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第三百十四章 湖の秘密~第三幕~ 3.湖底に潜むUMA

 改めて述べておくがクロウたちの狙いは、なるべく多くの釣り馬鹿どもを脅し付け(おび)えさせ追い払う事にあるのだから、「(いざな)いの湖」の悪評(?)は速やかに、かつ隅々まで広く伝わる事が望ましい。となれば必然的に、本作戦の対象となる釣り馬鹿どもも、多ければ多いほど好都合である。

 ならば最大限の効果を得るためには、仕込みの時間を充分に取って、ターゲットとなる釣り馬鹿どもをなるだけ多く掻き集めればいい……という事になる。


 幸か不幸か今現在の「湖」周辺の状況は、このところ新たな動きが無い事もあって、概ね沈静した状況にある。しかし幸いな(?)事に、湖の周辺には諦めの悪い釣り馬鹿たちが虎視(こし)眈々(たんたん)と居座っており、ちょっと燃料を投下してやれば()ぐに再燃するのは明らかであった。


 なら――後は必要な時に必要な所で、必要な燃料を投下してやるだけだ。



・・・・・・・・



 このところ「(いざな)いの湖」では意味深な、そして釣り馬鹿たちの興味をこの上無く惹き付ける噂が幾つか、(いず)れも密かに(ささや)かれていた。

 例えば――



〝「湖」には悠久の時を生きた古代の大魚が棲息しているらしい〟



 〝悠久の時を生きた大魚〟が何故(なぜ)、誕生して間も無い「(いざな)いの湖」に棲んでいるのか……などと突っ込む釣り馬鹿はいない。そこにいるからいるのである。

 それに第一(くだん)の「湖」は、一夜にして誕生したという不可解極まりない経緯の持ち主なのだ。どんな不思議や矛盾点があってもおかしくない。(そもそも)近くにある「災厄の岩窟」の地下には豊富な地下水脈が通っているというし、そこと繋がっている可能性もあるではないか。なら、(くだん)の大魚がそこからやって来たのではないとどうして言える。


 テオドラムが聞いたら頭を抱え込む事間違い無しの解釈であったが、この時は大魚の噂が先行して、釣り馬鹿をはじめとする民衆たちの注意関心を惹き付けてくれたので、話が砂金に飛ぶ事は無かった。

 それというのも、大魚の噂はこれ一つではなかったのである。



〝大魚の全身を見た者はいないようだが、()(びれ)()(びれ)らしきものが目撃されたり、或いは不自然な波や(みず)飛沫(しぶき)が上がるのが目撃されている〟



 ……厳に立ち入りを制限されている「(いざな)いの湖」に、その「目撃者」たちはいつどうやって潜り込んだのか……などという点には突っ込まないのがマナーである。



〝目撃された部分々々の様子から判断して、それはそれは大きく見事なもののようだ。しかも、どうも大魚は一匹ではなく、大小複数の個体がいるらしい〟



 もうこれだけでも世の釣り馬鹿どもの関心と衝動を(あお)るに充分であったが、更にこれに加えて――



〝「湖」のところどころで何か大きな(みず)飛沫(しぶき)が上がっており、段々とその頻度が高まっている〟

〝「湖」に棲息する大魚(仮)の活動が、このところ高まっているようだ。何かが近付いているのを感じているようにも見える〟



 そして――



〝巨大な魚がいる以上、それを捕食する超巨大な何かがいてもおかしくない〟



 ――という不安を掻き立てるような噂とともに、



〝その巨大魚を釣り上げる事は、(いるかもしれない)超巨大な捕食者の襲来を防ぐ事に繋がるのではないか?〟



 ……という、斜め方向から釣り馬鹿を容認、或いは援護するような論調もみられるようになっていた。



 果たして巨大魚はいるのかいないのか、それを釣り上げようとする行為は()()か。

 様々な意見が錯綜(さくそう)して広まる事によって、この問題に関する興味・関心・野次馬根性が、否も応も無く高まっていく。



 そして――雲一つ無く晴れた晩秋の或る日、予想外のゲストの来演とともに、決定的な舞台の幕が切って落とされたのである。


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