第5話 ★報復★
やっとかけたぁ
それに、全ての修正がおわったああああ
次の話を書くことよりも修正がきつかった……
★11206♪
ぶくまよろぉっ!
「はッ!」
とても、フィーとは思えないような怪力で、僕の方へと殴りかかってきた。
夢人格と言っていますが、やっていることは、魂の憑依です。
霊魂魔法を使えば似たようなことは出来るのですが、夢人格というはスキルなので、霊魂魔法とは全くの別物です。
ゾルラの魂が憑依したことにより、元々のフィーの能力が全て底上げされたようです。
しかし、何でしょう……このもやもやと居続ける違和感は……
今のゾルラのパワーは僕と同等。又はそれ以上……
お父さんまでとはいいませんが…しかし、悪魔といえば、魔王軍の中でも下の方に位置する存在なので、流石に、ここまでパワーがあるのはおかしい筈なのですが……
ゾルラの…僕より小さな拳から放たれたパンチはその見た目より遥かに重く、手をクロスにして拳を受けた僕はずんずん後ろへと押されていきました。
ゾルラは華麗に後ろへと一回転し、距離を離し体勢を整えると、今度は闇魔法でこちらに広範囲攻撃をしてきました。
「ーーー【暗黒波】」
直後、禍々しい程の波動が、波を打つかのようにして、僕の方へと襲いかかってきた。
【暗黒波】は、闇魔法での広範囲攻撃の中では、シンプルかつ強力ということで知られていますが、その暗黒波をここまでの力で放つというのは、正直に言って、至難の技ではありません。
やはり、ゾルラが憑依したことにより、普段は魔法が使えないフィーの身体でも使えるようになったらしいです。
僕は、身体強化で素早くその攻撃に反応し、上へと跳ぶと、その後すぐさま攻撃態勢に入った。
「今度はこちらの番です」
身体強化でパワーアップしたパンチの威力を上げるように、拳に風魔法をまとわせゾルラの魂を狙った。
「ーーー【風刃拳】」
「友人を傷つける気ですか?」
僕の拳はゾルラの……フィーの胸部へと一直線に向かっている。
ゾルラは僕がフィーを傷つけるわけがないと思っての余裕だろうが、僕は霊魂魔法【魂眼】でゾルラの魂の位置を把握すると、霊魂魔法を風刃拳にまとわりつけると、そのゾルラの魂目掛けて拳を出した。
完全なる不意打ち。ゾルラは油断している。
ゾルラの魂に当たろうかとした瞬間。
フィーの体から…………大量の血が溢れ出てきた。
「え?」
僕は、確実にゾルラの魂に風刃拳あてたはずだった。霊魂魔法も魂眼もしっかりと発動していた。魂そのものに攻撃を当てればゾルラの意思は消滅するはずだった。
しかし……目の前に広がる光景はあまりにも残酷でした。
フィーの体の胸のあたりから、足のあたりまで、所々にある無数の切り傷。
それに、右肘が薄い紫色になり、ありえない方向に曲がっています。
「フィー!!!」
「だから忠告をしたのに…友人を傷つける気ですかと……」
しかし、どんだけ悲惨な姿になっていても、フィーは…ゾルラは紅い眼差しで、何事も無かったかのようにこちらを見続けています。
しかし……
「!!………起きましたか」
これまで鷹揚な性格を崩さなかったゾルラが、一瞬にして愕きの表情になりました。
僕も、いきなり焦り出したゾルラに一瞬、戸惑いましたが、事態は何も変わっておらず、ゾルラから……フィーから出ている血飛沫は、未だ勢いを忘れることなくどばどばと出ており、既に、死の危険性のある量まで上り詰めました。
僕はすぐさま回復魔法をフィーにかけました。
神級魔法を獲得するのに、全ての魔法を極めているので、回復魔法も問題ないのです。
「ーーー【高回復】」
切り傷だらけで血まみれだったフィーの体はすぐに元どおりとなり、足りなかった血も、魔法と幸い問題がなかった僕の血で補い、そして、恐らく骨が折れていただろう部分も全て元に治っていました。
ただし、服だけは元には戻りませんでした。服の破れた箇所の多さが、フィーが受けた攻撃の凄まじさを物語っています。
「はあっ、どおして…なんで……」
流石に、フィーから溢れ出した血を補うのと、無数の傷を治す為に使った魔力は馬鹿にはならず、多少の立ちくらみが起こったほどには、回復魔法に持っていかれました。
自然治癒効果で、魔力はどんどん回復していっていますが……
しかし、僕には何故フィーに攻撃が当たったのかが分かりませんでした。
霊魂魔法を纏わせた攻撃は、寸分の狂いもなくゾルラの魂に当たりました。
霊眼が外れた?いえ、そんなことはありません。僕は霊眼で魂の位置を攻撃を当てるその一瞬まで見ていました。
それならどうして…………
「ふふふっ、私を甘く見てもらっては困りますよ…これでも私は悪魔将軍の位を承っているのですからね
まぁ、先ほど、少々手違いが発生しましたが、問題はありませんよ」
「悪魔、将軍…」
悪魔将軍。悪魔の中でも上位に位置する悪魔のことを指します。下級の悪魔千体分の強さを誇るといわれており、大厄災の時には、無類の強さを誇り、我々に立ちはだかったらしいです。
「それでは、種明かしといきましょうか」
両手をパンっと当て、種明かしというワードを出し、こちらの方を見ている。
先程残酷なまでの攻撃を受けたにも関わらず、出している声は通常通り突き通っており、表情も憎たらしいほどにニコニコしています。
「種明かしといっても簡単なことですよ。
私も霊魂魔法を使える。ただそれだけの話です。
私の霊魂魔法で貴方の拳にまとわりつけていた霊魂魔法を見破り、私の霊魂魔法で相殺したのですよ。
しかしですね、今回、貴方の友人……つまり私の仮の体ともいえるこの体を傷つけた原因は貴方にありますよ」
「なっ……」
「過酷な特訓を積んで来たんでしょう。そのおかげで周りの魔物や冒険者とは比べ物にならないほどの強さを手に入れた。それは旅をしながらもうすうす気づいていましたよね?
強くなった。自分は強い。そう思うと、必ず自分の中には敵が出来てしまいます。それは……『油断』ですよ、断言しましょう。私は、貴方よりも霊魂魔法を完璧に使えると……」
「!?」
僕の敗因。それは油断。僕の身の周りの環境が整いすぎているということは魔法を習い始めてからすぐわかりました。
極度に濃い魔素。伝説の勇者の父親。そして、自分自身の才能。
もちろん、闘っている最中は一秒たりとも油断はしていませんでした。集中力を極限まで高め、ゾルラを倒すこと、そして、フィーを助けることだけを考えていました。
お父さんにも、よく言われました。『自分の力を過信するな』と…痛い目に合うと……
しかし、僕は心のどこかできっと、自分は強い。最強。神に選ばれた子。などと、特別なんだとずっと、ずっと勘違いしていた。
その思い違いは、気づかない限り一生僕に付いてき、ある種の『呪い』と化してしまっていたのかもしれません。
「気づけただけ、良かったです……」
僕の油断で、治ったといえど、フィーの体を再生不能に近いほど傷つけてしまった。
もちろん、ゾルラが憑依したせいでこうなってしまったことには変わりありませんが……
それでも……それでも、傷をつけたのは僕です。
それも、自分自身の力の過信という、なんとも愚かな事で……
「どうすれば……」
相手はフィーに憑依して、物理的な攻撃は許されない。霊魂魔法で魂そのものに攻撃をしようとしても、ゾルラも霊魂魔法の使い手なので、まとわりつけた霊魂魔法は分散されてしまう。
そして、もし仮にゾルラをここで逃した場合……いえ、もう自画自賛はやめましゃう。
僕が死んだ場合ゾルラは必ず僕のお父さんとお母さんの方へ向かうでしょう。
お父さんとお母さんなら、勝てることはまず、間違い無いのですが……少々手こずる可能性も十分あります。
そして何より、お父さんとお母さんは、フィーのことを知らない。
それにゾルラのことです。必ず自分がフィーに憑依しているなど言う訳がありません。
つまり、今、この瞬間にでも勝負を決めなければいけないのです。
今回の勝負において、『勝ち』というのは、相手を殺す事ではありません。ゾルラの魂だけの討伐。つまり、物理攻撃は一切禁止、霊魂魔法も、相殺され意味をなさない。
そして、ゾルラにとっての『勝ち』は、至ってシンプルです。
どんな方法でも良いので、とにかく僕を殺せば勝ちなのです。
圧倒的ハンデと、言わざる負えない状況です。
(万事休す、か…………)
「来ないのなら…今度はこちらからいきますよ……
「ーーー【彷徨う魂】」
ゾルラが呟いたその時、ゾルラの周りから人のうめき声がした。
それどころか、ゾルラの周りから薄い青紫色のようなとにかく気味の悪い色をした、獣人や魔物が唸り声をあげながら次々と現れてきました。
そして、その魔物達や獣人はまるで、スクリーンで映し出されているかのような、生きていると思わせないような気配がしました。
「さあっ!蘇りし魂達よ!憎っくき強き者に裁きを下しなさい!」
そう大声で言った瞬間。ゾルラの周りからぞろぞろと出て来た青紫色の存在……【復讐霊】は唸り声を出しながら、一斉にこちらへと向かって来ました。
そのうちの一人、冒険者らしい格好をした復讐霊が『ゔ〜ゔ〜』と唸り声を出しながら殴りかかって来たので、僕は軽く避けるとすぐさまその頭へと殴り返した。
…………が、拳が頭に当たった瞬間。僕の殴った場所のみ、男の頭は攻撃を避けたかのように消えていた。
「なっ……」
感触が全く無かった。空気に殴りかかったかのような感覚でした。
恐らくですが、この気味の悪い奴らの生態について、簡単に説明をしますと、奴らは、気体でできた生き物というような感じでした。ただし、霊魂魔法を多く含んでいる復習霊ですが……
もう一度殴りかかってきた、男の拳をもう一度避け、今度は、霊魂魔法をのせた蹴りを浴びせました。
すると、今度は、しっかりとした感触があり、男を転ばす事に成功しました。
その後、一瞬の油断もなく、その男へと身体強化と霊魂魔法をつけた、かかと落としをお見舞いしました。
(なるほど、霊魂魔法を使うと攻撃は通るみたいです…しかし、それにしても数が多すぎます。
それに、倒しても倒してもまた起き上がって来るのでこれじゃあ僕がが負けるのも時間のうちなのです…)
僕が、普通は起き上がれない程の威力を誇ったかかと落としをお見舞いした男は、何の痛みも無かったかのように起き上がり、僕を襲ってくる、およそ千を超える大軍にケロッと混ざりました。
動き自体は簡単に見切れるものなので、まだ良いのですが、問題は圧倒的な数の多さです。今いるだけでも千は覚悟しておかないといけない程の多さを、気配探知で確認しました。
それと、少し魔物の率が多い気もします。
これは逆にラッキーです。
「ふふっ…そいつらはその名の通り、復讐のためにここへとやって来たのですよ、その復讐相手は『強き者』こいつらは強き者に使い捨てられた冒険者や、権力者に腐るまで使われた奴隷。冒険者に倒された魔物…だれもかれもが自分よりも強き者に殺され、憎み、怨んだ魂ばかりなのですよ……
それに、この辺は駆け出しの冒険者たちがよく迷い込み、自分より上のランクの魔物にあってしまい殺されているのですよ。
もちろんそれは魔物も同じです。少し上のランクの冒険者にあって、無残にも死んでしまった魔物など。この辺りにはそういった形で死んでしまったものたちが今も昔も変わらず多くいるのですよ…それと、ここへ呼び出したときの代償で知能は極端に低下し、動きも遅くなっているので、まぁ……頑張って下さい」
この辺りの地形のことも知っていることから、ゾルラがこの辺りに来たことがある、または、この辺りのことを聞いたことがあるということがよくわかります。
「…さっきからさっきから、人をなんだと思っているのですか……そんな奴に負けるわけにはいけないですね。余計勝たないといけないという気持ちになりました……ここからは本気でいきます!」
数は多いですけれど動きは遅く、簡単に見切れるもの。
つまりこの復讐霊達への最も強い攻撃手段は広範囲攻撃なのです!
「ーーー【魂衝撃】」
【魂衝撃】この攻撃は、直接相手の魂に心臓を叩かれたかのような強い衝撃を当てる攻撃なのです。
本来は、本当に魂に当てない限り、その攻撃は無効となってしまうので、動いている相手にはあまり効かないので、使い所に悩んでいた魔法なのですが、今、この状況においては、最適な攻撃と言えます。
相手はまるまる全部魂のようなもの。それに、動きものろく避けられる心配もない。多少の魔力量が減るのを覚悟で、僕の、周りおよそ直径一キロメートル圏内に魂衝撃を撃ちました。
「おおっ、なかなかやりますね……まさか私が頑張って呼び出した全ての復讐霊たちが一撃でやられるなんてね、称賛ものですよ」
そう。魂衝撃は、僕が撃った瞬間。復讐霊は全て消え、さらにはその近くにいた魔物や冒険者などは、軽く気絶をするほどの威力だったのです。
あわよくば、ゾルラをも…と思っていましたが、流石にそう簡単にはいきませんでした。
僕が魔法を撃った瞬間。ゾルラの方から霊魂魔法を使ったような気配を察知したので、また相殺されたのでしょう。
「ふむ……やはり彷徨う魂ではあなたを倒すことはおろか、ダメージすら与えることができませんでしか……まあ、ここまではまだまだ想定の範囲内です。
ここからもっと面白くなることを期待していますよ」
そういうときゾルラの顔が……つまりフィーの顔がまた、ニヤリと笑みを浮かべ、軽く礼をすると、今度はこちらの番だと言わん限りのスピードで僕の方へと迫って来た。
「あなたにはあまり時間をかけたくありません。身体が完璧に馴染み次第……瞬殺します…」
ぞわッ、と空気が淀むような眼差しが僕の魂を貫いきました。
たったそれだけで、まるで、槍に貫かれたかのような緊張感が絶えないのは、ゾルラがあの大厄災を生き抜いた悪魔だという証拠。僕の胸の鼓動の速さと、冷や汗の量がゾルラの強さを物語っているのです。
「ーーー【死の吹雪】」
突如、またゾルラの周りに、今度は黒色の渦が巻き始めました。
「くぅっ…」
さらに、渦は次第に大きくなっていき、ついには周りの木々をなぎ倒すほどになっていきました。
「ーーー【高障壁】ァァ!」
僕は自分の身の回りにバリアを創り、なんとか攻撃から逃れましたが、ゾルラが魔法をやめた頃には、周り一帯の木々は倒され、その全ての木が、葉は枯葉と成り果ててしまい、枝や幹もすでに脆くなってしまっています。
まるで、生命を断ち切られたかのような有様でした。
「この渦に飲み込まれたら最後、どんな生物もその生命を断ち切られてしまいます…魔物や人などは『死』を意味し、植物などは『枯死』を表します…」
正直僕は、とんでもない魔法だと思いました。
こんな魔法を初見で、それも人通りの多い場所でされたら…そう思うだけで、恐ろしいと思いました。
こんな魔法が、当時は頻繁に辺りを飛び交っていたのかと思うと、尋常じゃない程の寒気が走ります。
また、お父さんたちは、こんな魔法を使う何千もの敵に、たった六人で挑んだんだと思うと…………流石に、当時の人の気持ちがよくわかります。
ゾルラの…フィーの左手が少し、腐蝕したかのように黒く錆びているのが分かりました……
「おりゃあッ!」
霊魂魔法をのせた拳をもう一度、僕はゾルラにあびせようとしました。僕の拳はゾルラの胸の辺りをめがけて一直線に進んでいます。それと同時に僕は魔力分身による分身を使って、その分身をゾルラの背後に回らせ、挟み撃ちにしました。
「学習という言葉を知らないのですかね……そんなことをしても無駄ですよ…」
僕が撃った拳をゾルラは片手で止め、ゾルラ用にセットした霊魂魔法もゾルラが掌から放った微量の霊魂魔法で打ち消された。
それにより、ゾルラの本体。つまりゾルラの魂にダメージが喰らうことはありませんでした。
そして、背後に回った分身をゾルラは霊魂魔法を使わず右手をを手刀のように鋭くし……恐らく霊魂魔法を纏わせたであろうその手刀を高速で動かし、僕の分身はその攻撃により、魂が完全に破壊され姿を消しました。
(やっぱり……思った通りだ!)
僕はこれまでのゾルラの行動を見て、ゾルラには、欠点が有ると考えました。
(僕の考えが正しければ、この状況。恐らく打破できるでしょう。
しかし、果たしてこの作戦は成功するのか、成功したとしても、フィーは意思を取り戻せるのでしょうか…)
不安が不安を煽り、焦りが焦りを生む。そういった状況が永遠に僕の中で続いていた時……
『グルギャャァァアアアア……!!!』
「…………」
「…………」
この辺りからは見えない遠くの山の方から、ドラゴンと思わしき大きな咆哮が、僕たちに響き渡りました。
その咆哮は響き、まるで、森が、国全体がその咆哮に反応し、揺れているようでした。
この辺りでドラゴンの声が聞こえてくるというのは多分ですが、とても珍しいことだと思います。現に、戦闘中だというのにもかかわらず、ゾルラもそちらの方へと目線を変えています。
僕も見ているのですが、ゾルラは油断させるために見ている可能性もあるので、絶対に注意は怠っていません。
そして、このドラゴンの咆哮が…僕の決心する為のきっかけとなったのです。ほんの小さな…どうでも良いことかもしれませんが、僕にとってはあの咆哮が決心の手助けをしてくれたのです。
人が何かをするきっかけというのは大きいものからとても小さなものまで色々ありますが、どれもこれも自分が行動を起こすための後押しだということには変わりはないのです。
「よしっ!いきます!!!」
決心の合図。覚悟の瞬間。開始のゴング。
僕は近くの茂みに隠れて、なるべくゾルラから距離を取り、ジグザグに進みながら、ゾルラが追ってこにくいように進みました。
「なるほど…遂に朝になるまでの時間稼ぎをするということになってしまいましたか……」
(残念ですが違います。僕は今!必ずお前を倒します!)
僕はゾルラの不意をつき、近くの木の上へと登りました。
そして、ゾルラが追いかけてきた瞬間僕はゾルラに攻撃を仕掛けました。
「ーーー【音速蹴り】」
僕は渾身の一撃を霊魂魔法を纏わせた状態でゾルラに放ちました。
「まさかここまでなにも考えないとは……失望です…」
「そんな気持ち…今すぐなくならせます!」
僕の蹴りは音速の速さでゾルラの魂にめがけて向かいました。ゾルラに当たろうとした瞬間。僕の纏っていた霊魂魔法が相殺されました。しかも、ゾルラが霊魂魔法を相殺するタイミングが絶妙すぎるので、ここからまた纏い直すことは不可能です。
霊魂魔法を纏っていないただの攻撃がゾルラに……フィーに当たろうとした時……僕の攻撃は、見事にゾルラの魂に直撃しました。
「は…?」
魂に直接ダメージを入れられたゾルラはその堪え難い痛みに遂にはフィーから離れ、そしてまた、魂だけの、肉体が無い元の姿となりました。
そして僕は、ゾルラの魂が離れたフィーを抱え、遠くの木に腰掛けておきました。
「ごめんねフィー。痛い思いをさせてしまって、
でも、もう大丈夫です。あいつは必ず倒します」
フィーの反応はありませんが、死んではいません。
僕がゾルラのいた方へと戻ると、そこには、どす黒い紫色のような色をした炎の塊のようなものが宙を浮いていました。
やがてその、どす黒い紫色の様な色をした炎の塊は渦を巻きながら人の形へと変形していきました。
そこから現れたのは、二本の鋭い角を頭に生やし、髪が長い中世的な顔立ちをした魔人族でした。
髪の毛の色や、肌の色、服の色などは、分かりませんが……
恐らく。いや、間違い無く、この魔人族がゾルラ・ナイトメアの本来の姿なのでしょう。
『なあっ……なぜだ!なぜ攻撃が当たる!』
その言葉と同時に、僕は戦闘が始まった時からずっといた木の上から降りてきました。
そして、ゾルラは話すための器官を失ったため、ゾルラは【念話】を使って語りかけています。
念話という魔法は受信側の都合で、聴いたり、勝手に無視したりできるのですが、今は潔く聞いています。
「霊魂魔法を完璧に使えるって言っていたけれど、何らかの原因で……恐らくあの大厄災が原因で、一つだけ劣っていることがあるんじゃないですか?
空気中にある魔法や武器に仕込まれた霊魂魔法は簡単に察知できても、
体内に含まれる霊魂魔法は察知するのが困難……いや、できないんじゃないですか?」
空気中にある霊魂魔法。つまり、何かに纏わしている霊魂魔法や、霊魂魔法そのものの攻撃は簡単に察知できても……
体内。つまり体内に含まれている霊魂魔法や魂そのものなど、その効果や、霊魂魔法が体内に含まれているというところまでは察知できないというわけです。
僕は、それを、魔力分身を使ってわかりました。
ゾルラは霊魂魔法が僕より群を抜いて得意です。それも、完璧といっていいほどの腕前でした。それは、僕との戦闘を見れば一目瞭然ですが、ところどころおかしなところもあります。
しかし。何故、夢人格などといった回りくどい方法で、フィーの体を手に入れようとしたのか。
何故、僕の作った魔力分身を魂を直接攻撃する方法じゃなく、物理攻撃で倒したのか。
それは、体内に含まれる霊魂魔法に気付かないから。
魂の位置が分からないから、魔法よりも上位の存在であるスキルをわざわざ使って、憑依した。
分からなかったから、魔力分身と分かった時、魂を直接攻撃しなかった。
最初の違和感以来、僕は可能性を見出しては実験。実験。実験を繰り返し……
そして実行へと移しました。
茂みの中で、バレずに霊魂魔法が混ざっている魔力分身を作りゾルラをおびき寄せ、ダメージを与える。
僕は隠れて見てるだけで良かったのです。
『ふふふっ……成る程…よく分かりましたね。
ええそうですよ…………俺はなぁ!あの日、あの憎たらしいあの勇者に!俺の美しき魂に直接傷を入れられ!一番得意だった霊魂魔法が圧倒的に不利な状態にまで劣ってしまったんだよ!!!』
等々……さっきまでの冷酷だった仮面が完全に剥がれ、恐らく本来の性格であろうゾルラの、本来の姿が出てきました。
『手の内がバレたからって、それまでだ!お前が俺より霊魂魔法が下手くそだってことは変わってねぇんだよ!』
そう言ってゾルラは猪突猛進を思わせるほどの勢いで、僕の方へと向かって来ました。
『ハハハッ!さっさと死ねぇぇええ!!!
ーーー【死界】!!!』
刹那。ゾルラのから今度は漆黒の世界が広がって来ました。
そして、これまでのゾルラとは比べ物にならないほどの増大な魔力がゾルラから漏れ出しています。
ーーーしかし
「残念ですが、お前の弱点が分かった時点で敗北は確定しています……どのような技が来ても、関係ありません!
ーーー【炎の壁】」
『ハハハッ!そんなのは無駄だ!無駄ッ!
こいつはどんなものも飲み込む漆黒の世界だ!そんなちっぽけな壁なんて意味ねぇんだよ!』
目の前に展開した炎の壁はあっという間に呑まれてしまった。
ーーーしかし
『そんなこと、見ればわかりますよ……』
『!?。どこだッ!どこにいるッ!』
炎の壁の先には誰もいなく、ただ、あいつの声だけが森の中で木霊していた。
俺は周りを見渡したが、あいつの姿はどこにもなく、ただただ、漆黒の世界が森を蝕むばかりだった。
俺が常備使っている魔法の【魔力探知】にも何も反応がなかった。
すると…………
「下ですよ…下…」
★★★★★★★★★★
下を向き、穴の空いた地面の横にしゃがんだままの僕を見つけた頃には、ゾルラはもう遅かった。
僕は全身全霊を込めて無防備なゾルラに渾身の一撃を…………
「ーーー【白銀の一撃】」
渾身の一撃は、漆黒の世界を白銀の光を放ちながら元の色へと塗り替えていき、
渾身の一撃に織り交ぜた霊魂魔法がゾルラを消滅へと追いやった。
ゾルラが、唸り声を上げながら光に飲まれていった……
「ふぅー……やはり、魔力探知を使っていましたか。魂の位置も分からないというので、恐らくはと思い、対策を練り正解でした」
僕がお父さんとの特訓の中で一番最後に覚えた、切り札。それに霊魂魔法を混ぜ、放ったので、ゾルラは完全消滅しました……
「んんー!もう夜が明けて来ましたか……今回の出来事は僕にとってもファーにとっても嫌な思い出でしょうが…僕は……自分の過ちに気付けて良かったです……」
『自信』という過ち。呪い。に気付けたこともあり、お父さんとお母さん以外の人との初対戦とのこともあったので、今回の件はこれからの学園生活の良い糧になるでしょう……
『ふんっ!!!俺はここで無くなるが、お前たち勇者はこの糞みたいな世の中で一生無能として生きていくが良い!!!』
その時、今日一番の寒気が僕を襲った。
何故、ゾルラがまだ生きているのか……
渾身の一撃を受け、何故まだ僕に語りかけれるのか……
そんなことよりも、とにかく僕の頭の中では危険を知らせるサイレンが、ずっとずっと鳴り響いています。
(不味い!止めなきゃ!)
得体の知れない怖さに、自ずと足が動き出し、僕は突如として空間に現れたゾルラを止めるべくゾルラへの一撃を…………
『ーーー【勇者達への報復】』
この回のバトルはあまり時間をかけずにいきたかったのでややおかしなところがあるかも……
後…体内の魔法を感知できないって、どんな設定だよ…(自虐
こうするしかなかったか(泣
とにかく面白いと思ったらコメントお願いします。
指摘コメントおまちしております!