第百九十四章 王都イラストリア 1.王国軍第一大隊(その1)
錯綜と混乱に満ち満ちた、長い討論会の始まりです。
イラストリア王国軍の剃刀と異名をとるウォーレン卿は考え込んでいた。
「シェイカー」を名告る謎の一団の正体について、先験的にⅩの一味だと決めてかかっていたのだが……本当にそう決め付けていいものかどうか、些か不安に陥っていたのである。
「……いや……と言うよりも、全てをⅩ一人に帰する事に無理があるのか……?」
ふと思い付いて、これまでのⅩの事績と目されるものを一覧にしてみる。ものに憑かれたようにそれを眺めているうちに、何となく何かが見えてくるような気がする。
これは――と思いかけたところへ、遠慮の無い闖入者が訪れた。
「よぉウォーレン、またぞろ閉じ籠もってるそうじゃねぇか。こんだぁ何に取っ憑かれたってんだ?」
卿の上司にしてイラストリア王国軍第一大隊長――兼、王国軍総司令官――のローバー将軍のご入来であった。
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「前に見せてもらったやつか?」
「はい。それに幾つか新たな情報を追加してあります」
一年目
・六月 モローに双子のダンジョンが出現。勇者パーティ全滅。
・七月 シルヴァの森でバレン男爵軍を撃滅。
・八月 ノーランドの関所を急襲。後に陽動と判明。
モローで鬼火のようなものが目撃される。
第一次ヴァザーリ戦。
・十一月 第二次ヴァザーリ戦。
二年目
・四月 モローに魔族が出現し、兵士を襲う。
・六月 モロー近辺で雷鳴らしき音が聞かれる。
・七月 テオドラムの冒険者一行が「ピット」というダンジョン付近で全滅。
・八月 テオドラムの冒険者一行が「ピット」というダンジョン付近で全滅。
モローでドラゴンが確認される。
・九月 シュレクにあるテオドラムの鉱山がダンジョン化。
・十月 テオドラムの部隊に何らかの異常が発生?
三年目
・三月 テオドラムの冒険者一行が「ピット」というダンジョン付近で全滅。
モルヴァニア、シュレクのダンジョン付近で砒霜汚染の低下を確認。
・四月 テオドラムの御用商人がシュレクのダンジョンに処刑される。
・五月 バンクス・サウランド・リーロットの五月祭でビールと砂糖が御目見得。
・六月 国境付近でモルヴァニア軍が鬼火を確認。
マーカスにスケルトンワイバーンが出現。
エルフが酒造ギルドに冷蔵箱の設計図を提供。
・七月 「災厄の岩窟」出現。黄金のゴーレムと銅製の屍体が発見される。
・九月 「災厄の岩窟」の岩山が増加。「岩窟」、ノーデン男爵軍を撃退。
・十月 ヤルタ教の二代目勇者が「流砂の迷宮」で消息を絶つ。
・十一月 テオドラム王国グレゴーラムで何か騒ぎがあったもよう。
四年目
・一月 バンクス・サウランド・リーロットの新年祭でビールと砂糖菓子が御目見得。
エルギンの新年祭でも一部の砂糖菓子が販売される。
・二月 エルギンのホルベック卿へ、ノンヒュームから古酒が提供される。
・三月 アムルファンでテオドラムの新金貨が贋金だと判明。
マナダミアに砂糖菓子店が開店。
・四月 シアカスターに砂糖菓子店が開店。
・五月 五月祭
ヴォルダバンの廃村アバンに「迷い家」が出現。
・六月 「災厄の岩窟」の傍に「誘いの湖」が出現。
テオドラムとヴォルダバンの国境付近に「シェイカー」が出現。
バンクスにクリムゾンバーンの革製品が登場。




