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47.正義の味方 その十六 ブレイブルー

-下校-


 最近、ホント、集中できない。


 白鞘の任務も前回、ドタキャンしちまったしな…


 やべぇな。なんとか、なんとかせんと…


 けど、もう、なんか、手につかん。


 暗殺されるんやったら、もう、サクッと殺されたい。


 このまま、羞恥プレイは止めてくれよぉ。


 僕がモヤモヤ感を担ぎ、下校しようとすると何人かの生徒が騒いでる。


 『えっ?マジで?』


 『草津校の生徒だろ!?』


 『女、待たしとる!くそっ、リア充、死ね!』


 はいはい、皆さん、下世話な話が好きですね。


 こっちはそれどころじゃないっつーのに。


 うぉーい!!


 正門前に平田がおーる!


 制服が違うから目立ってやがる。


 おいおいおいっ!、キョロキョロすんじゃねぇ!


 周りの生徒もガン見してるじゃねぇか。


 どういう事だよ。何考えてんだよぉ。


 もしかして、僕が逃げないように監視しているのか…


 いや、待て、まてまてまて!


 落ち着け、落ち着くんだ、恭一。


 それなら、宇梶でもいいはずだ。


 なぜ、平田が来る。


 どういう事だ?


 白鞘の作戦なのか…いや、違う!


 宇梶からの連絡はなかった。


 どうする?


 取りあえず、戦線離脱だ!!


 平田には悪いが、ここは、知らない振りして逃げよう!


 レッツ、スルー!!


 隠密行動は、スパイの十八番だ。


 僕は、姿勢を低くして自転車置き場に向かう。


 『遅い!いつまで待たすねん!』 


 げっ!


 僕は、チャリに鍵を差し込んだまま硬直する。


 オーケー。


 まだ、慌てるような時間じゃない。


 ゆっくり、ゆっくりと自然に移動しよう。


 僕は、自分自身に言い聞かせる。


 『なんで、無視すんねん!柊!』


 平田がこちらに近付いてくる。


 『あの~、どちら様でせう?』


 僕は、下を向き、会話を濁す。


 『なんや、柊、まだ調子おかしいんか?』


 おいおいっ!デカイ声で2度も名前を呼ぶんじゃねぇ。


 ほ~ら、皆、コッチ見てるよ。うぁい、超目立ってまーす。


 校舎の窓からコッチ見てる奴もいるよー。


 『柊、うち、めっちゃ待ったで。』


 なぜか、平田がキレている。


 知らないよぉ~。あんたが勝手に来たんだろぉ~。


 やばい。戦闘とは違う嫌な汗がTシャツに滲む。


 『学校、終わりやろ?たまには、遊びに行こうや。』


 『えっ?今からですか?』


 『なんで敬語なん?つーか、その他人行儀なん、気分悪いんやけど。』


 『いえ、ごくごく普通です。』


 『わざわざ、誘いに来たった。柊、行くで!』


 『ちょっ、デカイ声で名前呼ぶなって!』 


 多くの生徒の中、公開処刑され、僕は、平田に引き摺られ学校を後にする。




 『宇梶さん、見た?見た?柊君の彼女!』


 同じクラスの女子生徒達が宇梶に話しかける。


 『えっ?あれ、違…そうなの?』


 宇梶は、説明しかけて、途中で言葉に詰まる。


 『決まっりしょ。結構前から正門で待ってたみたいだし。』


 『最近、柊、雰囲気変わったもんね。』


 『やっぱ、彼女できると変わるんだねぇ~』 


 『ちっ。』


 宇梶は、誰にも気付かれないよう小さく舌打ちをした。




-商店街の小さなカラオケ-


 平田に引き摺られ、店内へ。


 うわ、やべぇ、僕、カラオケ来たの初めて。


 どうすんの?てか、どうしてくれんの?


 『まず、飲み物を…柊、何飲む?』


 『あっ、こ、コーラで。っておい!』


 僕は我に返り、鞄をソファに投げ、突っ込む。


 『何?』


 平田は、平然としている。


 『何?じゃねぇ!どういうつもりだ。


  うちの学校まで来るなんて!めっちゃ、目立ってまったやないか!


  白鞘は、秘密組織じゃねぇのかよ。』


 『別にあれぐらい、構わんでしょ。なんでそんな慌ててんの?』


 『えっ?いや、秘密組織だと思ってたから、結構、気を使っていたんですけど…』


 冷静に返されて、僕が戸惑う。


 『元気のない後輩を慰めてあげようという先輩の優しさに感謝しぃや。


  泣いて感動してもいいで。』


 平田がこちらを見て、にやにやしてやがる。


 『別に、元気はありますよ。』


 僕は、ばつが悪くなり、視線を変える。


 『そんな調子じゃ、うちのチーム、ずっと待機になるで。』


 『体調は悪くない!』


 怒鳴る僕の手を握り、平田はゆっくりと話す。


 『柊、あんたは術者や。うちみたいな戦闘タイプと違う。


  体調よりも精神的に不安定なままじゃ、あかんと思うよ。』


 『うっ……』


 正論を前に僕は、言葉に詰まる。


 『この間の続き、聞いたるよ。ここなら誰にも聞かれんよ。』


 『………』


 『うちが話しにくいようやったら、エミでも陽子でもかまん。


  呼んだろか?』


 『そうじゃない…です。』


 自然と涙が出てくる。


 情けない。


 でも、言っちゃダメだ。


 絶対に言っちゃダメだ。


 でも、このままじゃダメだ。


 でも、言っちゃダメだ。ダメなんだ。


 『………』


 『ドリンクお持ちしましたぁ~!』


 カラオケの店員がドアを開ける。


 『………』


 『………』


 『ごゆっくり、どうぞ~。』


 室内の空気を察してか、または耐え切れずか、店員はそそくさと出て行く。

  

 『今日は、オフやし、ゆっくりしいや。』


 平田は、肩をすくめ、曲リストをめくり出す。


 『………』


 『話す気になったらでええで。』


 『………』


 『AKB歌える?』


 『…知らないです。』


 『エグザイル歌える?』


 『…無理です。』


 『嵐は?』


 『…歌えないです。』


 『………』


 『なんやったら、歌えんのよ!』


 『それどころじゃないんだよ!分かってくれんじゃないのかよ!』


 『空気、和まそうとしてんのやろ!しゃべれんのやったら、歌えや!』


 『なんでキレてんだよ。後輩、気遣うんじゃねぇのかっ!』


 カラオケのマイクで二人の絶叫が部屋に響く。


 『しゃーない。うち、一人で歌うから。悩んどり。』


 『おいおいっ!趣旨は何処行った?』


 『あんた、しゃべらへんやろ。』


 『うぐぐっ』


 『せやったら、気分転換ぐらいでええやんか。


  今日やなくてもええよ。いつでも誘ったる。』


 『その…すみません。』


 『カワイイ後輩やからね。』


 平田の言葉に心が揺らぐ。


 やばい、堰き止めていた感情をぶちまけそうになる。


 聞いてもらえれば、どれだけ楽になるだろう。


 平田なら、話してもいいんじゃないのか。


 平田”だけ”なら、平田”まで”で止めてくれるんじゃないのか。


 でも、もし…。


 でも、このままじゃ…。


 『その…おかしな言い方だけど…』


 『別にええよ。』


 平田は、選曲を止め、僕に向き直る。


 『その…怖いんだ。何度も死にそうな目には会ったのに。


  最近、急にいろいろな敵が増えて、やたらと戦闘が増えて…


  いつも誰かに見られてる気がして、寝れなくて…


  その味方がいるのに、不安で…信じてないんじゃなくて…』


 『………』


 平田が僕の手をそっと握る。


 『怖いのは恥ずかしい事やないよ。うちかて怖いよ。


  でも、柊がおるから戦える。


  あんたが背中守ってくれるから、安心して飛び込める。


  でも、その分、あんたは負担になってたんやね。


  堪忍な。』


 『違う!そうじゃなくて!』


 僕が言い返す前に、平田に抱きしめられる。


 『なぁっ!なっ!』


 『大丈夫、あんたはうちが守ったる。絶対、守ったる。』


 『…ありがとう。』  


 僕は、動けず、ただただ礼を言うしかなかった。


 『ブブブ…』


 『ピピピッ!』


 僕と平田のスマホが同時になる。


 画面を確認すると御門野からの作戦メールだ。


 件の”一本だたら”がまた、出たらしい。


 『落ち着いた?行ける?』


 『はい、大丈夫です。今度は、行けます。すんません。』


 『変に隠し事されるより、よっぽどええよ。


  心配せんでええからね。あんたは死なさへん。


  行くで。』


 平田が真剣な顔で僕の手を握る。


 こんなに親身になってくれている平田に”まだ”隠し事がある事が


 つらかった。


 でも、それはまた後だ。


 今は、作戦に集中する。


 鞄を掴み、僕と平田は、マンションに向かう。




-柊と平田のいる部屋の隣の部屋-


 『新堂さん、急に静かになりましたね。』


 『しっ!陽子!あみが何かしゃべってる。』


 壁に耳をあてる不審な女子高生2人。


 『『ブブブ…』』


 新堂と宇梶のスマホにもメールが届く。


 『もう、こんな時に作戦!』


 『仕方ないわ、陽子。


  今日はここまで。二人が先に出るのを待ちましょう。


  10分経っても部屋から出てこなかったら…、その時は踏み込むわよ。』


 奥手でお嬢様だと思っていた先輩が嬉々として尾行に合流、


 大胆不敵である事に宇梶は驚きを隠せなかった。

 

 『新堂さん…、恐ろしい人!』


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