56.悪の手先 アナザー11 和田木工材店
-岐阜県 和田木工材店-
『すいませーん。』
『あぁっと、申し訳ないですけど、うち、業者向けなんで帰ってもらえますかね?』
店先の青年が悪びれもせず客を追い払おうとする。
『おいおい、常連だろ?』
客は、ドアを靴で小突く。
『なっ!門脇、お前、生きてたのか?』
『見ての通りだ。』
門脇は、笑って両手を広げる。
『…黒連でも死んだと噂が流れていたぞ。』
青年は、周りを窺いながら囁く。
『いろいろ事情が複雑でね。死んだ事にしておいてくれ。』
『相変わらず、忙しない奴め。今日は、何の用だ?』
青年が門脇を店内に招き、木製の椅子に座ってペプシを飲みだす。
『AK-47とマガジン、30個、グロックのマガジン、30個、
携帯電話に車だ。』
門脇は、青年の対面に座り注文する。
『相変わらず、その装備か。”P-90”とかあるぜ。』
『使い慣れん物は嫌だ。』
『”ガバメント”もあるぞ。』
『もう、年だ。デカイ口径はキツイ。』
『面倒臭いヤツめ。マガジンは…両方とも在庫があるな。すぐ出せるぞ。
携帯電話は…スマホでいいか?』
青年は、毒づきながらパソコンのモニターを確認する。
『いや、普通の奴がいい。』
『普通のヤツって…ガラケか?
最近は、そっちのほうが玉が少ないんだよなぁ。
中古でもいいか?』
『使えりゃいいよ。』
『OK。携帯も揃う。車だが、表にある”86”ならすぐおろせるぞ?』
青年が指で店の入り口をさす。
『ちと、小さいんだが…あれ、ATか?』
『うんにゃ、MT仕様。』
『ダメ。』
『門脇、お前、MT運転できるだろ?』
『職業柄、両手が塞がるのは頂けない。
それに免許取立てのガキじゃないんだ。
ドリフトしたいわけじゃない。』
『具体的なスペックとかあるか?』
『ATで4駆で200馬力以上、セダンタイプの国産。』
『う~ん。このランエボ、MTか…
VWの”パサート”が空いてるんだが…
おぉ、1個あるぜ。しかも、お前の好きそうなヤツ。』
青年がモニターを門脇に見せる。
『ん?レガシィじゃん。リアスポイラーが変な形だが…。』
『正確には、レガシィ ブリッツェン 2000モデルだ。
ちと改造車なんだが、そこはいいか?』
『変な癖、なけりゃいいよ。その他諸々の偽装手続きしてくれ。』
『OK、1週間後にもう一度、来い。』
『金は?』
『まぁ、常連だしな。43万で手を打とう。』
『3万余計だ。端数、省けよ。』
『3万は、お前の香典回収+口止め料だ。』
『ちっ。』
門脇は、舌打ちをする。
『そうそう、ちと小耳に挟んだんだがよ…』
『ん?いいニュースか?』
『いや、興味本位で聞いとる。”黒陽計画”知っとるか?』
『あぁ、黒連の一部が実施するとか言ってたな。どうした?』
『いや、こういう商売しとるで、武器の流通には敏感なんだわ。
その”黒陽計画”と連動して相当数の弾丸が流れとる。
銃器は今までと変わらず、”弾丸だけ”がや。
どこと戦争する気や?黒連は?』
『ドロップアウトした人間に聞かれてもなぁ~。』
門脇は、興味なさげに話す。
『なんかええ情報ないん?』
『”いくら”でその情報を”どこ”に売るんだ?』
門脇は、青年のペプシを引ったくり、質問に質問で返す。
『ひひひひ。』
青年がほほを指で掻く。
『あくまで、僕の知ってる情報、推測込みだ。
外れてる可能性もある。”元”黒連からの流れた情報だ。』
『よし。』
『”黒陽”っつーのは、対陰陽師の兵器だ。
今までの陰陽師では、血脈もしくは、適性必須、育成に時間がかかる。
かと言ってこれ以上、陰陽師増やして、組織内でデカイ顔はされたくない。
そこで黒連の一部が研究、開発した。』
『対陰陽師用の兵器か。”ジャイロ”みたいなヤツ?』
『いんや、僕は、パワードスーツかそれ系の何かかと睨んでる。
一般人に陰陽術の耐性を持たせるには、全身を強化材質で覆う必要がある。
耐熱、耐電考慮でね。
それで、弾丸だが…恐らくスーツに現存の銃器、もしくは互換性のある物が
ついてるんじゃないのかな?
次点で、レールガン…かな。
多分、前者と僕は考える。後者なら弾丸より砲弾の方が適切だしな。』
『筋は通るな…』
青年は、片目を閉じ考える。
『以上だ。準備頼むぜぇ~。』
『そうか。よし、常連だし、一つ、噂をやろう。
流行り廃りに疎いだろ?お前。』
『変な情報を入れないようにしているだけだ。』
『”フェイス/オフ”って知ってるか?』
『あぁ、古本屋の。』
『違うわ!携帯のゲームだよ。課金制の。』
『あぁ、馬鹿なクソ餓鬼が何十万も注ぎ込むっつーやつね。』
『まぁ、そうなんだが…こいつは、ちと違う。
正確には、”剥がれよ現世の仮面(フェイス/オフ)”って言うんだ。
噂では、こいつは、ゲームのオーナー、つまり、
携帯の保有者を”超能力者”にするそうだ。』
『はぁあ?』
『そう、眉唾な感じがプンプンするだろ?
けど、事実、何人かが超能力に目覚めているそうだ。
一部は、警察沙汰にもなってる。
ゲーム登録時にクソ長い時間がかかるそうだが…その超能力が噂になってな。
今は、かなりの登録数を記録してるそうだ。』
『それが事実なら、陰陽師は時代遅れ、”黒陽計画”すら無駄だな。』
『サービスだ。スマホもくれてやる。お前もやってみたらどうだ。
陰陽術士様だろ?一般人より可能性あるんじゃねえの?』
『ははは。』
青年が投げたスマホを受け取り、門脇は愛想笑いをして、店を出る。




