プロローグ
Geminiさんにプロット、キャラ、場面を伝えて大枠を書いて貰い、修正しているものです。
昭和の時代の象徴、新幹線誕生を私の好きな設定をいれて、虚実織り交ぜて書いて貰ってます。
実際の人物名が登場しますが、全て実物とは関係ありません。
話は全て架空のものです。
場面とキャラ設定のみ伝えて書いて貰ってるため、普通の小説とは違い、流れが変だったり、切り貼り感が出るのはご愛嬌という事で。
昭和三十九年、九月。東京駅。新幹線の開業を翌月に控えたその日、中央線ホームに滑り込んできた夕刊の束は、まるでひとつの巨大な生き物のように一斉に「その名前」を称賛していた。
『世界一の弾丸列車、いよいよ始動』
『戦後復興の金字塔、日本の技術力が世界を抜いた』
売店のスタンドに並ぶ新聞の一面を眺めながら、鷹見遼は自嘲気味に、低く息を吐き出した。
つい一年前まで、同じ新聞が新幹線計画を
「現代の四馬鹿」
「国家予算をドブに捨てる狂気の沙汰」 と激しく叩き潰していたことなど、誰もが忘れたかのような熱狂だった。
マスコミの評価は、ひっくり返した手のひらのように、あまりにも鮮やかに変わった。
日本中が、新しい時代の夜明けという「美談」に美しく酔いしれていた。
その狂騒から遠く離れた、国鉄本庁舎の薄暗い総裁室。
仕立ての悪い、しかし塵ひとつなくプレスされた官僚スーツに包まれた鷹見の細身だが逞しい身体は、無人のデスクの前にぽつんと佇んでいた。
この部屋の主であった十河信二総裁は、数日前、すべての予算超過の責任を追及され、国鉄を去った。
三千億超えのプロジェクトを二千億弱と偽って国会を通した「国家への詐欺罪」。
その泥を、あの豪傑のオヤジはひとりでかぶって、歴史の表舞台から静かに消えていったのだ。
鷹見は、大絶賛の新聞記事の下に隠すように置いていた、一通の「載らなかった記事」のゲラ刷りに目を落とした。
親友であった大和新聞の社会部記者、香坂潤が命を削って書いた、新幹線予算改ざんと不正土地買収の告発記事。
……だが、その文字が世に出ることはなかった。 香坂は、卑劣な罠によって精神を病み、今はどこの病院とも知れぬ闇の奥に消えている。
「手のひらを返しやがって……」
鷹見の太い眉が、苦痛に歪んだ。
背後で、重厚な革靴の音が響いた。
仕立てのいい高級スーツに身を包み、今や新駅周辺の利権をすべて手に入れて戦後最大の不動産王となった男―― 陣内厳が、灰皿にタバコを揉み消しながら、不敵な笑みを浮かべて鷹見の隣に立った。
「いいじゃねえか、鷹見さん。
世間様がありもしねえ正義や美談に狂ってる間に、俺たちの作ったオモチャが、世界で一番高い場所へ登りつめたんだ。
……他人の人生を、枕木にしてな」
鷹見は何も答えなかった。
激しい後悔が、今も胸の奥を灼けつくすように蝕んでいる。
香坂が破滅していくのを、新幹線という化物を走らせるために、自分は見殺しにしたのだ。
かつての自分の想い人の、あの涙を突き放してまで。
窓の外を見下ろす。
高架線の上で、西日に照らされた白と青の車体が、静かに、しかし圧倒的な威容を誇って佇んでいた。
若手官僚たちが、徹夜で、純粋な汗を流して完成させた、世界一綺麗な列車。
(香坂。
お前を犠牲にして作ったこの鉄路だ。
絶対に、途中で止めさせるわけにはいかない)
鷹見は静かに目を閉じ、拳を血がにじむほど握りしめた。
瞼の裏に、すべての始まりの夜――まだ誰も新幹線を信じていなかった、あの泥沼の泥合戦の記憶が、鮮烈に蘇ってきた。
――話は、七年前の十一月に遡る。
東京を襲った烈しい秋雨が、国鉄本庁舎の窓を叩いていたあの夜。
大蔵省や国会への予算提出を数日後に控え、俺が十河のオヤジに手招きされて、総裁室の重い扉を開けたあの瞬間から、すべては始まったのだ。――話は、七年前のあの嵐の夜に遡る。
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