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第22話 俺は変わる 

 武器屋を後にした俺は、細い路地を抜け、大通りに出た。日中に比べて気温がかなり下がっており、肌寒かった。


 いつの間にか日が沈み辺りはすっかり暗くなって来ていたが、町は人で溢れかえっていた。


 夜だというのに、通りには様々な屋台が出ていた。みんな食べ物と酒を手にし、楽しそうに過ごしていた。どの人間もみんな笑顔を浮かべていた。


 知らずにやったこととはいえ、自分が倒したことでみんなが嬉しそうにしてるのは嬉しかった。しかし、いまは感傷に浸っているわけにはいかない。


 俺は、通りを歩き続け、西門から外に出た。門の外に人影は見えなかった。


「よし! やるか!」


 わずかに雪が降り始めていたが、俺は、走り始めた。城壁にそって街の周りを走っていく。


 刀に込められたじいちゃんの思いを知って、俺はいてもたってもいられなかった。今すぐ自分を変えるための行動を開始したくて、堪らない。心の底から強い決意が湧き上がってくる。


「必ず立派な人間になってやる! 強い人間になってやる!」


 走りながら何度も何度も自分に気合いを入れた。今までにない熱い思いが体を突き動かしていた。俺は時間も忘れて夢中で走り続けた。


 ヘトヘトになりながらも、町の周りを永遠と走っていると、城壁の上からいきなり声をかけられる。


「おい! お前何してるんだ! こんなところを何周も走って!」


 顔を上げると、城壁の上に特別教官のクロードが立っていた。つい先日、弟子入りを頼み込んだが手痛く断られていた。


「教官……」


 クロードを見ると先日の暴力を受けた悔しい気持ちが込み上げてくる。強くなるためにさらに自分をいじめ抜きたくなってくる。


「お前は馬鹿なのか? 街はお祭り騒ぎだぞ!領主がレヴィナント用に集めていた食料を解放したんだ! 飯も酒も全部ただだ! こんな日に何やってんだ!」


 クロードはそう言いながら目の前に降りてきた。左手には飲みかけの酒瓶を持っている。


「どうしても走りたくなってしまって……!」

俺は素直に理由を答えた。


「ははは! 変なやつだな! 狂ってやがる!」

 クロードは愉快そうに笑っている。


(酒臭いな。かなり酔ってるぞ)

 俺は対応がめんどくさくなって、また走り始めようとする。


「では、僕行きますね! 」

すると、

「ちょっと待て! お前! なんのために走ってるんだ! 馬鹿みたいに何周も!」

クロードが慌てて引き留めてきた。



「強くなりたいからです!! 弱い自分に勝って、最強の自分になりたい!!」

「そうか……、お前、良い眼をするようになったな! 三日前の情けない姿が嘘みたいだぜ!」

「……」


 急に褒められ、俺は戸惑ってしまう。この前はあれだけダメ出しされたのに……


「よしっ! 良いぜ! 鍛えてやるよ!! 」

「えっ?」

「だから!! お前の師匠になってやるって言ってるんだ!! 」

 クロードはぶっきらぼうにそう言い放った。


「良いんですか?」

「ああ、多分今までの弟子の中でお前が一番素質ないが、最近暇でしょうがねぇんだ。少しだけ付き合ってやるよ!」


「ありがとうございます!!」

 俺は深々と頭を下げた。特別教官に指導をしてもらえるなんて願ったり叶ったりだ。

 

 横柄な態度と、雑な口調からやや不安ではあったが、モルドに二人だけしかいない特別指導教官だというからには、実力はあるのだろう。


 俺の心は今、猛烈に自分を鍛え直したいという思いが溢れている。そのため、この人の指導に賭けてみることにした。


「あらかじめ言っておくが、俺の指導は街の養成所のような生ぬるい遊び場とは違う。修行期間は地獄だと思え!! 俺は一切容赦はしないからな死ぬ気で食らいついてこい!!」


「はい!!」


 俺は力強く答えた。どんなに厳しい修行であろうが、今の自分なら乗り越えられる自信があった。心の底の底から、強くなりたいという想いが溢れ出してきて仕方がない。




「よし! それから今から俺のことは師匠と呼べ!」

「わかりました!!」

 俺がそう答えると、師匠はモルドから5キロほどの距離にある山を指差した。


「あの山の中腹に光があるのが分かるか?」

「はい」

小さな光であったが、山の中腹に明かりが見えた。


 「あそこが俺の山小屋だ! あそこでしばらく住み込みで修行を行ってもらう! 準備が整ったらすぐに来い! 明日早朝から修行を始める!」


「はい!」


 俺は急いで街にもどると、まだ開いていた仕立て屋を訪れ、動きやすそうな服を上下五着ずつ見繕ってもらった。


 宿に帰り、女将さんに事情を説明すると、とても喜んでくれた。また、特別教官の弟子になれることは本当に幸運なことだと教えてくれた。


 俺はすぐに支度を整えると街を出て、師匠の家に向かった。



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