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どちら様ですか?~ナクソス島に置き去りにされたギリシャ王女、日本の神々に溺愛されました~【第一部完結済】  作者: 夜見猫
第七章 ゼウス様の侵攻とヘラ様の予定調和

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第86話

本作は情景や心理描写を丁寧に描いているため、長めの文章構成になっています。

お忙しい方は、会話文「  」、キャラクター名、心の声( )を中心に追っていただくだけでも、テンポよくストーリーをお楽しみいただけます。

ゼウス様は、いよいよ時空の狭間である黄泉比良坂(よもつひらさか)へと差し掛かりました。


道脇に妖しく燃えるように咲き誇る彼岸花の群生地を抜け、空間の歪みを一気に跨ぎ超えます。


そうして彼がたどり着いたのは、奇稲田姫様たちが留守を預かっている京都藩邸の前でした。


「ふむ。ここより強めの神気を感じるのう。誰ぞおらぬかー!」


ゼウス様が長い髭を蓄えた威厳ある顔で藩邸の門を叩くと、その背後から漏れ出る、全ギリシャを統べる尋常ならざる圧倒的な気配に、藩邸内にいた神々が一瞬で戦慄し身を硬くします。


しかし、この事態を事前に知っていた一柱の神の対応は、驚くほど冷徹でした。


「おやおや、これはまこと高貴なお方の御光臨だ。


全知全能を誇るギリシャのゼウス様とお見受けいたします。


さあ、まずはこちらで長旅の疲れを癒してくだされ」


門を開けて爽やかな笑顔で現れたのは、出雲の国造り主であり、あらゆる縁を結ぶ男神、大国主(オオクニヌシ)様でした。


素戔嗚尊様の手回しにより、ゼウス様が美女目当てで京都に突撃してくることを事前に知らせておりました。


最愛の妻である奇稲田姫様をはじめ、藩邸の美しい女神たちは全員、一足早く安全な出雲の地へと避難(疎開)を完了させていたのです。


現在、この広大な京都藩邸に残っているのは男神ばかりです。


何も知らないゼウス様は、お目当ての美女が一人も見当たらず心の中で「ぬぬっ……?」と首を傾げつつも、差し出された現代京都の洗練されたおもてなしの前に、すぐに上機嫌になってしまいます。


目の前の飴色の木製テーブルに美しく並べられたのは、京野菜をふんだんに使い、出汁(旨み)を極限まで利かせた極上の「おばんざい」の数々。


そして、キンキンに冷えた最高峰の日本酒が、美しいお猪口にトトトと注がれます。


「ほう! この出汁の利いた煮物とやら、まこと滋味深い美味さではないか!


そしてこの透明な米の酒……喉越しが驚くほど気高く、いくらでも飲めてしまうぞ!

フハハハ!」


「ははっ、お口に合って何よりです。さあ、遠慮せずにどんどん酌み交わしましょう!」


大国主様はゼウス様の杯を満たし、好色な最高神を酒の力で足止めする作戦です。


ゼウス様は、アテナイのテセウスが涙を流していた「日の本の美味」に納得しながら、大国主様と夜が更けるまで大いに歓談を続けます。


そして、すっかり泥酔したまま、心地よい京都の藩邸で翌朝を迎えることとなりました。


一方、ところ変わり、初夏の爽やかな潮風が吹き抜ける七里ヶ浜の邸宅。


京都藩邸でゼウス様が大国主様のおばんざいと日本酒で泥酔して爆睡しているまさにその頃。


こちらの隠れ家には、ペルセポネ様からの事前連絡とホットラインを通じて現世に召喚された正妻、ヘラ様が到着されていました。


「ほう!この金色の泡立つ麦の酒(ビール)とやら、驚くほど喉越しが良く美味ではないか!」


豪華絢爛なギリシャの衣をまとい、王妃としての絶対的な威厳を放ちながらも、ヘラ様は目の前に並ぶ日の本の至高のB級グルメとお酒の前に、すっかり上機嫌で喉を鳴らしていらっしゃいました。


実は、最初にこの地に降臨された時のヘラ様は、


「異国の女神が我が夫を誑かしたか!?」


と、凄まじい嫉妬の嵐を纏って瞳を吊り上げて激怒されていました。


しかし、ハデス様から直々の説明。


そして、ここ七里ヶ浜で用意された、お寿司や江ノ島で取れた海の幸、


そしてスパイシーな手羽先や濃厚でクリーミーな極上カレーといった、胃袋をがっつりと掴む至高の美味の数々。


さらには、素戔嗚尊様による完璧なエスコート。


それら現世の圧倒的なおもてなしの前に、ヘラ様の疑念は雲散霧消していたのです。


「まったく、あのろくでなしの浮気夫め!


アテナイの美女が増えたと聞くや否や、アテナイに向かったかと思えば、美しい日の本の神々の噂を聞きつけるや、鼻の下を伸ばして京都に突撃するなどど…


本当に救いようのない大馬鹿者だわ!」


今ではすっかり天照大神様やイザナミ様、そしてアリアドネと完全に意気投合し、一緒になって夫の度し難い浮気癖をなじり倒して女子会を大いに楽しんでいらっしゃいました。


「そうであろう!

あの好色親父、今頃は京都の藩邸で、男神しかおらぬとも知らずに泥酔しておるからのう!


ヘラ様、あやつが目を覚ました瞬間、現行犯として特大のお灸を据えてやるが良いわ!」


天照大御神様が大笑いします。


「ふふ、ヘラ様。

あのおのこへの最高のお仕置き、妾たちも喜んでお手伝いいたしますぞよ。

まずはあやつを一度こちらの七里ヶ浜へ誘い出し、袋のネズミにして差し上げましょうのう」


イザナミ様が恐ろしくも楽しげな罠を提案されます。


「はわわ……っ! ヘラ様、お味方になってくださって本当に良かったですわ!

さあ、冷たいビールをお注ぎいたしますわ!」


アリアドネも未来のテセウスが残してくれたディオニュソス様の葡萄酒や贈り物をヘラ様へお裾分けしながら、笑顔を弾けさせています。


「これでゼウスの親父を迎え撃つ最強の布陣が完璧に整ったわけだが…


親父(イザナギ)と同じく自業自得とはいえ、同情するぜ………」


素戔嗚尊様が京都で二日酔いで頭を押さえて起き上がろうとしているゼウス様の状況を、静かにキャッチしていました。


いつもご愛読いただき有難う御座います。

正妻ヘラ様が極上グルメと愚痴女子会で完全懐柔され、目覚めた瞬間に公開処刑が確定する「全能神包囲網」が完成しました。


「胃袋を掴まれて秒で女子会に馴染むヘラ様エモい」、「デスゲーム確定のゼウス様に合掌」と思った方は【評価(★)、ブックマーク登録】をお願いします。

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