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地獄耳のジャスティーナ 〜音量調節魔法は意外と結構、強いです!?〜  作者: 彩紋銅


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25休日

 ◆◇◆


 三日ほどが経ち、私たちはターフ子爵との面会を希望しましたが、またしても傷心を理由に断られてしまいました。

 念のため、護衛をつけるとの連絡も無下にされたようです。


「ふむ。パーシーが探ってきた情報によると、ティモシー・サップは確かに裏組織との繋がりがあった。いわゆる裏ギルド的なところだな。

 金貸しはもちろん、人身売買や違法薬物にも手を出していた組織だったので、その組織もついでに潰しておいた。

 金貸しの方の顧客情報には、ピエリス子爵の名前もあったな」


 い、いつの間に……。


「ミック・サプリングはどうやら浮気していたようでな。それを理由に強請られていたようだ」


「う、浮気、ですか?」


 え? あれ? ピエリス子爵家を陥れたことではなく?

 あ、それは別件ですか。


「ああ。相手は同じ職場の部下だったそうだ。ちなみに、男」


「男!?」


 ひぇぇ〜、そりゃバラされたくないかもしれません。


「といっても、愛はなく弱みを握られて無理矢理関係を結ばされたらしい。

 その男本人に話を聞いたのだが、ミックは金を渡せば、書類の改竄などもする奴だったそうだ。男は金がなかったため、体を差し出したらしい。

 まあ、そういう人物なら、金を積まれればピエリス子爵の書類を改竄するくらいやるだろうな」


 な、なんと……。あの、聡明なエディくんのお父様が、そんな人だったなんて……。

 エディ君には、なんて伝えればいいのでしょうか?


「そのほかの方々は?」


「ターフ子爵、ダニー・モス、イーモン・ファーンについては、まあ、結構な悪行をしていることが更にわかっている。

 内容は、まあ、イーモンが言っていた通りだな。あれの三倍はヤバいと思ってくれ」


「ええ……」


 イーモン様が言っていたのは、酒と賭博と女性。それらで色々とやらかしていたそうな。


「だが、ピエリス子爵に対しては、これといった確執は見つからなかった。

 強いていうなら、助けを求めたピエリス子爵の長女を追い返したという証言はあったが、ダニー・モスとイーモン・ファーンが関係しているかどうかは不明だな。

 これは、ターフ子爵に直接聞かないとわからないかもしれない」


「もう攫って、直接聞いた方が早いんじゃないっすか?」


「そういうのはダメだ。それで『鴉』が無くなったのを忘れたか?」


「……すみませんっす」


 そういえば、特殊諜報部隊『鴉』って……。

 いえ、今は関係ありませんね。


「とにかく、ターフ子爵は引き続き、護衛をつける交渉をする。落ち着いたら話を聞かせてもらおう」


 そういうことに決まりました。


「さて、ジャス。君は休暇だ」


「え? 休暇、ですか?」


「そうだ。この仕事を始めてから、一日以上休んでいないだろ?」


「そういえば、そうですね……」


 この国は週休二日が基本ですが、土曜日は仕事をしても休んでもいい日となります。学生なら授業は無いですが、自習を自由にできると言った感じです。

 仮面舞踏会の翌日以外は、週六日出勤していました。邸宅()にいても暇なので……。


「というわけで、三日ほど休め。会えないのは寂しいが、仕方がない!」


「あはは……」


 というわけで、いきなり明日から休日となったのでした。

 さて、何をしましょうか……。


 ◆


「出かけますよ! お姉様!!」


「んへぇ?」


 ぐっすり眠っていると、部屋の扉が勢いよく開いて妹のルイザが登場しました。

 朝から元気ですね……。


「まだ、朝の四時ですわ……」


「準備に時間がかかるでしょ! さあ、起きてください!!」


「ええ……?」


 布団を剥ぎ取られたので、仕方なく起きることにします。


「今日、お休みなのですが〜」


「だからよ! わたくし最近、お姉様と遊んでいないわ!!」


「お仕事でしたからね〜」


「でも、土の日は仕事で、陽の日は疲れて、全然遊んでないわ!!」


「そうね〜」


「というわけで、お出かけします! ショッピングですわ!!」


 そういうことになってしまいました。


 ◇


「今日は、スターチャームの新作を見てから、ドレスを見て、最後にカフェに行きます! 午後は植物園に行きましょう!!」


「あらあら、予定ぎっちりですね〜」


 準備ができたので、早速出発。

 久しぶりに、侍女たちに身なりをきっちり整えられましたわ……。


 そういえば、お洒落をするのも久しぶりですね。

 出勤する時は、作業がしやすい格好をするので、どうしても地味になりますから。

 まあ、外出するので動きやすい平服ではありますけど。でも胸元にはお気に入りのブローチをつけています。

 噂話がいつどこに転がっているかわかりませんからね!

 それと()()()もポケットに忍ばせておきます。何か良いことが起きるかもしれませんし!


 というわけで、まずは王都南部の商業地区に向かいます。


「まずは、スターチャームですわ!」


 スターチャームは若い女性に人気の、アクセサリーブランドです。

 その名の通り、星をモチーフにしたアクセサリーを、多く売り出しています。

 しかも比較的安価で、夜会につけて行っても見劣りしないデザインが多いのです。


「本店は予約しないと、人が多いですからね!」


 午前中は予約制です。大抵の貴族向けの店はこんな感じですね。午後予約する場合は、別料金がかかります。

 まあ、大抵の貴族は家に呼ぶのが普通なのですけどね。

 というか、予約をとっていたから、朝早くから準備したのですね〜。


 ここでは、お揃いで色違いのペンダントと、イヤリングを購入しました。

 私は赤が好きで、ルイザは青が好きなので、石はどうしてもその色になってしまいますね。


「次は、ドレスを選びますよ!」


 次に来たのはドレスの仕立て屋。

 ……ってここ、エル様とパーシーさんと来たお店ですね!


「ここは、ドレスブランド『ムーンライト』の本店ですよ! こちらも予約しました!!」


「そ、そうなのね〜」


 ちなみに、作ったドレスは私の部屋のクローゼットの奥に封印されています。いろんな意味で、二度と着ることはないでしょう。


「いらっしゃいませ〜。あら、ジャスティーナ様!」


「どうも〜」


「え? お姉様、来たことあるのですか?」


「ええ、まあ……」


「先日、エルドレッド殿下と一緒に、来ていただきましたねぇ」


「ああ、お仕事の! お姉様はエルドレッド殿下と婚約するのでしょう?」


「ええ!? 何を言っているのです、ルイザ!」


「でも、エルドレッド殿下って、親しくない人にはツンケンしてて、基本的に塩対応らしいですよ?」


「ええ? そうなんですか?」


 私の場合、最初の頃から比較的、ニコニコ・キラキラしていましたけど……。


「それで、一時期、『氷結の若葉』なんて呼ばれていたそうです」


「氷結の若葉……」


 十代半ばの男の子が、好きそうなフレーズですね〜。


「でもお姉様にはそうじゃないみたいですし、ここはもう、婚約するしかないかと! 

 そして、できれば我が家を継いでください!」


「無茶言いますね……」


 流石にないと思いますけどね〜。

 というか、ルイザは魔獣の解体をしたくないから、そんな事言っていますね?


「さあさあ、エルドレッド殿下のこともいいけど、ドレスも選んでくださいね」


「そうでした!」


「お姉様はどんなドレスにします?」


「よければ、先日選んだものよりも、よりセクシーなドレスもありますが……」


「それは遠慮します!!」


 ここでは仕事着にできそうなドレスを、選ばせていただきました。


「本当にそれでいいんですか?」


「ええ。滅多に着ないものより、いつでも着られるものの方がいいじゃない?」


「そういう考え方もありますか……」


 ルイザは、冬用の平服用のドレスを購入したようです。

 長袖で、白地に青で花模様の刺繍が施されていて、とても素敵です。


「次はカフェに行きますよ〜!」


 気が付けばお昼近く。

 ショッピングって意外と時間がかかりますよね。


「といっても、特に場所は決めていないのですけど!」


「だったら、良いお店がありますわ。場所は東部になってしまうのですが……」


「この後は北部の植物園に行くので、丁度良いです!」


 というわけで、そのお店に向かいます。


 ◇


「いらっしゃいませ〜。あれ、この前の!」


「どうも〜」


 夕暮れカフェに行くと、開いていました。良かったです。

 カールさんが出迎えてくれます。


「来てくれたんですね! ありがとうございます!!」


「ええ。今日は、妹と来ました」


 一度来ただけですのに、覚えていてくれたんですね。

 まあ、エル様が目立っていましたからね。


「ありがとうございます! 今日は予約少ないんで個室空いていますけど、どうします?」


「では、そちらでお願いします」


 個室に案内され、一息つきます。


「よく知っていますね。こんなお店」


「エル……ドレッド様や同僚の方々と、来たことがあるだけですよ」


 流石に仕事以外でエル様と呼ぶのは、よくないですね。


「お姉様、充実してますね!」


「あはは……」


 ルイザはフルーツタルトとレモンティーを、私はキャラメルナッツのタルトとミルクティーを頼みました。


「おまちどうさま〜。こちらはサービスでっす!」


 注文したメニューの他に、小さなクッキーがたくさん入った小さな袋をいただきました。


「ありがとうございます」


「わ〜、かわいいですね〜」


「いえいえ。良い思い出になりましたから、お礼です!」


「そうですか?」


 なんのことかは分かりませんが、それなら良かったです。


 タルト、とても美味しかったです。


 ◇


 この後は、北区にある植物園に行く予定なのですが……。


「あら?」


 お店を出ると、近くの路地に誰かがいるのに気が付きました。

 体調が悪いのか、座り込んでいます。


「おや、病人ですか?」


「どうでしょうね……」


「あ、お姉様!? 流石に近づくのは……」


「あら? この方……」


 そこにいたのは、ベンジャミン・ターフ子爵──その人でした。








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