終わりから始まるProlog
――――――それは、唐突な最後だった。
西暦2032年9月某日。とあるホテルで起こった殺人事件の犯人だと暴かれた1人の女は、所属する犯罪組織のボスと共に逃走を図るべく、待機させていたヘリに乗り込み、操縦桿を握っていた。
(……もう、早く乗ればいいのに)
自分を捕まえることなどできないという絶対の自信からか、追ってきた特殊警察官と警察を前にして、無駄に長くて仰々しい逃げ口上を吐き続けているボスの男に、女は呆れ果てる。
昔はこんな奴じゃなかった。
初めて会った時は、『この人の下なら、自分の成すべきことをなせるかもしれない』と思わせ、元いたテログループからの移籍を決意させるほどのカリスマ性があった。
しかし、今やただの小物。いや、元からこういう人間だっただけなのかもしれない。
いずれにしても、自分の見る目がなかったことに変わりはない。自らの選択に後悔した女は、
(リーダー。私、間違えちゃったのかな?)
と、コックピットのガラス越しに雨上がりの夜空を見つめながら、遠い異国の地にいる古巣のリーダーに思いを馳せた。
その矢先だった。こめかみに強い衝撃が走った。
直感的に撃たれたと思った彼女は、薄れゆく意識の中、視線をそちらに向ける。
目に映ったのは、やっと話し終えてヘリに乗ろうとしているボスと、それを追いかける警察。そして、警察と行動を共にしながらも、彼女らの後ろからサイレンサー付きの銃を手にし、歪んだ笑みを浮かべる1人の天使の姿だった。
(そっか……これが、私の末路なんだ…………ごめんね……リーダー、北斗君、みん、な………………)
あまりにも呆気ない人生の幕切れに、自嘲気味に笑みを浮かべた女は、全てを受け入れるように息を引き取った。
そこで初めて女の死に気付いたボスは、信じられないという気持ちから、女の肩を揺さぶったが、彼女の手は操縦桿を握ったまま硬直していた。
機体は大きく傾き、ヘリは屋上のヘリポートから落下。そのまま地面に叩きつけられ、爆散した。
後に彼女は思い知る。この終わりは、これから始まる物語の序章だったのだ、と――――――
冒頭から急展開で幕開けとなった【天空のディオネリア】。
小説でロボットものを描くのは初めてですが、僕の伝えたいことが少しでも伝われば幸いです。




