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69.悪の手先 アナザー18 Liar!Liar! 2nd Gig

-守山駅 西口ロータリー-


 時間の指定通り、柊が自転車でやって来た。


 柊は、自転車を止め、黒いマークXの後部座席に乗り込む。


 『ようこそ、嘘つき坊や(ライヤー)。


  そこにある手錠をはめて、その赤い錠剤を飲みな。』


 ミナトは、運転席から”ガバメント”の照準を柊に合わせ、指示する。


 『汚い真似しやがって。』


 柊が、嫌悪感をむき出しにする。


 『余計な事を言わず、言うとおりに。さもないと…分かるな。』


 ミナトは、口の端を歪める。


 『ちっ!』


 柊は、ミナトに聞こえるように舌打ちし、指示に従う。


 錠剤が効いてきたのか、すぐに柊は後部座席で横になった。


 『OK、さぁ、出発だ。』


 ミナトは、前を向き、車を発進させた。




-車内-


 『なぁ、嘘つき坊や(ライヤー)。』


 『なんスか、先代の嘘つき坊や(ライヤー)。』


 柊は、後部座席に横になったまま、嫌味を込めて、男に応える。


 『………』


 『………』


 車内に沈黙が訪れる。


 『なぁ、柊君。』


 『なんですか…えぇっと…』


 『湊川(ミナトガワ)だ。』


 『なんですか…湊川さん。』


 『蟲卑雌(ムシヒメ)…あの…吉野 桜と付き合っているのか?』


 『付き合っては…いませんけど…』


 『えっ?』


 聞き間違えたのかと思い、ミナトは、聞き返す。


 『何すか。』


 『付き合ってないのか?


  それなのに…なんだ…蟲卑雌(ムシヒメ)を守ろうとしてんの…か?』


 ミナトは、問い詰めているはずなのに逆に戸惑ってしまう。


 『大切な友達で…クラスメイトだし…おかしいですか?』 


 『ん、いや…おかしくはないな。君が正しいよ。


  でも、いつだって正しい事を貫けるとは限らないだろ?いつか…道を外す。』


 ミナトは、流れる景色を見ながら、まるで他人事のように話す。


 『そうかもしれない。でも、今は…その時じゃない。』


 『大した決意だ。』


 いつのまにか降りだした雨。ミナトは、車のワイパーを動かす。 


 『あんたは…道を外したんですか?』


 柊は、体を起こし、ミナトに聞き返す。


 『外したよ。外されたし、また、外したり。大人はいろいろあるんだ。


  あの子を守りたいかい?』


 『あなたに言われずとも守るつもりです。』


 『そうか…その手錠がなきゃ、格好がつくんだがね。』


 ミナトは、柊の手首を指して笑う。


 何を考えてるんだ…


 ミナトは、ハンドルを指で叩きながら、一人考える。


 『エ…えっと、今、白鞘にいるんだよな?』


 『ご存知の通り。』


 柊は、嫌味を込めて答える。


 『御門野 エリカって女性術者を知ってるかい?』 


 『僕の上司です。』


 『そうか…現役なのか。』


 ミナトは、少し驚く。とっくに引退したと思っていたからだ。


 『30前の独身です。その性か、少々ゲスイです。


  多分、誰かを待ってるんじゃないかな。』


 柊は、複雑な顔でミナトに応える。


 『そうか…なんでそう思う?』


 『なんとなく。』


 『………』

 

 『なんでコッチ見てんだよ。』


 『御門野さん、こういう人が好みなのかと思って。』


 『!!!』


 一瞬、ミナトの顔が凍りつく。


 『図星っスか。』


 柊がイタズラっぽい顔で笑う。


 『てめぇ…』


 『始めて、あなたから電話があった時、あなたは、”御門野”さんの名前を出した。


  目的は、恐らく、門脇さんだったにも関わらず。


  何かの関係者だと思っていたけど。』


 『しゃべり過ぎたね。』


 『会わないんですか?』


 『大人には事情があるんだ。』


 『御門野さんは、ずっと、あなたを”待ってる”。』


 『そりゃ、間違いだ。僕は、公式には死人だよ。』


 『そうなんスか。では、あなたの事を”思っている”。』


 柊は、丁寧に言い直す。


 『言い切るね。根拠は?』


 『僕の事…白鞘にはもう、バレた。』


 『ほう。じゃあ、なんで生きてる?普通、処分されるぜ。』


 『御門野さんが情報を止めてくれてる。


  黒連と白鞘の架け橋になって欲しいと。』


 『利用されてるだけだよ。』


 車を左折しながら、ミナトは鼻で笑う。


 『これは、僕のただの思い込みだけど…


  御門野さんは、僕にあなたの影を見ているんじゃないかって。』


 『まさか。今の戦闘能力はともかく、


  術者としての才覚は、君の方が上だ。


  僕は、それ程優秀じゃなかった。』


 ミナトは即座に否定する。


 『術の優劣で思い人が変わる訳じゃないでしょ?』


 『そんなに…そんな風に思えるような年じゃない。』


 『あなたも僕に自分自身を重ねてる。


  だから、警告をくれた。今だって、殺さない。』 


 『おしゃべりは早死にするぜ。』


 ミナトは、ガバメントを抜き、銃口を柊に向ける。


 『殺すなら、いつだってできたはずだ。』

 

 柊は、顔色を変えず、銃口ではなく、ミナトを見る。


 『この後、拷問が待ってる。死にたくなるようなね。』


 『なら、思い残す事がないように言うさ。


  御門野さんとの間にどんな過去があったのか、僕は知らない。


  だけど、あの人は、ずっとあなたの事を思ってる。


  惚れた女を守る”(チカラ)”がないならともかく、


  ”(チカラ)”があって守ろうとしないのはどういう了見だ!』


 『大人には…』


 『そんな物は、クソ喰らえだ。


  二人とも生きてる。


  その気なら、すぐにでも会える。


  草津にあの人はいるんだ。すぐ側にいるんだ!』


 『今更だよ。』


 『今更なんだ?会ってもないのに何が分かる!』


 柊は、こちらを睨む。


 冷めた少年かと思いきや、なかなかの激情家のようだ。


 少し意外だったな。


 『吉野は必ず守る。この車も向かっているんだろ?』


 『そう…だな。』


 『見せてやる。あんたとは違う僕の…あんたとは違う結末を!』


 『…楽しみだ。』


 二人を乗せた車は、夕暮れの湖岸道路を走る。


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