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琥珀色の新世界

見せてやろう。『アンバー・レゾナンス(共鳴する琥珀達)』の性能を。


リヴァプールのホーム、アンフィールドは異様な熱気に包まれていた。

サポーターが歌い上げる『You'll Never Walk Alone』の重厚な大合唱が、アウェーに乗り込んだチェルシーの面々に圧をかけようと必死だ。

その狂騒の特等席——VIPボックスの最前列には、仕立ての良いコートを着た一人の老紳士が座っていた。ポール・マケトケー。

リヴァプールが生んだ伝説のロックスターは、自身の故郷のクラブを応援すべく静かにピッチを見つめていた。

そしてもう一人、チェルシー側のベンチには、不敵な笑みを浮かべて戦況を見つめる男がいた。ロック・ジャガー。

今日も試合に出る予定はないが、佇んでいるだけで空気をチリチリと破るような存在感を放つ、チェルシーが誇るもう一人の規格外の男だ。

だが、全視線を強奪する主役は、『アンバー・レゾナンス(共鳴する琥珀達)』だった。



前半12分:

チェルシーがリヴァプール陣内の深めの位置でスローインを得る。(左側)

ボールを拾い上げたのはダン・ホルトーリ。味方へサインを送る。

チェルシーの攻撃布陣は長身CBコウガイがファーサイド寄りのオフサイド位置へ入り込もうとしている。

ングゥアチュチュがニア寄りのオンサイド位置に立つ。

リヴァプールディフェンス陣は、当然のようにペナルティエリア内を中心にゾーンディフェンスを敷き、コウガイへのロングスローを警戒する。隙など無いかのように。

(定石通りです。マンマークだと深く入られてしまう。また、スローインを直接受ける者はオフサイド適用外。)


だが、ダンの腕がしなやかに振り抜かれ、手首でボールを切った瞬間、世界が一変する。

通常のスローインよりも低い、目に近い高さから放たれたボール。低く飛んで行き、やや遠目の位置でワンバウンド。

その後滑るような加速で転がって行き、防衛網を突き抜けた。

コウガイはボールから遠く離れた、オンサイド位置へ戻っている。

スルーパス性のボールに走り込むのはングゥアチュチュ。完璧な裏抜けだ。

右足を一閃。リヴァプールゴールのネットを容赦なく揺らした。1-0。

電光石火の先制点。アンフィールドが一瞬で静まり返る。

リヴァプールが動揺から立ち直る前に、チェルシーの猛攻は続く。


前半19分:

中央でボールを収めたングゥアチュチュに、相手の激しいプレスが2枚がかり、視線と腰を落として襲いかかる。

(かかったな。『スカイ・フリップ』の出番だっ!) 右足を小さく、鋭く振り上げた。

ボールはロビングのような山なりの軌道ながらも、スピードを伴っている。ドライブ回転がかかっているのか。

密集地帯の頭上を鮮やかに抜けていく。

その落下点に、ダンが既に走り込んでいた。ディフェンスは着いて来れていない。

ゴール左隅へと勢いの乗った弾丸シュートを突き刺す。これで2-0。


前半28分:

20m、右30°の位置で得たフリーキック。キッカーはダン。

右足を振り抜く。放たれたボールは、クロスバーを明らかに高く越えるような、誰もがミスキックだと思う軌道を描いて空中へ飛び出した。

リヴァプールの壁は軽々と越え、GKも動きを止めている。

だが、高々と浮き上がったはずのボールが、まるで重力の枷を急に嵌められたかのように、空中の一点でブレーキがかかったように鋭く縦に落ち込んだのだ。

『懸河ドライブ』。

そのまま、キーパーの死角であるゴールの右上一杯、クロスバーギリギリのトップコーナーへと鋭角に吸い込まれた。

高めボールゾーンから急降下し、高めストライクゾーンへ戻ってくる、野球のスプリット系(縦方向の)バックドアの軌道。

守護神は、ただ呆然と、天空から降ってきた白球がサイドネットを揺らすのを見送るしかなかった。3-0。


「……信じられん」

VIPボックス席で、ポール・マケトケーは小さく呟き、深くため息をついた。

早くも3-0。あまりにも一方的で、あまりにも美しい知性と技術の蹂躙。

老ロックスターは誰に気づかれることもなく、静かに席を立ってアンフィールドを後にした。続きを見る必要など、どこにもなかったからだ。


前半41分:

ククレが起点、正確なパスで右サイドへ展開する。パスを受けた右WGノミが右から中央へ切り込み掻き回し、リヴァプール守備陣は大混乱。

ノミから左寄りゴール前に詰めた、ングゥアチュチュへパス。

ングゥアチュチュが足裏を使い、タイミングを外して押し込む。4-0。



後半開始直後。

チェルシーの指揮官は、すでに勝負が決したと判断し、ダンとングゥアチュチュの二人にベンチへ下がるよう指示を出した。

過密日程を見据えた、極めて合理的な早期交代。

ピッチを退き、ベンチへと戻ってくるダンとングゥアチュチュ。

「へっ、いいショーだったぜ」と言わんばかりに、ロック・ジャガーが不敵な笑みで二人を出迎える。

ベンチに腰掛けた二人の表情には、驕りも興奮もない。ただ、己の肉体と知性がフットボールというキャンバスに正しい軌跡を描いたという、淡々とした充実感だけが宿っていた。

見たか!本竹の蹴球は楽しいサッカーだ!!

そして新技をあと2つもオレ達は残している…… その意味がわかるな?

(ニャンとも以外の2つだよ)

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