第三百十四章 湖の秘密~第三幕~ 1.紛糾する企画会議(その1)
『さて――あれやこれやの飛び入りアクシデントのせいで延び延びになっていたが、本格的に釣り馬鹿対策に着手しようと思う』
厳かな中にも決意を籠めた口調のクロウの宣言は、眷属たちによる満場の賛意を以て迎えられた。
クロウの言うとおり〝あれやこれやの飛び入りアクシデント〟に引っ掻き回されはしたが、それでも「カタコンベ」にはテオドラムの冒険者を引き込む事ができたし、テオドラムのシュレク砦は――少しずつではあるが――工事を再開した。まずは重畳の次第と言ってよい。
そんな中で、謂わば喉に刺さった小さな小骨が、性懲りも無く「誘いの湖」に侵入しようと図る釣り馬鹿どもであった。
クロウが精霊門の設置場所・兼・ビオトープとして位置付けている「誘いの湖」に、遠慮も作法も投げ捨てて吶喊しようとする不埒者ども。その所業だけでも充分有罪に値するが、そやつらが迷惑をかけている相手がマーカスというのがまた宜しくない。
テオドラムに敵対しているマーカスは、クロウの視点では潜在的な友軍である。その苦況を、見て見ぬ振りなどできようか。
……というのがクロウ一味の総意であったから、不埒な釣り馬鹿どもを追い払うというのは既定の方針となっていたし、その手段と内容についても粗方の検討が進んでいた。
ただしそれでも尚、幾つかの問題が未解決のまま残されていたのである。
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『釣り馬鹿どもを心底震え上がらせて湖に立ち入らないよう躾けるには、やつらに操演を見せなきゃ始まらん』
ベジン村での成功体験に鑑みて、今回も同じ伝で臨むという方針が早々に立てられた。だが、前回のベジン村と今回の「誘いの湖」を比較すると、大きく違っている部分があった――観客と舞台との距離である。
操演の迫力を以て釣り馬鹿どもの意気を阻喪せしめ、「誘いの湖」内への侵入を抑止する……というのがクロウらの計画の眼目なのだから、馬鹿どもに操演を見せ付けるのが計画の第一段階となる。
ところが……マーカスが湖を封鎖してくれているせいで、それが難しくなっていた。
いや、その事自体に文句は無いし、自然保護の観点からも望ましい対処である事は理解する。
ただ、繰り返して言うが今回の計画に関しては、それが裏目に出ているのだ。どうやって演し物のお披露目を果たすべきか。
『えーと、遠くからでも能く見えるように、大っきくするのはどうでしょう』
『それだと労力が酷い事にならんか? 基本的にはCGより操演に近いんだから、大きなものを動かそうとすると大変だぞ』
『そこはもう仕方がないと割り切るしか』
『精霊たちもやる気充分でございますしな』
スレイの台詞を肯定するかのように、精霊たちはいつもより多めに光ってやる気を見せる。が――
『やっぱりさぁー、何人かは砂被り席にご案内しないと、迫力ってものが伝わらないんじゃない?』
――というキーンの言葉に精霊たちも考え込む事になった。
仮令その観客が釣り馬鹿どもであろうとも、渾身の操演を見てもらう以上、やはり迫力を感じてもらわなくては物足りない。それは確かに一理あるし、
『砂被り……ですか……』
『ぇっとぉ、リングサィドの事ぉ?』
『確かに、間近で見た方が迫力は伝わるよね』




