第一章43~46 要点まとめ
止湮との家が安全でなくなった今、際允は墨然の誘いに応じ、彼のマンションへ移動する。
道中、墨然は「正体を知っている理由を聞かないのか」と問うが、際允は止湮の安否への不安と疲労で、それを追求する気力さえ残っていなかった。暗い車内、無表情な墨然の横顔に、際允は微かな「寂しさ」を感じ取る。
墨然の部屋。家具も私物も最低限で、まるで「前世の自分」を鏡で見ているような空虚な空間。際允はそこのソファで半日以上も眠り込み、目覚めた時には夕方の6時を回っていた。
火の教会の警察に所属する高校の同級生・濡葉が墨然の住所に現れた。彼女は、止湮の情報を伝えるために来たのだ。
衰弱しきった際允を心配し、話を口にできなかった濡葉のかわりに。ブラックホールのように冷徹な静寂を纏った墨然が、感情を排した声で際允に告げる。
「止湮・ランニオンは、死んだ」
止湮の遺体は実家の自室で、実の両親・ミレカー夫妻に発見された。
そして死因について、表面上の判断は「首吊り自殺」。
際允はそんなことを信じない。信じられない。止湮が自分と「絶対に自殺しない」と約束したからだ。
真相を解明するため、止湮の遺体を解剖し検死を行わなければならない。
しかし、 死の直前、止湮は両親との親子関係を復籍させられていた。両親は「家族」の権限を利用し、解剖を拒否して即座に火葬を強行。真実を闇に葬ろうとしている。
際允の中に、前世の死と止湮の死が重なった。
自分を殺し自殺に偽装した黒幕がミレカー夫妻であると推測していた。
そして今回、彼らにとって「役に立たない」止湮も、そうやって殺害され、死を偽装したのか。
六年前、再会の日。前世の死が隠蔽されたことを知った止湮は、その真相を突き止めると誓ったように。
際允も、そうすると決めた。
しかし。
濡葉によれば、止湮の遺体から一枚の書き置きが見つかった。両親に処分されないよう、止湮が服の中に隠し持っていたものと思われる。
その内容は、優秀な警察官である濡葉や墨然、そして実の両親にさえも意味が理解できないものという。
際允がスマホで確認した遺書の写真は、紛れもなく止湮の本人の筆跡だった。
『ごめん、約束を守れなかった』
それは、世界中に唯一、その約束を知っている者に知ってほしい、残酷な真実。
それは、その約束を信じていた者に伝えたい、謝罪の言葉。
――嘘つき。




