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第百四十八章 テオドラム 2.テオドラム王城(その2)

「……とりあえず、マーカスの動きについては今後の情報を待つとしよう。次の議題に進みたいが、構わんか?」



 レンバッハ軍務卿の問いかけに、一同が(うなず)いて同意を示した。



「新たに……と言うか、改めてグレゴーラムの司令官に着任したジーメンズ将軍から質問があった。ピットのモンスターが国境の林に進出したのは事実なのか、とな」



 軍務卿の言葉を聞いて、あぁ、そう言えばそういう話もあったな、と記憶を新たにする一同。正直なところ色々と問題があり過ぎて、モンスターの動向まで気を配るゆとりは無かった。ましてピットはイラストリアのダンジョン。イラストリア(むこう)がどうにかすべき問題だろう……。



「……いや、そういう問題ではないな……。すまん、少々混乱していた」

「なに、気にするな。ピットのモンスターの事まで考えたくないのは私も同じだ」

「ただ……現状ではピットのモンスターが我が国に越境して攻撃してきた事は確認されておらん。イラストリア(むこう)に責任を押し付ける事はできんだろう」

「で、実際のところはどうなのだ?」



 全員の意見を代弁したかのようなメルカ内務卿の質問に、レンバッハ軍務卿は不機嫌そうに頭を振る。



「あの一件の後で三回ほど斥候兵を放った。二回は異常無しと報告してきたが、一回は……」

「何か異常を見つけたのかね?」

「いや……誰一人帰って来なかった」

「…………」



 無論、そうなるように仕向けたのはクロウである。何かがいるのかいないのか、判断に困るような結果になるように、実質的な情報を何一つ与えないように、クロウはフェルとダバルに指示していた。



「それはまた……」

「何とも判断に困る話だな……」

「イラストリア側では? 何も騒ぎは起きていないのか?」



 ラクスマン農務卿の質問には、軍情報部を預かるレンバッハ軍務卿だけでなく、新設の経済情報局を預かるマンディーク商務卿、そして外交官からの情報を統括するトルランド外務卿も首を揃って振った。



「確認された限りでは、イラストリアにそのような動きは無い」

「ピットの周辺ではどうなのだ?」

「同じだ。特に普段と変わったところは無い」



 ふむ、と考え込む農務卿。他の面々も困惑を隠せない。



「……何となくだが……これ以上斥候を放っても、有益な情報は得られないような気がするな」

「ラクスマン卿……?」

「ダンジョンマスターが指示して、こちらに手の内を見せないようにしているのかもしれん」



 さらっと不吉な台詞(せりふ)()いた農務卿に、居並ぶ国務卿たちが鋭い視線を巡らせる。



「……ラクスマン卿は、背後にダンジョンマスターがいると?」

「最悪の可能性ではあるがね。その場合に備えておくべきだと思うのだよ」

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