第20話 鑑定
俺は扉を開け、店内に入った。
中はかなり薄暗かった。本当にやってるのかと思いながら俺は奥へ進んでいく。
棚には数え切れないほどのナイフが置かれていたり、五つほど置かれている樽にはそれぞれ限界まで剣が入っていた。
店内は雑多な感じであらゆる武器がごった返しており、お世辞にも整っているとは言えなかったが、武器はきちんと手入れされているようで、剣や槍の刀身はピカピカに輝いていた。
「すみません」
「……」
俺は何回か声をかけたが、誰も出てこなかった。
(外もあんな状況だし、さすがに出かけているか)
そう考えた俺は仕方がなく、店を後にしようとした。しかし、店を後にしようとしたところに後ろから声が聞こえた。
「誰か呼んだか?」
店内からお爺さんが姿を現わした。七十歳は超えているように見える。
白い顎髭が十センチくらい垂れ下がっている。
「こんにちは」
「いらっしゃい! 武器をご所望かな?」
「いや、違うんです! 僕が持っている武器をちょっと調べてもらいたいんです」
「ほぉ」
お爺さんは顎髭を上下に右手で撫でながら話を聞いている
「武器の威力とかって多分物によって違うんですよね? 自分の武器がどれぐらい強いのか知りたくて」
「ふむ。お前さんのいう通り、武器の威力はその武器が持つ性能によって違いがある。なるほどな、人から武器をもらったんだろ。そうでなければ買う時に普通把握するからな」
「そうなんです」
「調べることは可能じゃよ。専用の測定器があるからな」
「良かったです!ぜひお願いします」
「うむ。ところでお前さん、その武器の忠誠は受けているのか?」
「えっ? 武器の忠誠ってなんですか?」
「お前さん、武器の忠誠を知らないのか? 珍しいやつだな。普通、そこら辺の子供でも知っているぞ」
「すみません」
「この世界の武器にはな、意思が宿っておるのじゃ。その武器の意思に合う人間しか、その武器の本当の力は引き出せないのだ」
「武器の意思ですか?」
「ああ。武器の意思に認められる事を忠誠を得ると言うのだ。我々が武器を選ぶのではない。武器が我々を選ぶのだ」
「お前さん、あそこの壁にある斧をとってみなされ」
「わかりました」
壁に近づき、その斧を取ろうとすると、斧にバーンアックスという名前と20万という値札が貼られているのに気が付いた。
(うわ、これ、20万もするのか!! 高っ! 落とさないようにしよう)
俺は斧を両手で持ち慎重に店主のところまで運んだ。
「持ってきました」
「よし、では持ったまま、その斧の刃を見てみなさい。カウンターは見えるか?」
「見えません」
「見えないということは忠誠を得られなかったという証拠だ。おまえさんとその斧とは縁がなかったというわけだ。バーンアックスは忠誠を得たものが使えば炎を刃に惑わせた攻撃ができるが、忠誠を得られなかった、者が使ったらただの斧だ」
「なるほど、武器に認められないと特殊な力は使えないってことですよね」
「そうじゃ、ちなみに忠誠を得られる確率は100分の1から1000分の1くらいだと言われていてる」
「そんなに低いんですか?」
「ああ、だから冒険者は自分に合う武器を必死で探すし、武器屋は大量の武器を用意しておくのだ」
(まじか。忠誠を得るのがそんなに低確率だとは。この世界では武器探しが大変なんだな……)
どうもゲームやアニメで見た知識を基本に、考えてしまっているが、現実はその世界独自のシステムがあるようだ。
俺はふと気になったことを尋ねる。
「自分専用の武器を鍛冶屋に依頼して作ってもらうことって出来ないんですか? そうすれば武器の忠誠も得られるんじゃないんですか?」
「それは不可能だ。いや、限りなく不可能だと言った方が正しい。昔はそういう事ができる鍛治職人がいたらしいが、その技術は失われてしまっている。今の時代の鍛冶屋は、依頼者に忠誠を与えられる武器を作ることはできない。」
「なるほど。」
「ちなみに忠誠を得られる確率は武器の等級が上がるほど低くなるぞ」
「すみません。武器の等級ってなんですか?」
「そこの値札に書いてあるだろ、良物って」
「あります」
値札を見ると確かに価格の右に良物と書かれている。
「うちの店では値段の横に書いてあるんだ。下から順に一般→良物→希少→最希少ってなってるんだ。その武器は下から二番目の等級だな。
まぁまぁだ」
「なるほど」
(つまり武器のランクってことか。これは分かりやすいな)
俺は、店主から話を聞いて、この世界の武器について大体のことがわかった。
「自分が忠誠を得られてるのか、どうすればわかるのですか? 」
俺はじいちゃんの刀から忠誠を得られているのかが気になりそう尋ねた。
「簡単じゃよ。忠誠を得ている武器は武器のどこかに魔法攻撃の発動残数が見えるカウンターが見える」
「あっ、それなら大丈夫です! 三本とも、カウンターは見えました。」
「それなら大丈夫だ。ちゃんと忠誠を得られておる。では、調べるとするか。調べて欲しい武器をここに出すんだ。」
俺は懐からアグニを、アイテムボックスからゼウスとシヴァを取り出すと店主に渡した。
店主は刀を受け取ると、店内の右奥に置かれている作業机に座った。
すると机の引き出しから昔高校の授業で使った電流計のような物を取り出し、ゼウスの剣先と柄にコードを取り付けた。
「これはなんの道具ですか?」
「武器に秘められている力を測る道具だ。よし! これで準備は整った。お前さん、柄を握って、いつも使用しているように武器を待ってくれ。カウンターが光れば数値が測れる。」
「わかりました。」
俺はいつものようにゼウスを掴んだ。するとカウンターには一万という数字が表示された。
その瞬間、
「なんだ、これは!? ありえん!」
店主は大声で叫んだ。あまりの剣幕に俺は驚いてしまう。
「え!ど、どうかしたんですか?」
「こんなことがあり得るのか…。もしかして機械の故障か?いや、それはあり得ん。この機械は昨年買ったばかりだ。」
店主は俺の声が聞こえていないのか、何やらブツブツ呟いている。店主の様子に俺は心配になってしまう。
「あの、だ、大丈夫ですか?」
「ふぅ、やっぱり間違いないか。まさか、こんなことが……。」
「…おじさん?」
すると俺の声がやっと聞こえたのか、店主は口をやっと開いた。
「いや、すまん、取り乱してしまったな……。」
「俺の刀、何か問題でもあったんですか?」
俺は恐る恐る尋ねる。
「いや、そうじゃないんだ。…ちょっと驚いてしまってな……。よく聞いてくれ。さっきはあえて言わなかったが、武器の等級は、実はもう一つ上の位があるんだ。最希少ランクの上に、実は神聖ランクというものがある。先ほどこの神聖ランクのことを伝えなかったのは、あまりにも希少すぎるからなんだ。全世界でも五十個も存在していない。わかるか?それが神聖ランクなんだ」
「そうなんですね」
ここで俺はもしかすると俺の刀が神聖ランクなのかと思ってしまった。いや、絶対そうだろ、この店主の言い方。俺は、心臓の鼓動がどんどん早くなってくるのを感じた。
「もしかして、俺の剣はその神聖ランクってやつなんですか……!?」
俺は思わず聞いてしまった。
「いや、お前の刀は神聖ランクではない。…私も信じられないが、お前さんの剣は、神聖ランクの中でも最強と言われている聖剣【ラストレクイエム】の五倍以上の力が込められている。
「え、本当なんですか、それは。」
俺は思ってもいなかった言葉に頭が真っ白になってしまう。
「間違いない!昨年、世界最強の剣と言われている【ラストレクイエム】が八十二万を計測した。しかし、お前のこの刀は四百八十五万だ。五倍以上の差がある。信じられんがな。」
「す、すいません。こっちの二本もお願いします。」
俺はまだ現実を受け止められなかったが、とりあえずアグニとシヴァも計測してもらうことにした。
すると、脇差のシヴァは二百六十二万パワー、アグニは二百五十七万パワーの力が秘められていることがわかった。どちらも世界最強の剣の三倍以上の力だった。




