第十五章 エア・ハンマー
村の端の空き家を借りて、俺はノートを開いた。
「作戦を考える」
「岩みたいに硬いんだろ。炎旋風でいけるか?」ルカが覗き込んだ。
「体の表面が硬くても、内部が硬いとは限らない。問題は、どうやって内部にダメージを与えるかだ」
俺は考えた。
岩みたいに硬い表面。つまり外から攻撃しても弾かれる。
じゃあ——外じゃなくて「中」から攻撃したらどうだ。
「振動だ」
「振動?」
「太鼓を叩くと音が出るだろ。硬い表面でも、強い振動を与えれば内側にダメージが伝わる。岩だって地震で割れる」
「それを魔法でできるのか」
「やってみないとわかりませんが——風魔法で圧縮した空気を一点にぶつければ、衝撃波みたいなものが作れるはずです」
俺は手のひらを前に出した。
台風のイメージ。でも広く吹き飛ばすんじゃなく、狭く、鋭く、一点に集中させる。圧縮する。ペットボトルを握りつぶす瞬間のイメージを重ねた。
バンッ、と空気が弾けた。壁に小さなひびが入った。
「……できた」
「今の、なんか耳が痛かったぞ」ルカが耳を押さえた。
「衝撃波です。これを魔物の体に直接当てれば——」
「内側からダメージが入る、か」ルカが目を細めた。「でも当てるためには近づかないといけない」
「そこはルカに頼みます。引きつけてほしい」
「俺が囮か」
「足が速いじゃないですか」
「……まあ、そうだけど」
ルカは腰のナイフを確認した。「わかった。任せろ。ただし一個条件がある」
「なんですか」
「終わったら村の飯を腹いっぱい食わせてもらえ。三日間ろくに食ってないんだ」
「交渉します」
「頼む」
俺はノートに書いた。
『作戦:衝撃波魔法の実験。風を圧縮して一点に解放する。名前は——』
少し考えた。
『名前:エア・ハンマー。かっこいいので』




