2.始まりの街エピオン
〈キャラクターデータを作成しています〉
〈キャラクターネームの設定してください〉
システムメッセージの声が脳裏に流れた。
最初はプレイヤーキャラクターの作成を行う必要があるようだ。
ゲームを余りやらない優夜は、良く分らなかったため本名の名をカタカナで登録した。
「ユウヤ」
〈続きまして外見の設定に移ります〉
すると、現実の身体のデータを元に自分そっくりアバターが表示された。
(これは、好きなようにカスタムしていいのだろうか?)
髪の毛を適当に短くしたり、色を変えたりと色々遊んだが、結局デフォルトに戻し。最終的に髪の長さをセミロングほどまで短くし、髪型をポニーテールに設定して、現実と同じく、日本人の色を設定して、アバターが作成された。
〈ようこそ「Ordeal Tame Onlineへ〉
視界がクリアになり世界が暗転した。
◇◇◇◆◆◆◇◇◇
一瞬の暗闇が思考を襲う。真っ暗な闇の中で自身が構成されているのを感じた。
次々と五感が広がっていく過程で、一番最初に感じたのは大自然の匂いだった。
都会の薄汚れた空気とは違う、大自然の澄み切った空気だ。
やがて、「フワフワ」と浮遊感がしていた身体が世界に降り立ったのを自覚して目を開いた。そこに映ったのはどこまでも広がる青い草原だった。
ここは自分の生きている世界とは違う、異世界かと思うほどの現実だ。
「メニュー」と呟く。
視界の右側にメインメニューが表示され、このとき初めてゲームの世界にいると実感できた。メニューバーのタブの最後にはログアウトがしっかりある。
僕はアイテムを何か所持していないかとイベントリを開いた。
所持アイテム
・初心者の服
・初心者のズボン
…服一式がイベントリに格納されていた。
初期装備というやつなのだろう。
後ろを振り返ると門があり、そこから覗く街並は、広大な石畳が張り巡らされた街道。それらの上に建てられた建物は、華やかさとは少し言い難い、中世の名残を感じさせる。
ここが僕のスタートライン。
期待と興奮を胸に抱き、門を越えて一歩を踏み出した。
〈ようこそOrdeal Tame Onlineの世界へ、これより貴方の冒険がスタートします〉
門を潜ると同時にシステムメッセージが流れた。
〈ただいまより貴方の視界に、この始まりの街“エピオン”のMAPを表示します〉
淡々とメッセージが流れ、瞬く間もなく視界にMAPが表示されていた。
〈MAPには現在、貴方がいる場所を白点で表示します。
白点を中心に東に赤点、北に青点、西に黒点で表示されているでしょうか?〉
MAPは円の形で現在地を記す白点は、僕が潜って来た門の入口。
つまりは南を標して存在している。その正反対の北には青点が東には赤点、西に黒点がある。説明の通りMAP上に4色の点が表示されていた。
〈では各点の説明をさせて頂きます。
赤点は様々なギルドの集会所があります。黒点は修練所などがあります。
青点ではプレイヤーの皆様にペットをテイムして頂ける保護区域です〉
〈プレイヤーの方々には、黒点か青点のどちらかに先に行って頂き、
最後にギルドにて“ティマー”登録をしてもらうことで旅立ちの準備が整います〉
〈もう一度、説明を繰り返しますか?〉
〈YES/NO?〉
特に何か解らなかった事は無かった為、NOを選択した。
〈では、ようこそOrdeal Tame Onlineへ、貴方が現実の世界でペットを飼う権利を手に入れられることをお祈りしています〉
この瞬間、静止した世界が再び動き出す。
最初に目指すべき場所は二つ。
(北にペットをテイムしに行くか?…それとも西の修練所に行くかどうしよう?)
思案していると、僕の横を通り抜ける数多の影。向かって行った方角は北の青点。ペットをテイムすることが出来る、保護区域に向かって…
僕も慌てて駆けようとする。しかし次々と自分を追い越す、沢山の人の群れに躊躇いを覚えてしまった。
(乗り遅れたな~)
我先に駆け出している人並みを呆然と眺めて、ただ単純にそう思った。
考えることは皆一緒で、追いつこうと駆け出しても、もう追いつけないだろう。
道行く人達の背眺めながら、無邪気に駆けて行く人達の気持ちが解ってしまうのは、僕自身も一緒だからだろう。僕も同じく待っていた。このゲームの発表があった時から…
(仕方ない先に西の修練所に向かおう!)
逸る気持ちを切り替えて進むべき道を決めて、次の行動に移していく。
こうして、まだ見えぬ目標に向けて、第一歩を西の方角に向けて歩みだした。
◇◇◇◆◆◆◇◇◇
しばらく西に歩き続けていると、横長の木造建築の建物が見えてきた。
正面入り口と思われる場所通り、扉を開け中に入ってみる。
受付と書かれた看板が置かれた窓口が見える。
「すいません~どなたかいませんか?」
軽く挨拶をしてみる……反応がない。
再度繰り返すと…
「あー五月蠅いな!誰だ!俺の眠りを妨げるのは!」
受付窓口の直ぐ下から、唸り声と共に荒っぽい怒鳴り声が響く
ビクッ…体が条件反射で萎縮してしまう。
次の瞬間、視界に映った人物の姿を認識すると更に体が萎縮した。
その男巨体は2mを優に上回りユウヤの頭2つ3つ分を超える巨体だった。
「ハイハイ何かな?嬢ちゃ…いや坊主か?」
一瞬この巨体からは考えられない撫で声が聞こえた。
しかし僕を一瞥してすぐさま男だと気づくと、無遠慮な声に変わった。
「あの~?最初に修練所か、保護区に行くことになっていまして、先に
修練所だとお見受けするこちらに来ました。ここでは何ができますか?」
やはり、パッと見。僕は女性に見られやすいのか、仕方がないと諦め…
質問を繰り出した。
「確かに…ここは修練所で間違ってない!どうしてこっちに先に来た?
先にテイムに行かなかったのか?それとも場所が解らなかったのか?」
厳つい顔を驚かせ問い返してくる。テイムを優先した方が良かったのかな?
「いえ!場所はわかりましたが、行き遅れてしまいまして…テイムを先に優先した方が、良かったでしょうか?」
そう返すと巨漢は困った様で、頭を掻き毟りながら、締りが悪そうにこう言った。
「あ~どいつもこいつもテイムしてから、こっちに来ると思っててよぅ、こっちのNPCを保護区の方に回していてな…ようはこっちに誰もいねぇんだわ!」
今の話からすると、このおじさんはNPCではないようだ。
「おじさんはNPCではないのですか?」
確認の為、聞いてみた。
「おう違えよ!俺は、Ordeal Tame Online略して、お手オンの開発チームの一人で、サービス初日だから不具合が起きないようにダイブしたんだよ!」
それなのに寝ていたのか!仕事しろよな!仕事を!
「つまりまだ説明をできないということですか?」
NPCがいない以上仕方ない後で出直すか…そう思い尋ねた。
「イヤ…今から保護区の方に行っても、かなりの待ちがあるだろう…お前、武術の心得はあるか?」
先ほどのやる気なさげ態度とは、打って変わって積極的な姿勢で聞いてきた。
「はい、弓の心得なら多少あります。こちらでも弓を主に使いたいと思います。」
そう返すと、少し悩んだように俯き、天井を
見上げ深く息を吐きだし言葉を紡いだ。
「よしこれも何かの縁だ、特別に俺がお前の担当をしてやろう!こっちだついて来い!」
そういって受付の部屋から、出てきて廊下歩き始めようとする。
「ありがとうございます!僕は、ユウヤです!よろしくお願いします!」
僕は名を名乗り、一礼した。
「俺はイソロクだ!よろしくなユウヤ!」
おじさんは歩みを止め少し首を振り向き言った。
そしてイソロクさんは再び足を運び、僕はその後を追いかけた。




