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54.悪の手先 アナザー10 マリオネッテ

-琵琶湖 湖岸 とある公園-


 門脇は、レガシィを止めてゆっくりと降りる。


 人気のないこの場所に、先客として、白いアウディのワゴンが一台止まっている。


 ミナトの車だろうか?


 なかなかいい趣味だ、門脇は一瞥し、笑った。


 コンバットマグナムを腰に携え、湖岸へと進む。


 一人の人影が見える。


 ゆっくりと進むに連れ、姿がはっきり見える。


 身長も大きくなり、髪が伸びているが、ミナトだ。


 ダメージジーンズに黄色の派手な花柄のYシャツ、チェーン付きの財布


 …服の趣味は40点だな。


 門脇は一人苦笑する。


 吹き飛ばしたはずの左腕も完治したのか、しっかりついている。


 向こうもこちらに気付き、軽く手を上げる。


 『久しぶり。門脇さん。』


 『あぁ、久しぶりだな。10年ぶりか…』


 『正確には、10年と2ヶ月、飛んで3日。』


 『細かいな。』


 『記念日なんでね。忘れない。』


 ミナトは、苦笑し、こめかみを指でつつく。

 

 『春風を開放しろ、僕が目的だろ?』


 『もう、開放する準備はできてる。』


 『そうか、なら、もういい。』




 門脇は、黒いマグナムをミナトの足元に投げ捨てる。


 『どう言う事だ?命ごいか?』


 『いいや、遺言と遺産さ。


  僕には、もう”マグナム”で”ジャイロ”は撃てない。


  やるよ。弾は、5発入ってる。』


 『ふざけるな!僕がこの十年、なんの為に生きてきたと思う!


  ”マグナム”を拾え!』


 『………』


 ミナトは、ゆっくりと銀色のコンバットマグナムを構える。


 『パァァァン!』


 門脇は、左足を撃ちぬかれ、その場に膝をつく。


 『どうした?本当に年老いたのか?』


 『見ての通りだ。』


 門脇は、肩をすくめる。


 『こんな物で僕の気が晴れるとでも?』


 『復讐しに来るのが遅すぎたな。』


 『パァァァン!』


 腹部を貫かれ、門脇は、臓物をばら撒き、横たわる。


 『少しは抵抗したらどうだ!』


 ミナトは、黒いマグナムを拾い、門脇に投げつける。


 門脇は、マグナムを拾うしぐさすら見せず、天を、星を見続ける。


 『あ、あん時、かわいいお前じゃなく、僕は、親族、血族を優先した。


  けど、それは、ほんと、砂の城でさ。


  守る価値すらなかった。笑っちまうだろ? 


  あっけなくて、もろくて、


  あげくの果てには、僕自身にすら毒をばら撒きやがった。』

 

 『そんな事を聞きに戻った訳じゃねぇ!!』


 ミナトが怒鳴る。


 『ほんと、やり直したかった。人生で一番のミスだよ。


  お前がまぶしくて仕方がなかった。』


 『全てを台無しにしたお前が言う台詞か!』


 『そう…そうだな。


  あん時、薄々気付いていたんだ。


  僕の人生はもう、がんじがらめ。詰んでるって。


  だから、最期は、お前で締めたかった。


  矛盾した話だな、殺しかけておきながらな。』


 『僕を生かして、移送したのが贖罪だと?』


 『贖罪…か?そんな大したもんじゃねぇよ。


  血族…、黒連を選んでおきながら、お前を殺す覚悟がなかっただけだ。


  間に合って…良かった。』 


 『…もう、ダメなんだな。』


 ミナトは、ため息をつき、門脇の頭に照準を合わせる。


 『”御門野”に生きてる事ぐらい伝えてやれ。独身のまま、みたいだぞ。』


 『今更、昔には戻れない。』


 『そうか…、すまんな。』


 『今更、謝るな。』


 『………』


 カチリ。


 ミナトは、撃鉄を親指で起こす。

 

 『バイ。』


 『パァァァァン!』


 ミナトは、門脇の頭を撃ち抜く。


 門脇は、動かなくなった。


 少し生暖かい湖風が吹き、ミナトは、天を仰ぐ。


 『排火(ルージュ)(セカンド) ブルホーン。』


 ミナトが詠唱すると、


 紅の角が門脇を貫き、炎で包んでいく。


 ミナトは、燃え上がる門脇の側の黒い”マグナム”を拾い上げる。


 『あっけない最期でしたね。』


 シスター・マリアが物陰から出て来て冷たく言い放つ。


 『えぇ、がっかりです。最悪です。


  最悪にも程がある。


  中国人は、さっさと解放して下さい。


  これ以上、監禁したままだと殺したくなります。』


 ミナト…ミスターセブンは、燃える死体を見ず、その場を後にする。


 『さよなら、兄さん。』




-レイクサイドホテル 12階-


 『屍奏呪卑外典(カラクリ) 読了。』


 テーブルの灰皿の上で書物と髪の毛の束が燃え上がる。 


 男が窓際に腰掛け、双眼鏡を覗きながら呟く。


 『やれやれ、10年前と同じ手に引っかかるとは。


  単純というか、応用力が足りないのか。


  誰が、お前の死体を準備、偽装したと思ってんだ?


  哀れ、ミナト君は、再び、僕の演技力の前にひれ伏した、とw。


  まぁ、これで本当の自由が手に入った。


  さて、どこに行くかな?


  おいしい鮨とか海鮮丼食べたいなぁ~。


  げっ!


  アイツ、レガシィ燃やしやがった!


  結構、大事に乗ってきたのにぃ。』


 門脇は、椅子にかけてあったジャケットを掴み、部屋を出た。 

 

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