第三百十四章 湖の秘密~第三幕~ 2.紛糾する企画会議(その2)
至近距離で熱気や物音(怒号・罵声を含む)、時には飛沫などをその身に受けて観戦した方が、その迫力に呑まれる事は請け合いである。一同がそう納得しかけたところで、
『あっ! 砂被りで迫力って言うんなら、砂の方を派手に飛ばしてもいいのかも!』
『『『『『――は?』』』』』
……唐突な思い付きによってその流れを掻き乱すのもまたキーンである。
毎度ながらその突飛な発想に、困惑の色を浮かべる眷属たち。いや確かに、理屈から言えばそういう展開も成立し得るだろうが……
『それってぇ、場外乱闘ってやつぅ?』
『場外乱闘……』
『少し……違うような気がいたしますな』
『寧ろ……至近弾の……爆発に……巻き込まれるというのが……正しい……比喩かと……』
『至近弾……』
『あぁ、振り回した凶器がすっぽ抜けて観客に当たる的な?』
『重大インシデントじゃないのよ……』
『いやシャノア、「インシデント」っていうのは〝ちょっとした事件〟という意味で使う事が多いから、この場合その言い方は不適当じゃないか?』
『……そういう問題ではなかろうが』
『ご主人様……英語では……〝major incident〟という……言い回しも……ありますから……必ずしもそうとは……言えないかと……』
『む、そうだったか』
『だから……そういう問題ではないじゃろうが』
例によって例の如く、頓珍漢な方向へ議論が迷走しかけたが、
『しかし、それだと釣り馬鹿以外にも危険だと見做されませんか?』
――と、良識派のペーターが議論を本道に引き戻した。
確かに、クロウたちとしては釣り馬鹿どもを撃退できればいいだけで、無辜の市民に要らざる不安を与えるような事は望ましくない。なので、
『やっぱり釣り馬鹿たちを、リングサイドに連れて行くしか無いんじゃない?』
……と、議論は妥当なところへ落着する。
些か紆余曲折のきらいはあったが、アレはアレなりに必要なプロセスだったのだろう。
さてそうなると、これを起点として新たな方策を練らねばならない。厄介千万な釣り馬鹿どもを、周囲に無用の不安を撒き散らす事無く、「誘いの湖」に引っ張り込むにはどうするか。
『また鬼火たちの魅了を使う?』
『いや、ダンジョンじゃない筈の「誘いの湖」に、鬼火が出たら変だろう』
『それもそっか』
ではどうするべきかとなったのだが、こういう時に知恵を出すのが軍師格の三名こと、クリスマスシティー・ネス・ペーターのトリオである。
『提督、やはりこの場合は純然たる宣伝戦として、釣り馬鹿どもの好奇心――と言うか欲望を煽ってやるのが一番かと』
『ふむ……予め怪魚の噂を広めてやるか、或いは思わせ振りに湖面から跳ねる姿を見せ付けるとか』
『その話を面白可笑しく広めてやれば……』
――釣り馬鹿どもなら一も二も無く喰い付くだろう。




