電子の蝶過去編~恋色万華鏡そのごっ
それからは苦難の日々だった。いや、主にお皿を割った回数が増えただけといったほうが正しいのかもしれない・・・・いや、だってそうでしょ!まさか朝の4時からたたき起こされて、筋トレ屋敷の周りを何十週、これに何の意味があるというのか!!
「ほれ!また邪念がはいったぞっ!」
「いたっ!」
そして、その考えを戦音ちゃんがすぐに察知してモップの先で頭をたたく。
「まったく、わしの若い頃はそれはもうぼんきゅっぼんの・・・」
あっ、始まった やったー!休憩時間だ。少しねむr・・・ってあれ
私が意識を失いかけると戦音ちゃんは何かゴソゴソとバックの中を漁っている。
「まぁいいさ。今日は武器を決めてもらうかねぇ・・・」
はい?武器?武器まであるんですかここ?
戦音ちゃんのバックからは様々な武器が出てくる。拳銃、こん棒のようなもの、太刀・・・一体どこにはいってるのかわからないくらい大量の武器がでてきた。
そしてここからがまた地獄だった。武器を1つ1つ素振りし、戦音ちゃんが次といってまた次の武器に持ち変える。何回も何回も、もう限界と思ったとき1本のナイフが目に留まった。白樺の柄で刀身は銀のナイフだった。それをふと持つと軽い・・・・軽く振ってみたがこれならいくらでも振り回せそうだった。
「ほう、それがあんたに合う獲物かい。ナイフとは益々天職だねぇ・・・」
たしかにナイフなら軽い。でも、短刀、鉄扇ほかにも軽い武器はあった。でも何とも言い難い感覚なのだ。
「戦音ちゃん。これすっごい手になじみます。これでなら完璧に料理ができます!!」
私が喜んで戦音ちゃんにいうと。
「馬鹿っ!これで料理してどうすんだい!?坊ちゃんを守るんだろ?まぁ、たしかにお前らを料理してやる!にはなるかもしれないけどねぇ・・・・」
戦音ちゃんはあきれたように言うと私に素振り千回を命じつけてお屋敷に戻っていった。
「821っ!823っ!」私が素振りをしていると、後ろから気配を感じる。
「誰っ!!」私が気配の先にナイフを向けると
「ひっ!ごめんなさいごめんなさい」
そこには蹲っている白野さんがいた。
どうにも、あの日以来白野さんがよそよそしいというか、臆病になったというか・・・まぁ、それも込みで好きなのだが・・・
「あ、あのっお茶を入れたので飲まないかなぁと・・・」そういって白野さんは私にティーカップに入れたお茶を手渡した。
可愛らしい兎の絵のティーカップで白野さんのこだわりなのか、紅茶の上には桜の花びらが1枚浮かんでいた。
「わぁ、ありがとうございます!いただきますね。」私は白野さんからカップを受け取るとゆっくりと飲み干した。甘く、少しほろ苦い・・・白野さんは私の隣に座ると一緒にお茶を飲んだ。
「あ、そうだ 静江さん これをどうぞ」
そういって白野さんは私に1本の筒のようなものを差し出した。
和紙で縁取られた万華鏡だった。不思議なつくりの万華鏡でのぞき込むと、様々な宝石の結晶のようなものが広がっている。動かしてもいないのに七色にゆっくり変わっている。
「綺麗ですね・・・でも、どうしたんですこれ?」
「綺麗・・ですか。それは良かったです。本当に・・・」白野さんは紅茶を少し飲み寂しそうな声で言った。
「いえ、綺麗ならいいんです。持っていてください貴方が、貴方の為に・・」そう一言いうと白野さんはとてとてとどこかに行ってしまった。
どうしたんだろう?でも、本当に素敵だった。私は万華鏡を大事にしまうと、また素振りに戻る。
1000回終えて、屋敷に戻ると玄関に白野さんと誰か知らない人がいた。
シルクハットで、顔に髭を生やした初老の男性と、お付きの人か若い目つきのあまりよくない少年がいた。
「それじゃあ頼みましたぞ白野氏 鬼退治はあなたしかできないのですからな」
初老の男性は振り向きざまに門の方に向かう。私の姿に気づくと帽子を上にあげぺこっと頭を下げた。私もつられて頭を下げる。後ろの少年は無表情に男性の後をついていった。
白野さんは2人の姿を見送ると少し疲れた表情をしてため息をついている。
「はぁ・・・でも、これで終るのですかね・・・」
私は白野さんに近づき2人の事を聞いた。
「あの人たちは管理局の人間で福音の鐘の人です。先宮宗茂ああ見えて、優秀な霊媒師のようなものですね。あの人でも倒せない化け物、ページを持った妖の存在を僕に教えてくれるんです。そして、僕が集めるべきものはこれで終ります。」
「終わると・・・いいますと?」
「ページはもうほとんど集まってるんです。そしてさがしてたページはある鬼が持っています。」
「鬼・・・ってあの角を生やした鬼・・・ですか?」白野さんは首を振り言葉をつづける。
「西洋から渡った最悪の鬼です・・・吸血鬼エレン・フォン・ブラットリー・・・一族の魔本を散らせた元凶。人の心も、命も簡単に奪う・・・いえ、もっとひどい・・・」
白野さんは一瞬考え込んでいるようだったが、私にニコっと笑顔を見せると、一言言った。
「まぁ、僕は最強ですからあんな雑魚程度に負けるわけありません。さ、戦音にいって準備しないと」
そういって戦音さんの所に白野さんは向かった。
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暗い暗い部屋、血の臭いが充満し、全ての呪いが込められたかのような部屋。
縛られた私の前に白く、愚かしい人間が姿を現す。
「ほう、ついにお前の命を奪える時が来たのか。愉快愉快 やっとお前と別れられるのか。」
「そう・・・ですね。これで僕の役目も終わり・・・です。」
「なんだ?いつもの威勢はどうした?お前ともあろうものが、まさか・・・あの女か?」
女というワードに引っかかったのか白野の反応が少し鈍る・・・そうかそうか、面白い・・・
「あ、あの人は関係ありません!僕は僕の使命をこなすだけです。だから、僕の命を奪っても構いません。あの吸血鬼を倒す力を貸してください。」
「白野・・・・お前人の心を持ったな・・・?生きたいと思ってるな?」
段々奴の声が震えてくるのが感じる。あぁ、この感じこれこそ我が味わいたいものだ、人の絶望悲しみ、痛み・・・やっとやっと我が味わいたいと思う魂になってきた。
「そんなことあるわけありません!僕は早く一族の悲願を叶えて終わらせたいんです!だから一族が崇拝してるあなたの力を借りようと・・・」
「ふふっ、面白いのぉ 人間というのはついこの間まで死地を探してたかと思えば・・・今度は生きたいだと・・・あっははは、同族に聞かせてやりたいかのごとくだ。」
「まあいい、お前は悲願を終わらせたいと願った。ゆえにわれは願いを叶えるだけだ。」
・・・・・しかし、惜しい惜しいのぅ・・・このまま美味いだけの魂にしていいものか。魂は味わうだけではなく・・・楽しむものだというのに・・・・
そうだ・・・そうだ。こうしよう、こいつには本当の絶望を持たせよう。未来永劫終わらぬ旅を終わらぬ輪廻を。そして語ろう我が一族に代々続く愚かな兎の話だと・・・
想像するだけで・・・じつに・・・・愉快だ。




