3.修練所にて旅路への支度
「ここだ!」
ソロクさんに案内された部屋には射撃場だった。
「修練モード!タイプ弓」
台座の前で、イソロクさんは呟く。すると見慣れた弓道場に切り替わる。
「さぁこれ使って、ちょっと射てみな!」
と言って、いつのまにか取り出した弓と矢筒を放り投げてくる。
僕は慌ててキャッチして、射位の場所へと移動する。
一本の矢を、矢筒から取り出し弓を手に持つ。
そして深く深呼吸し、弓を構え…的に集中して弦を引く。矢を放つ。
この一時は自分の時間が止まって、世界の一つになったかの様な錯覚を覚える。
固定された世界で矢を離した。そして時間が動き出す。
次の瞬間、矢は吸い込まれるように的に刺さり「シュトン」と音を立てていた。
矢は的中とはいかなかったが、中心から少々離れた場所に刺さる。
「なかなか旨いじゃないか!しかしスキル補正やステータスを
設定していないのに、よく的に当てられたな…これなら弓スキルが
習得できるようになっているはずだ、メニューを開いてみな!」
と言われメニューを開く。
新しいスキルが習得可能ですと、システムメッセージが表示された。
〈弓〉スキルを習得しますか?
〈YES/NO?〉もちろんYESを選択する。
僕の身体に吸い込まれる様に一つの光が流れ込む。そして〈弓スキル〉の習得できたとのシステムメッセージが流れた。
「よし!ちゃんと習得できたな!次はステータスの設定をしてみようか、この
ゲームは、レベル制+スキル制で職業や役職などは
存在しない。プレイヤーであるお前たちは、初期に貰えるステータスポイントと
レベルアップによるポイントでキャラを成長させていく!」
「そしてスキルは、使い続けることによって熟練度が成長する。
スキル熟練度の上昇で、様々なアーツや強化オプションを取得して
使うことができる。ここまでは、理解できたか?」
つまりは、レベルとスキル。この二つを成長させることで、この世界の僕の分身は強くなっていくということか。
「はい。大丈夫です!」
「なら初期ステータスを設定してみろ!ステータスはSTR、VIT、AGI、MIN、DEXだ。この5種類の単語の意味はわかるか?」
STRは筋力値、VITは耐久値、AGIは敏捷値、MINは魔力値、DEXは器用値だ。大体わかるぞ。
「初期ポイントは120だ。弓などの射撃武器はDEXを重視しているから、その辺考えて振れよ!」
メニューからステータスタブを表示して、ポイントを振り分けていく。
ステータス
Lv 1
STR:15(1)
VIT:25(2)
AGI:30(3)
MIN:20(2)
DEX:30(3)
(こんな感じでいいかな?()内の数字は何だろう?)
「すいません?()内のの数字って何ですか?」
「あぁ…それは成長補正ってやつだ。レベルアップ時に()内のボーナスポイントだ。その数字を元に、ステータスの上昇値が大体決まってくるかな!」
忘れていたと言いたげなに風に「きょとん」とした表情を浮かべてイソロクさんは言った。そうか……そんなことを考慮して、初期ステータスポイントを振る必要があるのか……それは、慎重になって考える……そして……こうだ!
ステータス
Lv 1
STR:15(1)→STR:10(1)
VIT:25(2)→VIT:25(2)
AGI:30(3)→AGI:30(3)
MIN:20(2)→MIN:20(2)
DEX:30(3)→DEX:35(3)
「出来ました!」
僕がそう言うと、イソロクさんは覗き込んできた。
「悪くねぇ……がSTR低すぎじゃねぇ?それに、AGIとDEXが中途半端だ!これじゃあ、レベルアップ時の上昇値にムラが出るぞ!」
そんな事を考慮して、彼は諌めるような口調で僕に言った。
「でも、これでも補正は掛かりますよね?」
「掛かるちゃ掛かるが、男らしいくねぇ!極振りとか無謀な事にチャレンジしねぇから、女みてぇなぁな面になんだよww!」
どう考えても、ステータスの振り分けとは関係のない事を絡めて、からかい口調で僕を小馬鹿にしてくるイソロクさん。
「良いじゃないですか!別に……」
そんな事を言われた僕は、素っ気無い不貞腐れた返事をする。
「そう不貞腐れるなよww!」
「バシッバシッ」と背中を叩きながら、笑っているイソロクさん。
(痛い、痛い)
「もう、止めて下さいよ‼」
「はっはっ!ワルい、ワルい……でこれからどうするよ?そろそろテイムに向かうか?」
反省の色が窺えない声音で謝る。そして、話を切替わった。
「まだ待ち時間ってありそうですか?」
「……そうだな……大まかな予想では、あと一時間位は掛かるだろうな。なんだったら此処で、もう少し射ていくか?熟練度も伸ばせるからな!」
僕の疑問にイソロクさんは、何もない天井を見上げて、少しだけ考え込んで粋な提案を持ちかけてくれる。
「宜しいのですか?」
思わぬ提案に、疑いを持ってしまった。
「おう!かまわねぇぜ……ただし俺は寝るからな‼指導なんてしてやんねぇぞww独り寂しく、射てろや‼」
(何て言うか……この人ブレないな)
「では、ご厚意に甘えさせて頂きます。ありがとうございます。」
「俺はその辺で寝てっから、終わったら起こしてくれや!」
そう言って、すぐさま長椅子に寝転がって寝始めた。やがて、豪快なイビキが修練所の一室に流れ始める。それは……BGMのようだった。
(嫌な、BGMだな)
そんな事を他所に思考の片隅に置き、僕は射位に立った。弓を射始める。
「ふぅ~」
深く息を吐き。集中力を高める。
一射目を放つ…的中はしない。しかしさっきよりも的中に近づく。
これがステータス補正とスキル補正のおかげか。
それからも何射か射ていく…そして矢筒に残った矢は最後の一本。
より一層の集中をして放つ…弦の乾いた音が響き、矢が放たれた。
……的中する。小さくガッツポーズをした。
もう一度深く息を吐き、射位を後にしようと矢筒を持つ。
空っぽのはずの矢筒に重みを感じた。矢がぎっしり詰まっている。
「あれ?」
気の抜けた声が思わず出てしまった。
どうしてだろと矢筒を眺めていると……
≪修練所の矢筒≫
修練所の中でなら矢が自動的補充される矢筒。
とアイテム説明が表示される。
「おっ!!」
こういうシステムか…なら弓と矢を見てみる。
≪修練所の弓≫
修練所で使える弓
ATK:+5
≪修練所の矢≫
修練所で使える矢
ATK:+1
便利だなと感心した。
これなら時間いっぱい、射てられるな。
僕は再び矢を射続ける。…これならちょっとした願掛けに挑戦してみるか。
時間が過ぎ…一時間ほど過ぎただろう。
寝ているイソロクさんを起こした。
「ふぁ~よく寝たぜぇ~」
「どうもありがとございました。」
間入れず、礼を言い。借りていた物を返却しようとする。
弓、矢、矢筒の一式を纏めて渡そうとすると手で制してきた。
「それはここから出たら初心者装備に切り替わるから持っていけ!」
「よしここをこうしてっとっ!」
ウィンドウを操作しながら、立て続けに言ってきた。
すると……手にしていた武器一式が変化した。
≪初心者の弓≫
比較的に扱いやすい弓
ATK:+5
≪修練所の矢≫
簡素な素材で作られた矢
ATK:+1
≪初心者の矢筒≫
何の変哲もない矢筒
「あっ!?名称が変わりました‼」
「そうしてやったからな!速めに武器は新調しろよ」
投げやりなアドバイスをくれながら、寝ぼけた眼をでこちらに向けた。
そして急に目を見開くと、鋭い声で尋ねてきた。
「あれは何だ?」
指を指す先には、ユウヤが射ていた的がある。
「あぁ…あれは僕に弓を教えてくれた人に教えてもらった願掛けですよ」
「ふ~ん…どういった意味があんだ?」
「繋ぎ矢で、七つの大罪を一矢一罪に見立てて。それぞれの罪を払うために、矢で矢を裂き造花を作っていく、罪花って願掛けです。」
「面白いな!良いこと教えてくれたな!こいつをやろう…礼だ!」
小さな物体を放り投げてきた。
≪指輪≫
ただの指輪
DEX:+1
大した物じゃないようだ貰っておこう
「ありがとうございます!では、そろそろテイムに行こうと思います。」
「オゥ!行ってこい!もうそろそろ大丈夫だろ!じゃあ待たな!」
「では、失礼します。お世話になりました!」
ユウヤはイソロクさんに、礼を言うと部屋を後にした。
ユウヤが部屋を出るとイソロクは呟いた。
「あの指輪は、あいつの様な人間に相応しい…」
「しかしこの願掛けは、スゲェ造花だな…俺にもできっかな?」
弓一式を取り出し、射位に立つ。
ユウヤ
ステータス
Lv 1
HP:235/235
MP:145/145
STR:10(1)
VIT:25(2)
AGI:30(3)
MIN:20(2)
DEX:35(3)
≪所持スキル≫
弓スキル/ 27
<武器>
初心者の弓
初心者の矢
初心者の矢筒
<装備>
頭:なし
胴:初心者の服
腕:なし
腰:初心者のズボン
足:なし
靴:なし
<アクセサリー>
指:指輪
<アーツ>
ストロング・アロー
算出式
HP:100+20(Lv-1)+3(VIT+MIN)
MP:100+20(Lv-1)+1.5(STR+MIN)




