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第四話ブラックノヴァ

 二十一世紀末、それは唐突に現れた。標高千メートルクラスの山体と同規模の質量を持つと推定される隕石が、月の軌道とさほど遠からぬ位置にいきなり姿を現したのだ。太陽系内の遊星で、隕石となって地球に落下した場合に相当な被害の発生が予想されるレベルの大きさの物は、各国の天文台の観測活動によって、土星の軌道圏にある段階でほぼ捕捉されているハズだった。想定の何百倍もの超々巨大隕石が、月の軌道の近くに来るまで見逃されるなんてありえない。しかしそれは現にあって、地球に落ちてこようとしている。

 それは、科学者たちが、こんなのが落ちてきたら大変大変だと想定していた、隕石衝突の最悪のケースの百倍規模。大変なんてレベルではない。まさに人類存亡の危機。民衆からは核ミサイルで迎撃しろという声がヒステリックに上がったが、いざという時に敵国を殲滅するための武器である核ミサイルで、宇宙から降って来る超巨大隕石を迎撃するなんてプロジェクトが、そんなに短期間に出来るわけもなく人類は迫りくる滅亡の危機を前に、祈るしかなかった。

 しかし、大気圏に入ると、超巨大隕石は落下のスピードを落とした。それは空気抵抗などではない、もっと遥かに大きな減速で、なにかの特別な力が働いてなければ起こりえない現象だった。

 そして空を割って降りてきたのは、SF映画に出てくるような巨大宇宙戦艦ではない。どこかの宇宙空間をゼリー状にして切り取ってきたような漆黒の塊だった。白昼の空に夜の染の広がり、広大な影を落として、ソレはゆっくりと降下してきた。人々は逃げまどい、人間よりも異変の到来を察知することの早い動物たちは、鳥も獣も既に大移動していたのである。

 白昼に夜の虚空の沈むように、それは静々と降臨して、まるで実体の無いもののように、なんの衝撃もなく着地した。ただその瞬間、周囲の人や動物や石や枯れ木や大地に根を張らない様々なものが宙に浮いた。無重力状態のようにフワフワと空中を漂い、四五分もしてゆっくり着地して、ケガ人もなかった。そして気がつけば、漆黒の大城塞が大地に出現していた。

 外壁の高さ二十メートル、外周五十キロにも及ぶ巨大構造物は、不時着した宇宙船というよりは鉄壁の要塞であった。一瞬のうちにこれだけの超巨大構造物を出現させるとは、超絶、神の領域のスーパーテクノロジーである。

 巨大構造物はブラックノヴァと名付けられて日本と、安保条約を結んでいる米国両政府の共同管理となった。世界中の関心は、ブラックノヴァの内部にいるハズの宇宙人へと集まった。しかし、ブラックノヴァから宇宙人が姿えお現すことはなく、その存在は着陸から二世紀近く経っても謎のままであった。

 宇宙人は姿を現さないが、ブラックノヴァと日本政府との間には意志の疎通があった。ただしその方法は国家機密とされて、現在に至るまで明かされていない。やがてブラックノヴァの近くに、日米政府の運営する研究所が建てられた。研究所には、不定期に贈られるノヴァからのギフトが運び込まれた。やがて研究所からは、それまでの科学技術の限界を超えた、様々な分野での製品や成果が発表され出した。当然ブラックノヴァの科学技術の後ろ盾があってこその成果であった。

 このままでは、やがて軍事と経済でブラックノヴァを後ろ盾とする日米に圧倒されることになると考えた、日米を除いた先進国の首脳たちは、ブラックノヴァを奪取すべく、有志連合を結成した。その第一の標的とされたのが東京である。

 米国への攻撃はリスクが大きいのと、ブラックノヴァへの攻撃も、自分たちの欲しいブラックノヴァを損壊したくないので避けられた。もっとも、人類の核ミサイルで、ブラックノヴァを損壊できたかは疑問だが。とにかく、首都を潰してから北海道に上陸、ブラックノヴァを管理下に置く作戦だった。そして、人類史上最大規模の核攻撃が東京を襲ったのである。もっとも、かなり以前から、東京は危ないとネットなどで噂が流れていて、住民の大移動はとうに始まっていて、東京は消滅したのだが、犠牲者の数は、想定されたものよりもずっと少なかった。だが、そんなことよりも有志連合の想定外だったのは、ブラックノヴァが反応したことであった。

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