閑話:宣教師とパイナップルと、おじさんの大嘘
信長様が京の南蛮寺(教会)を支援し始めた頃、一人の宣教師が尾張を訪れた。名はルイス・フロイス。彼は「信長様に最も近い、不思議な知恵を持つ乙女」がいると聞き、私を訪ねてきたのだ。
「モズ様、日ノ本の神仏と、デウスの教え……どのように折り合いをつけるべきでしょうか?」
フロイスの真面目な問いに、私の中の「三十路無職おじさん」が疼いた。私は不思議ポケットから出したマヨネーズを舐めながら、適当な嘘を吹き込み始めた。
「フロイスさん、いいかい。日ノ本の神様はね、実は『フルーツ』に宿るんだよ。特に偉い神様は、トゲトゲの鎧を纏った『波羅泥』という姿をしているんだ。」
「……パイナップル? それはどのような果実なのですか?」
「頭に王冠を被り、全身が鱗に包まれた黄金の果実さ。……あ、そういえば、今京で幅を利かせているあの転生者……あいつも自称『CEO』なんて言ってるけど、本当は『パイナップル』の化身なんだよ。」
私がそう吹き込んだ数日後。信長様の前でフロイスが「CEO」のことを「パイナップル公」と呼んだことで、信長様の中で彼の名称は「パイナップル」に決定した。
「おい、パイナップルの野郎がまた効率的な嫌がらせをしてきたぞ!」
なんて信長様が憤慨する日常が定着してしまった。CEO本人は「私はChief Executive Officerだ!」と激怒しているらしいが、一度魔王に名付けられたら最後、この時代ではもうパイナップルで通るしかないのだ。
さらに私は、フロイスに「西洋の正装」についても嘘を教えた。
「いいかい。ヨーロッパの貴族が最上級の儀式で着るのは、イチゴやバナナの着ぐるみなんだ。あれは『豊穣の守護者』を意味している。教皇様も、裏ではバナナを被って踊ってるんだぜ?」
フロイスは驚愕し、本国への報告書に「日ノ本では果実の着ぐるみが聖なる正装であり、バチカンもそれを推奨していると誤認されている。早急に現物を用意されたし」と書き記した。これが、後に信長様がイチゴ、私がバナナの着ぐるみを着るという、歴史的悲劇の引き金となったのである。
「……ねえ、おねえちゃん。あの人、一生懸命バナナの絵を描いてるけど、いいの?」
茶々丸が冷ややかな目でフロイスを見ていたが、私は
「いいんだよ、茶々丸。これで世界が平和になるならね」
と、おじさんの汚い笑顔で答えた。
この「おじさんのテキトーな嘘」の積み重ねが、ついに光秀を絶望させ、パイナップル(CEO)の計算を狂わせ、本能寺という名の「フルーツ・パニック」へと繋がっていくのである。




