34.決戦・2
「我、魔力を対価に乞う、雷よ!雷光になりて、集い我の行先の彼方を穿て!
〈ボルテックス・ランス〉」
呪文を呟き、アーツを発動させた。
迸る激しい雷撃が正面に翳した手の平から放たれた。
〈ボルテックス・ランス〉
雷魔法の初期アーツ〈サンダー・ショット〉の強化版にあたるアーツ。
〈サンダー・ショット〉の特性を残したまま、威力が上昇した三階級の魔法だ。
呪文詠唱を紡ぐことによって生じた現象が、こちらに向かって飛来する岩石を砕く。
連続して同じ魔法を放つために再度、呪文を呟く。
その詠唱速度は世辞でも滑らかとは言えず、流暢では無かった。
周囲で魔法を放つプレイヤーとの差は、段違いで見るに見かねる。
魔法スキルのアーツには階級があり、初期で使用出来るアーツには、呪文の類いは基本的に存在しない。しかしある一定レベルの魔法には、魔法を使うには呪文詠唱をする必要性が出て来る。
呪文の長さは、魔法の階級によって変わる。
三階級の魔法は、大体30文字程度。二階級は、15文字ほどだ。
慣れてくると歌うように諳んじて、詠唱できるが僕は魔法を使うようになって日が浅いため、視界の端に映る詠唱文を呟いていた。
そのため周囲の第二部隊、つまり魔法をよく使うプレイヤーと同様の速さでは魔法を行使することは出来なかった。
それでも必死に呪文を紡ぎ魔法を放つ。放つたびに減少するMPと疲労が襲う。飛来してくる岩石を砕きながら、〈アースフォート・アルケロン〉を観た。相変わらず回転しながら、岩石を放ち続ける亀は、こころなしか段々と回転速度と移動速度を上げている気がする。しかし如何せん対象物が大きい所為か、そんな事は錯覚だと思った。
魔法を放つたび、亀との距離が縮まっていると感じながら、一歩一歩着実に後退りをする。
◇◇◇◆◆◆◇◇◇
「プッハァー」
MPを回復させるポーションで、喉を潤わせて大きな息を吐いた。
劣勢に観えた戦いは、いまは一進一退の攻防に変わっていた。
あれからしばらくの間、岩石を迎撃するだけに留まっていたプレイヤーに補給物資が届いた。届けてくれたのは、最初に撤退した第一部隊のプレイヤーだ。
その物資を活用して、疲弊したプレイヤーが息を吹き戻し、再び戦闘に加わった第一部隊のプレイヤーのおかげで余力が生まれた。
そして徐々にプレイヤーが放つ攻撃が、飛来する岩石の数を上回り始めて〈アースフォート・アルケロン〉にダメージを与えていく。
それからまた少し経った頃、〈アースフォート・アルケロン〉のHPが黄色……全体の50%まで減ったとき変化が起きた。
回転する亀から、甲羅に引っ込めたはずの身体が出て来た……それと時を同じくして、回転していた身体がゆっくりと……止まろうとしていた。
左回りで顔の位置が東から南に回って来たとき、口を大きく開いていた。
その口内には、光り輝く粒子が蓄えられていた。
亀の顔がプレイヤーを真正面に捉えたとき、蓄えられた粒子が放出された。
「「「「「デッュュューーーンンン」」」」」
フィールドに空気を切り裂く光の奔流が奔り、視界を光が埋め尽くした。




