57.悪の手先 アナザー12 INSIDE IDENTITY
『超能力ねぇ。』
門脇は、何気なしに渡されたスマートフォンを見る。
全く触った事がない。CMで形状を見た事がある程度だ。
物は大切に扱うのが流儀だ。
ミナトにレガシィ毎、吹き飛ばされた携帯は10年以上使っていた。
そもそも、どれが電源ボタンなんだ…
適当にこちょこちょ触ってみる。
おっ、起動したぞ。
画面の右端にあるこの四角いのが件のソフトか?
『FACE/OFF』と記載されている。
門脇は、慣れない手付きで画面を押してみる。
『♪~』
大げさな効果音が鳴る。
大昔にやったゲームをふと思い出した。
あれは確か…ファイナルファンタジーだったかな?
ひたすら、敵と戦って、倒して、経験値を貯めて、また、新しい敵と戦って…
その頃は、まだ黒連で任務にも着いてなかったから、未来、自分が現実に
同じような事を仕事にするなんて思いもしなかったな。若かった。
スマホの画面が切り替わる。
『初起動です。ハンドルネームを記載して下さい。』
おぉ、懐かしいなぁ。どうしよう、適当にするのもなんだしなぁ。
門脇は少し考え、文字を打ち込み、始める。
『ガ・ウ・ェ・イ・ン』と、
よし、決定。
『ハンドルネームが既に使われております。別の名前にして下さい。』
くそっ、面倒臭いな。
『ラ・ン・ス・ロ・ッ・ト』と、
よし、決定。
『ハンドルネームが既に使われております。別の名前にして下さい。』
うがぁぁぁ~。もぉ、うぜえぇぇっ。
慣れないキー操作と相まってストレスが溜まる。
『よーし、少々、皮肉を利かせて、minato7、どうだ?』
『ハンドルネームを登録しました。
FACE/OFFへようこそ。
”門脇”様。』
『!!!!』
門脇は、思わずその場に立ち上がり、グロックを抜く。
周囲に気配はない。
『ど、どういう事だ!?』
ハンドルネームを記入しろと言われたが、それは僕の名前じゃない。
なんで僕の名前をこのソフトが知っているだ。
木工屋のアイツ(和田)があらかじめ入力していたのか?
いや、このスマホは”初起動”と言った。
僕の名前には一切触れていない…
マジなのか…マジに危険なソフトなのか?
超能力を与えるというのも…
いや、名前がバレルのが納得いかない。ましてや、僕は公式には死人だぞ!
スマホの画面は、また変わり、
『初期値及び属性の入力』
になっている。
門脇は、周囲を再度、窺い、リビングから窓のない部屋に移る。
本物なのか?きな臭いが…続けてみるか。
スマホの画面をクリックする。
『これからいくつかの質問をします。
1.Yes、2.No で答えて下さい。』
『1』
『あなたは男性ですか?』
『1』
『あなたは平成生まれですか?』
『2』
『あなたは成長したいですか?若返りたいですか?
成長したい場合は、1を、若返りたい場合は、2を選択して下さい。』
『2』
『あなたは、犬派、犬好きですか?』
『2』
『あなたは、血液型がB型の人間が嫌いですか?』
『1』
『あなたは、人をかばう人間ですか?』
『2』
『あなたは、人をだます人間ですか?』
『1』
『あなたは、人を殺した事がある、または、殺したいですか?』
『1』
『あなたは、愛する人、彼女、伴侶がいますか?』
『2…やっぱ、1。』
『質問パターンを再構築しております。しばらくお待ち下さい。』
ふぅ。
門脇は、スマホの画面から視線を外し、首を鳴らす。
一般人は、こんな小さな画面を何時間も凝視しているのか?
人間技じゃねぇな。他人事のようにふと考える。
『♪~』
スマホが鳴る。さて、また質問タイムだ。
門脇は、スマホと向き合う。
『あなたは、敵と対峙しました。紅い剣で戦いますか?
緑の槍で戦いますか?
紅い剣の場合は、1を、緑の槍の場合は、2を選択して下さい。』
『武器、色か…1だな。』
『あなたは、黄色の人間を信用できますか?』
『はぁ?黄色人種の事を指しているのか?
2…かな。』
『あなたは、仕事又は学業と家族は、両立できると思いますか?』
『2』
『あなたは、人生で負けた事がありますか?』
『えらくアバウトだな…1』
『特別問題です。あなたのスマートフォンの番号で一番多い数字を選択して下さい。
2つ以上同じ数字がない場合、一番好きな数字を選択して下さい。』
『6』
『♪~』
一際、大きな音が鳴る。
『あなたは、”選ばれた者”。”選ばれなかった”敗者を駆逐せねばなりません。
敗者に止めを刺すのは、1.昆虫、2.爬虫類?』
『1』
『以上で質問は終わりです。
現在、”minato7”の能力を集計中…
♪~
あなたの属性は、”紅”。
あなたの能力は、”合金蜂”です。
初期設定、終了です。ゲームをお楽しみ下さい。』
ん?肝心のゲームの説明がない。一切ない。
何をどーするんだ?
”合金蜂”と言われてもなぁ…
門脇は、首を捻る。
取りあえず、画面を操作してみる。それっぽいのが…
『当ゲームは、保有者様に”まず”一能力を差上げます。
戦闘を繰り返す事、課金する事で能力は成長致します。
不定期ではございますが、”指令”、”賞金首”を我々、運営チームから
指定致しますので、仲間で倒すも良し、一人で倒すも良しでございます。
”指令”達成、”賞金首”殺害のあかつきには、”報酬”をお渡しします。
末永く当ゲームを使用して頂ければ幸いです。』
『昔のファイナルファンタジーとなんら変わらんな。
無駄な時間だった。暇潰しにもならん。』
門脇は、あきれてスマホをテーブルに投げる。
スマホがテーブルに当たると…
『剥がれよ現世の仮面(フェイス/オフ)!』
スマホが光り、何かが飛び出してくる!
それは、門脇にめがけて飛んでくる。
『何!?』
門脇は、身をよじってかわす。
飛び出してきた”何か”は壁に当たるかと思いきや、空中でUターンし、
再び、門脇に近づいてくる。
『ちぃっ!”プレパ・レイド”!』
門脇が唱えると紅い壁が”飛行物”の行く手を遮る。
『ブブブ!カンカン!ブブブブ!カンカン!』
大きな羽音を鳴らし、”飛行物”は”プレパ・レイド”に接触し続ける。
よく観察すると、門脇の手のこぶしぐらいの大きさの蜂だ。
色は、シルバー、いや、金属調の表面だ。
ん?金属…鋼?
門脇は、急いでテーブルの上のスマホを手に取る。
画面には、こう記載されている。
『剥がれよ現世の仮面(フェイス/オフ) 発現中
合金蜂』
もしかして、これが…
門脇は、グロックを構え、”プレパ・レイド”を解除する。
『ブブブブ…』
金属の蜂は、門脇の周囲を一定の軌道で飛行し始めた。
『ははは、マジかよ…』
門脇は、苦笑いする。
スマホ画面をスクロールさせると説明が続いていた。
『能力名 : 合金蜂
Lv. : 64
生息地 : 当デバイスから半径20m
攻撃性 : 非常に高く、獰猛
本能 : 他人から生命力を奪取し、主人の元に持ち帰る。
攻撃手段 : 顎、針、毒液
腕力 : ~40kg
個体数 : 2
成長 : あと3人捕食。または、7万4000円。
繁殖 : 捕食後、約2週間前後』
ほぉ、なかなか、どうして。
僕って、そんなに自分からは攻撃しない主義なんだが、これはこれは。
いいぞ。試してみよう。
門脇は、スマホをポケットにねじ込み、部屋を出た。




