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第三百十四章 湖の秘密~第三幕~ 5.怪獣大決戦~空より来たるものvs水底に棲まうもの~(その2)

「大魚って……アレの事かよ……」

「また……随分と(いか)つい顔をしてるもんだ」

「あんなん、どうやって釣り上げようってんだ?」



 紡錘形の頭部の先に口がある――という大方(おおかた)の魚のシルエットからは懸け離れて、野球のバットのように切り落とした形の頭部に、不釣り合いなほど大きな口が開いている。可笑(おか)しな(たと)えになるが、爪切りのような形を想像してもらえれば一番近いだろう。

 頭胸部は装甲板を繋いで成形したような、見るからに堅牢そうな作りになっているが、切れ切れに(かい)()見える身体の後半部は細長く、尾端にいくにつれて側扁、つまり左右から押し潰したように平たくなっており……



『ダンクルオステウスの頭をしたリュウグウノツカイ?』

『コンセプトはそうだな』

『アレって、昔は、ディニクチスとかいってませんでした?』

『何か知らんが分類体系の見直しがあって、名前が変わったみたいだぞ』



 精霊たちが最初に見せた「怪魚」はそこまで詳細な設定を詰めていなかったのだが、今回は大観衆の前でのお披露目(ひろめ)とあって、それなりに(しっか)りした設定を固める必要があった。

 実在の魚種をただ大きくしただけでもいいのではないかという意見も――例えば精霊樹の爺さまなどから――出されたのだが、それではつまらないという意見と、実在の魚種の生態情報などから矛盾点を突っ込まれるのは嫌だというクロウの主張もあって、新たに設定する事に決められた。

 しかし、完全に一から造形するには時間が惜しいという事で、実在する或いは実在した種を参考にしてでっち上げる事になり、その際モデルとして選ばれたのが上述の二種という事なのであった。


 あまり凝った造形をやっている暇が無いという事もあり、それぞれの前半部と後半部を()()ぎするという手抜きで仕立てたのだが、



『意外とチグハグには、見えませんねー』

『前と後ろでかなり質感が違う筈なんだがな……実物は』

『今回は……相違点を上回る……共通点が……ありますから』



 ――そう。

 今回お目見えの大怪魚は、キメラ的な()()ぎ感などものともしない一貫性を有していた。即ち……



・・・・・・・・



「お、おぃ……あの魚って……水――だよな?」

「……少なくとも、水でできてるように見えるな」



 ――これである。


 (そもそも)この怪魚誕生の経緯(いきさつ)というのが、〝侵入者を追い払うため、精霊たちが水を操って怪物を(かたど)って脅かした〟事に(たん)を発している。

 その流れを踏襲した今回の「大怪魚」も、当然ながら水の身体を持っていなくてはならぬ。そうでないと水精霊たちが操れないではないか。



 ()くして、骨の身体を持つ空のグレータースケルトンワイバーンと、水の身体を持つ湖の大怪魚が、衆目の前で()(けん)()けて相見(あいまみ)える事になったのである(笑)。


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