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【コミカライズ配信中】康太の異世界ごはん  作者: 6k7g/中野在太
第四章 踏鞴の一統

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めざめた夜に

8/6更新 5/5

 目をあけると、真っ先にとびこんできたのは、はんびらきの口だった。

 近いよ榛美さん。

 いくらなんでも近すぎるよ榛美さん。

 なんか僕の頬がじっとりと湿ってるんだけど、これもしかして榛美さん……


「そうだ、松切り番さん!」


 体をがばっと起こしたら。


「寝てろ、ばかやろう」


 鉄じいさんの声がした。


「てめェ、うわごとで蒸留酒の話ばっかりしてやがッたぜ。おかげで俺まで傷の治し方を覚えちまッた。

 安心しやがれ、あのガキは、俺がしっかり治療してやッたさ。連れ出すのは無理だったけどな」

「そうですか、よかった……」


 ふたたび体を横にする。

 全身が痛い。


「……悪い、白神。オレのせいだよな」


 部屋の隅っこの方から、ばつの悪そうな声。


「そうだ、このドラ息子」


 ぽかりという、悠太君が頭をなぐられた時の音。


「悠太君……讃歌さんも」

「ああ。悠太に話を聞いてな。白神様が戻らねえんだったら、村の衆で領主館まで押しかけてやるつもりだった。

 そこに鉄じいさんと榛美ちゃんが戻ってきて、事情を聞くなり二人して飛び出してったってわけだ」

「すみません、ご迷惑をおかけしました」

「そうだおめえ! 踏鞴様のところに行くなんておめえ、物知らずが過ぎるってもんだぞおめえ! こっちはおめえ、見捨ててやるつもりだったんだからなおめえ!」


 足高さんが、ここぞとばかりにどなりまくる。


「うるせえ、静かにしやがれ。てめえが一番慌てて、鎌持って飛び出したんじゃねえか」


 讃歌さんにぴしゃりとたしなめられた足高さんは。


「そ、そりゃおめえ、そりゃあ……そりゃあおめえ、白神になにかあったらおめえ、踏鞴様の首なんておめえ、稲刈りの要領でおめえ……」


 凶悪な言葉を尻すぼまりに吐いてから。


「と、とにかく、し、し、心配するじゃねえかよお!」


 どもりながら絶叫して、泣きはじめてしまった。


「大袈裟な奴だな、全く」


 讃歌さんは苦笑してから、僕に向き直ると、深く頭をさげた。


「白神様、こりゃあ俺たちのせいだ。もっときちんと、白神様にも悠太にも、踏鞴様について言い含めておきゃあよかった。すまねえことをした」

「みんなのせいじゃありませんよ。これはぜんぶ、僕が招いたことです」


 悠太君は、ただ、給地の幸せを願っていただけで。

 村のみんなは、まさか僕が領主館に飛び込んでいくだなんて思わなかっただけで。

 これは僕の失敗だ。

 文句のつけようもなく、僕の完全敗北だ。


「それで? 結局のところ、何がどうなってこうなったんだ? 鉄じいさんは話しちゃくれねえし、悠太も詳しくはしらねえと来た。

 白神様に訊ねるしかねえんだよ」


 と、鉄じいさんを横目にしながら、讃歌さん。


「ええと、鉄じいさん……かまいませんか?」

「好きにしろィ」


 仏頂面でオッケーをいただいたので、何があったのかを語りはじめる。



「はあ……そりゃあ、なんていうか……」


 話を聞きおえた讃歌さんは、まずまず当を得た言葉をもごもごとつぶやいてから、


「ええと、つまりだな、その……あああ!」


 いきなり鉄じいさんに向かって土下座した。


「そ、その、前領主様におかれましては、た、た、大変申し訳ねえことを……!

 しらねえこととはいえ、領主様のお孫様を、棒で小突きまわして、追っ払っちまうような真似をしちまいまして!

 村人一同にかわりまして、も、も、申し訳ねえ!」


 鉄じいさんはため息をついた。


「てめェらこれまでさんざんジジィをこき使いやがッて、最初に出てくる言葉がそれかよ?

 いィ、いィ、気に病むンじゃねェ。俺ァただの鉄打ちよ。息子に斬られて沼までおめおめ逃げのびた、惨めなただの鉄打ちよ」

「斬られた……? 踏鞴様が、鉄じいさんを斬ったってのか? ああ、だめだ、わけがわからねえ。白神様、あとは頼んだ」


 え、そんないきなりパスもらっても。


「あの、鉄じいさん。

 この村に、なにがあったんですか?」


 シンプルな質問を、ぶつけてみる。


 鉄じいさんはあごひげをひねって、鉄色の瞳を僕に向けた。


「くだらねェ話だ。男が一人、女に捨てられたってだけの話さ――」

第四章おしまい。


それほど間をおかず、やや短いエピソードである

『第四.五章 踏鞴家給地のいまむかし』

を投稿いたします。

投稿開始の際は、活動報告にて告知させていただきます。

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