作法をしっかりしていれば怒る事はないようだ。

私は奴隷さんに待っているように言い、メニューを取る。


「じゃあ、これで。」

ついでに金を払う。

「あいよ、出来るまでそこで待っててくれ。」


奴隷さんと外に出て少し待つ。

「出来たぞ。皿は返せよ。じゃなけりゃ殺すからな」

わざわざ持ってきてくれる優しい店主だった。

今回のメニューは鳥の肉を焼いた簡素な物だ。お値段も安い。

「ほら。食べな」

「おねえさんはいいの?」

「今はいらない。」

私に空腹という概念はない。

この身体のそもそもの動力源が違うのだ。

効率的に食べ物を筋力に変えるための構造になっている。

それに・・・おねえさん。やはり、人間は顔で性別を認識するようだ。


奴隷さんは少し私の事を心配しながら、ガツガツと鳥の肉を焼いた物を食う。

私は奴隷さんが食べ終わったところで奴隷さんの上に手を置いて、

「じゃ、狩りに出るぞ」


現在適当にモンスターを狩りながらサバイバルをしている。

当然野宿だ。

手軽に肉が手に入る方法としてこの『狩り』が挙げられる。

モンスターも動物なのだ。よく動く動物が美味しくないわけがない。


水はそこら中にあるため適当に水を入れる容器を作り、容器にありったけの水を汲んだ。

おかげで奴隷さんは食生活には満足できているようだ。


毎日定期的に『目』を使い奴を探索する。

なぜ人間を襲うのかといった質問に対して、私は

「この世界の人間じゃないから」といった回答をした。

本当の事だが、彼女は嘘に聞こえただろう。


なので、ニンゲンを見つけたらまずは挨拶。会話ができるようになったらその能力の使用をやめてもらえないか頼む。そういった手順を踏んで無理だというのなら、無理やりに止めさせる。

私の世界で楽しむのは勝手だが、私だって生きているのだ。

害を与える事を許してしまえば私はこの先消滅するだろう。


丁度今その手順を踏んでいる。

「すみません。」

「こんにちは。」

「少しあなたにお話ししたい事があります。」

「え、何ですか?」

「すみませんがその能力を使うのをやめてもらえませんか?理由はある事情で話せませんが・・・」


―急に話しかけてきた人物は碧眼へきがん青い長髪の美人に見えた。―

―しかし、急に話しかけて、俺の事を知っているような口ぶりで「能力を使うのをやめてもらえませんか」という。―

―俺には見た事の無い剣、横に連れている奴隷・・・?いや、赤髪の元奴隷を見るにこの人がとてつもなく強い人かもしれないと思った。―


「迷惑をかけていたのならすみません。」

「・・・よければ、私に同行してくれませんか?」


―謝ると次は図々しく同行を願う女性。―

―うーむ・・・自分でボロを出した感が否めないが、この女性は少なくとも私に敵意は無いようだ。―


「わ、わかりました。」

「では私の目的について説明しますね。」


「...ですから、私は違う世界の人間を倒して回っているのです。」


―・・・!?―

―まさか、私の前に神と思われる人物が現れるとは・・・―

―それに、このままだと世界が壊れる?―

―・・・どうやらこちらの事情も少しは知っているようだ。―

―最初の時に現れた神様が偽物のような気がしてくるが、どちらが偽物かは現時点では分からない。―

―慎重に行動して見極めねば。―


ひとまずこの人が付いてきてくれることになった。

逆に怪しいぐらいのスピードで仲間になったこの人間はジャズ。

適当に神から能力を授かり『転生』してきたらしい。


適当に私と奴隷さんとジャズの三人で街へ歩く。

能力は『聞く』事にする。もし信用して裏切られでもしたら滅ぶのは自分の世界だ。


「少し能力を教えてもらえないかな。」

嘘や、言っていない事がある気がしたらすぐ聞くつもりでいたが、この男は、

「簡単に言うと魔法を授かりました。」

「ココだと使えないはずですが・・・」

「いえ、自分の魔力で魔法を使うのでちゃんと使えます。」

そう言って男は指先から炎を出す。

奴隷さんが少し怖がっていたが、私があの男には敵意は無い事を伝えると怖いのを少し我慢していた。

「この世界には魔法の概念はないんですよ。」

「そうなんですよー。神様もしっかりしてほしいですよね」

・・・それはどっちの意味でのしっかりだ?

まあ私がこの世界を創ったわけではないので別にいいが。


街の近くに来る頃にはもう夜になっていた。

「ちょっと待っててほしい。」

「?これから何かするんですか、」

「例の人間を探します。」

制限具をジャズに見えないように外し、『目』で奴等を探す。

どうやら4人。すぐそばにいる人間と街に居る人間3人。

「街に3人。」

「3人?本当に3人もいるんですか!?」


―おかしい。―

―この人はおかしい。―

―少し遠くを見つめたと思うと「街に3人」?胡散臭いがまだ私はしっかりと見極めたい。―

―神の事だ。これぐらいの力はあって当然なのだろう。―


「・・・おなかすいた。」

あぁ、そういえばこの子は昼食べただけだ。

「少し待っていてください。」

制限具を外し、『目』を使う。

獲物。捉えた。

私は気配を極限まで消して走り出し、二人を置いて行ったまま目の前に来ても気付かない獲物を抱き上げた。


帰りは暴れる猪のような獲物を持ちながら髪に制限具を付けるという器用な事をしながら走る。

「今日はこれを食べましょうか。」

「わーい・・・ありがとうおねえさん」

どこか元気がないが。

断剣で適当に肉を切り分け、そこから適当に肉を焼き、そこらへんに生えている調味料(植物)を付け、頂く。

私には調味料は無しだ。この子らの分が勿体ないのだ。私は筋力さえ付けばいい。

「美味しい・・・」

ジャズは細々と私の取って来た肉を食べていた。


―どういうことだ?―

―あの人間、いや、神は俺を信じているのか?―

―バカバカしい・・・裏切る可能性は考慮していないのか?―

―・・・いや。あの神にとっては私に今のところは害がないと見抜いているのだろう。―

―例の人間。あの神にとっては私達日本人はこの世界に突如現れた『異物』に過ぎないのかもしれない。―


「では、行きますよ。くれぐれもあちら側に加勢はしないで下さい。」

「わ、分かりました・・・」


―同族を殺す事になるかもしれないのは嫌だが、下手に逆らって消されるのは俺の方だろう。―

―1度あの神の言う人間に会ってからだ。それから決めよう。―


加勢しないように注意した。

相手が面倒というのもあるが、一番はこの人間についてもう少し調べたい事があるからだ。


私はあの人間の内1人いる宿屋へ向かった。向かっている間、31人の人間を天国送りにし、筋力関係の能力を上げた。一つ、弱い特殊能力も付けた。少し生成される筋力に補正が付くだけだ。それ以外は何も効果がない。

合計201人。私の世界はゆっくりと破滅に向かっているのかもしれない。


「すみません。二階の4番の部屋に用があるので入れさせてもらって良いですか。」

「了解した。くれぐれもこ こ で、騒ぎは起こさないようにな。」

店主は私の腰に差した物騒な剣と私の顔を見て、「騒ぎ」と言った。こういう事は慣れているのだろう。

「わかりました。鍵は必要ないですか?」

「必要ない。どのドアにも鍵はついていないしな。」


部屋の前まで来てノックする。

コンコン。

「誰だ?こんな時間に」

出てきたのは『目』を使い探し当てた謎の人間。

特徴などはどうでもいい。皆同じような顔をしているし、何より水晶玉が自動で見つけて制限解放した時に『目』に教えてくれる。

「こんにちは。」

「こ、こんにちは。夜だけどな。」

―人違いだ。―

「お姉さん。悪いけど人違いだ。」

「いいえ。あなたに用があって来ました。」

―彼女の後ろを見る。赤い髪をした子供に・・・ジャズ?―

「ああ、ジャズの知り合いか。」


私はその言葉を聞いた途端ジャズに耳打ちする。

「知り合いだったのですか?」

「ああ、そうだよ。まさかこんなとこにいるとは思わなかった。」

―まさか俺の友達がこれから被害者になるとはな。―

―へへ・・・膝が震えてる。これから殺すことになるのか・・・この人間が。―


『奴』の震えは見逃さなかった。注目した所は震える位置。膝だ。

普通に友人なら私を殴ろうとするだろう。

・・・最悪だ。少し『目』を使い観察したが、この人間は男を助ける気はないようだ。


「少し外へでませんか?ここだと落ち着けません。」

―青髪の女性は外へ出るように俺に促す。俺は女性の大きな剣が気になっていたが、それが逆に死を築き上げる原因となった。―

―鉈のような大きな剣。それは女性を怒らせたら斬られるかもしれないという妄想を誘発した。―

―女性は優しそうで優しくないような表情の中一度もその剣に手をかけなかった事がその『妄想』を信じる決め手になった。―

―俺は妄想癖。それに見合う『スキル』を神様から授かった。自分の手で触った物をどのような形であれ妄想と同一にする。名前はつけられていないが、どうやらパッシブスキル(常時発動型能力)のようだ。―

―私は彼女には一切手を触れていないのに戦慄した。・・・嫌な妄想がどう足掻いても的中すると確信しているのだ。―

―私には元々予感という物には必ず当たる体質だ。予感のせいで何度嫌な未来が事前に察知されて泣いたか。―

―確定した未来を見ている感覚に陥った私には生きている意味はなかった。嫌な事があればすでに有る筈のない脳の触覚が教えてくれているように謎の電波を受信するのだ。―

―外を歩いていると過去最大級の謎の電波を受信した後に目の前で車に轢かれる人が見えた事にはショックで寝込んだ程だ。―

―しかし、逃げられる予感も同時に出る時は予感の通りに動けば事体を避けられた。―

―・・・簡単に言えばこうだ。―

―『脳が壊れそうなほど危険信号を出し、且つ逃げられる予感がしない。』―



「は・・・・はイィ・・・・」

10秒ほどの沈黙をした。そしてガタガタと怯えている。悟られたか?

「どうしましたか。・・・この剣が邪魔ですか?」

「ヒィィ!?」

壊れてしまったのだろうか。

―俺は友人がこうなる所を初めて見た。―

―最初から彼は敏感で、俺が怒りを覚える直前にコンマ一秒で逃げていた。―

―まさかこれが働いているのか?―

「ちょっ、そんなに怯えないでくれ。俺達は悪い奴らじゃない。」

―何を言っているんだ。―

「本当だ。大丈夫。大丈夫だから。」

―これから殺されるというのに。―

「俺の顔を見ろ。な?」

―友人を騙している。俺は最低なクズだ。―

「・・・う、うゥ。」

―なんとか友人は落ち着いたようだ。だが・・・―

「し、死ぬ・・・」

―死ぬ?―

「たっ助けてくれ!!」

―助けられるものなら助けている。相手が彼女でなければ。『本当の神』じゃなければ。―

―私には分かった。彼女がどれほどこの世界を知り尽くしているのかを。―

―あのブラックボアーの可食部をほとんど残さず取り、焼いていた。―

―更に、この男の位置を正確に察知している。元日本人、日本人。それだけを狙っている。―


「少し、こちらへ来てくれませんか。ジャズ。」

・・・加勢をしているのか、絶望に突き落とす事を楽しもうとしているのか問いただす。

「大きな声を言わないで聞いてください。」

「人を殺す事が辛ければ、この場から離れて待っていてもかまいません。」

続けて私は口を開く。

「しかし、それが嫌で、かつ彼を助けたいならば・・・」

―俺に聞かされた言葉はある意味想定外の事だ。―

―「彼と共に旅に出て、あなたの事を転生させた神を探してください。」と。―

―お別れ宣言だ。―

―それも必ずやり遂げなければ殺されるという事実を添えて。―

―俺は当然、―

「いえ。少し情が移っただけです。目の前で見せて下さい。」

―鬼畜、畜生の道を歩む事にした。―

確信。いや、確信していた所へ証拠が降って来た。

まあ、善人であっても結末は変わらないだろう。


「では、付いてきてくれますね?」

―彼女にとっては何気ない言葉。俺にとっては殺人の許可を取る言葉。―

私にとっては君の死刑宣告の言葉。彼にとっては物騒な友人殺害ショーを視聴へ招待する言葉だ。

「・・・・・」

「すみません。何か悪い事をしたでしょうか。」

「しらばっくれないで・・・さっさと本音を吐いたらどうだ」

「私は夜景を見たいだけです。」

―・・・わあ、なんて素敵な話だ。・・・五月蝿い。五月蝿い。五月蝿い。―

―ふと俺の予感が反応しなくなっている事に気付く。本当に何もない。俺にはその予感を信じる事ができなかった。―

―どうせなら、この死んでやり直したいと思える俺の体質を粉々に砕いてほしい。そういう意味を込めて―

「わかりました。」

―と言った。私の顔はこの世のすべてを諦め、あるかもわからない『次』を見つめる顔に近いだろう。―


該当する気配を遮断して、その時の本音を吐く。

私には善良な人間もいるのかと心が少し痛むが、私の友人の消滅の原因はすべてを制覇し頂点に君臨した人間である。すべての芽は、摘んでおかなければならない。


「綺麗ですね。」

遮断の必要はもうない。だってこれが本当の事だから。

この街から少し離れた丘の上。私とジャズと奴隷さん。そして名も知らぬ彼と夜景を見る。綺麗な星々だ。

ジャズの目は笑ってはいない。

奴隷さんの目は少しにっこりとしている。だが私にはその意図が正確に読み取れた。もう子供でも知っているのだろう。人が死ぬ事が。


「・・・すみませんでした。そして、さようなら。」

善良な人間だが、この世界に存在してはいけない人間だ。

私はもうすべて知っていて分かり切っている彼の頭をはねた。彼は満足していた。私は特別に墓を作り、弔う。

しかし。まだ仕事が残っている。夜も遅くなってきたが、この薄ら笑みを浮かべている青年に苦しめるように切る。

―なん・・・だ?―

―俺は違和感のある場所へ手を置く。―

―あーあ。やっぱりこうなるのか。―

―魔法、もっと使いたかったな・・・―

―直後、―

「あああああああああああああああああ!!!!あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

―実際には、―

「!?、、、!!!!!!!!!!!、!!!!!!!!!!!!」

―声を上げることすら許されず。―


「私にとっては貴様も『すべての芽』の一つだ。異物。」

―その声だけ聞こえるように痛めつけられ、聞き終わった直後に俺は死んだ。―


奴隷さんは本当は怖かったのだろう。私にも善良と不良の血が混ざり合いながら私に付いている。私は人間の尺度で見れば簡単に「殺人犯」と言われるだろう。

私は髪につけていた制限具を外し、体の汚れを神の力で流す。足元に行き場を失くし落された血が溜まる。


「奴隷さん。本当に申し訳ない事をした。」

「・・・いいよ。おねえさんはこれがおしごとなんでしょ...?」

「ああ、そうだ。」

「なら、これからも頑張って。わたしは、しっかりついていくから。」


この子は本当に強い心を持っている。

目の前で人が殺されてもそれが「おしごと」だと言い、更に私を励ます。


「・・・本当に私に付いて行かせるのが惜しいぐらいだ。」

「わたしね。本当はつよくなりたいの。おねえさんみたいにつよくなって、おねえさんを守りたいの。」

「そうか。主人の事はもう忘れたか?」

「あんな人。わたしをいじめて楽しむ悪人だよ。」

「だからお願い。わたしにもたたかいかたをおしえて。」

そこまで頼まれたら仕方ないだろう。


「分かりました。」


私はこの奴隷さんが自力で自分の身を守れるように、力を教える。

私の目は奴隷さんに向け優しく微笑んでいた。

神にとって世界に侵入した人間は基本的に重罪です。

世界に影響がない生活をしてくれるのなら、神は大歓迎なのですが、英雄的行動を取り、信仰心を奪われる結果になる『力のある異人』は積極的に排除すべき対象だと思っています。

世界のために普通に暮らしていくと誓った異人はその心に免じて許そうという考えも持っています。

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