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虚軌の鉄路【完結済】  作者: 山原かいな
第四章、虚軌の果て

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【エピローグ:果てなき鉄路】

二〇二六年の東京―― 。

 品川駅の地下深く、巨大なコンクリートの要塞のような空間で、世紀の超巨大プロジェクト「中央リニア新幹線」の建設工事が、令和の現代も音を立てて進められていた 。

 「……やはり、当時のようにはいきませんか」

 工事用ヘルメットを被った若き女性技術者――JR東海の技術開発部に所属する香坂まどかが、手元のタブレットに表示された工期遅延のデータを前に、小さく溜息をついた。

 彼女の祖母は、かつて東海道新線の開発に携わり、後に

 「日本の女性技術官僚の先駆者」

と謳われた結城樺恋である。

 祖母の遺品である銀縁眼鏡を、まどかは今日もお守りのように胸ポケットに差していた。

 「今の時代、コンプライアンスだ、環境アセスメントだ、国会での予算の透明性だと、四方八方からブレーキを踏まれますからね。

 静岡のトンネル一つ掘るのにも、これだけの政治的な大紛糾が続く」

 まどかの隣で、仕立てのいい作業用カッパを着た初老の男が、フッと不敵な笑みを漏らしながら言った。

 男の名は陣内孝之、現代の日本の不動産界の頂点に君臨する巨大総合デベロッパー「陣内開発」の現会長であり、あの川崎の闇市からのし上がった初代・陣内厳の直系の孫であった。

 「リニアは、無理ですよ 。

 今のこの国じゃあ、絶対にあの頃のようには走らない」

 陣内は品川の地下の暗闇を見つめながら、煙草を吸う代わりに、上質なネクタイの結び目を緩めた。

「どうしてそんな悲観的なことを仰るんですか」と、まどかが聞き返す。

 「技術ですか? 磁気浮上式リニアの技術は、すでに祖母たちの遺した新幹線の安全性を遥かに超えて、完璧に完成しています」

 「技術のプロフェッショナルである香坂さん、あんたたちらしい言葉だ。……だがな、今の日本には、もう『彼ら』がいないんだよ」

 陣内の色素の薄い瞳が、地下の薄暗がりのなかで怪しく光った。

 「『彼ら』……?」

 「そうだ。一九六四年の東京オリンピックに間に合わせるために、実際の予算の半額を偽って国会を通し、

 『通ってしまえばこっちのもの、あとは俺が泥をかぶる』

 と言い放った十河信二のような、国家をハメる大悪党の豪傑がいない。

 ……『こんな予算じゃ確実に破綻する』

 と胃を痛めながらも、世界を騙すための『貨物新幹線』の騙し絵を100%本気で信じて世界一安全な怪物の図面を引いた、島秀雄やあんたの祖母のような、狂気的なまでに純粋な光の技術者がいない」

 陣内は、品川の地下の奥底から、東京駅へと繋がるはるか遠いレールの残響を聴くように、声を一段と低くした。

 「そして何より……、彼らが夢を追っているその裏で、すべての罪と汚れをたった一人で引き受けて悪魔の道を進んだ、鷹見遼のような『影』が、今の永田町にも、今の官僚機構にも、もう一人も残っていねぇのさ。

 ……今の奴らは、誰も自分の手で泥をすする覚悟がない。

 だから、リニアは進まないんだ」

 まどかは息を呑み、言葉を失った。

 祖母・樺恋が晩年、病床で

 「新幹線は、本当に美しい光の列車だった。

 けれど、あの光の舞台の下には、名前も遺さずにすべてを背負って消えていった、一人の哀しい人がいたのよ」

 と、涙を流しながら語っていたおぼろげな記憶が、現代の陣内会長の言葉と、あまりにも残酷に、そして完璧に重なり合った。

 「東海道新幹線という大嘘の鉄路から始まった利権のおかげで、俺の祖父は不動産王になり、俺たちの会社は今、このリニアの周辺の土地もすべて買い占めて勝ち残っている。

 ……あんたたちの綺麗な光はな、結城さん。

 俺たちみたいな悪党の欲望と、すべてを犠牲にした影の血肉のクッションがなきゃあ、時速二百キロでも、五百キロでも、前へ滑り出すことはできねぇんだよ」

 陣内開発のトップである男は底なしの闇のような笑みを残し、地下の要塞から去っていった。

 独り残された香坂まどかは、胸ポケットの銀縁眼鏡にそっと手を触れ、深い品川の闇を見つめた。

 そこには、かつて昭和の焼け跡から這い上がり、世界一の超特急を走らせるために引き返せない奈落へと足を踏み入れた男たちの、激しくも哀しい魂の咆哮が、今も果てなき軌道の残響として、静かに、しかし確かに鳴り響いているようだった。

(『虚軌の鉄路』・大団円)

これにて完結です。

いかがでしたでしようか?

こんな話が読みたいとキャラ、設定等Geminiさんに伝えて、書いてもらい、切り貼りして、それなりな結末まで書き切る事ができました。

最初はもっとどろどろの暴力描写ありの話の予定でしたが、あんまり自分が好きではないので、かなりソフト、あっさりな感じになってしまいましたね。

また、途中で、AIのスレが長すぎたのか、読み込めなくなり、スレを新しくしたりしたので、文体や繋がりに違和感があるところがあるかもしれません。

 文章なんか書いた事もないど素人でも、完結まではもっていけるAIの凄さを感じるとともに、実際に自力で書いてる人は、本当に凄すぎると思った次第です。


励みになるので、少しでも面白いと思ったら評価(星)やブックマークをお願いします。

お読みいただきありがとうございました。


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